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血液内科のご紹介

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01概要


主任部長   上田 恭典

血液は、生体の恒常性の維持、情報伝達、免疫環境の獲得に主要な役割を果たしており、最近では、諸臓器の再生にも深くかかわっている可能性が示唆されています。

倉敷中央病院血液内科においては、すべての造血異常や造血器腫瘍、止血系異常を対象とするとともに、血液を通じて疾患を把握することを念頭に、さまざまな疾患における血液学的異常や、血液を利用した疾患の治療、大量化学療法や造血細胞移植を用いた固形腫瘍の治療に対しても積極的にかかわってゆきたいと考えています。特に造血細胞移植は、当院の各科、各分野の総合力と優れた設備を利用できる領域として、重点的に発展させたいと考えています。外来での化学療法は、60床の外来化学療法センターを利用して、当科主治医の指示のもとで行われます。 十分なインフォームドコンセントを得ながら、新規薬剤の治験や治療計画の臨床試験にも、積極的に取り組んでいます。

また血液治療センターにおいては、Hemapheresisをわが国の草分けの時代より行っており、遠心分離装置、膜分離器、吸着器等を組み合わせた独自のシステムの開発も行いながら、救急的疾患から、高脂血症にいたるさまざまな疾患のアフェレシス治療に取り組んでいます。また、これらの経験を造血細胞採取等にも生かして、安全な造血細胞移植が行えるよう努力するとともに、造血細胞の保存とプロセッシングを行っています。

現在、シニアレジデント以上の11名のスタッフで診療にあたっており、入院患者数は常時約90名程度で、43床の準無菌室と3床の無菌室を備え、年間同種造血幹細胞移植数は年間30-40例と、血液内科としては全国的にも有数の規模となっています。優れた設備、医療環境のもとで、国の内外をリードする血液内科を目標に、内外のさまざまな治療の動向を充分吟味しつつ、正攻法かつ最新の知見を取り入れた診療を行い、治療成績、治療内容の向上と、十分なインフォームドコンセントを得た上での、患者さん、ご家族の皆さんに満足していただける医療を目指して努力していきたいと考えています。


02診療内容

造血器腫瘍

主な疾患の概念と治療についてご説明します。

  1. 急性白血病
  2. 年間40名程度の新規症例があります。急性白血病の治療戦略の根幹は、いかに初回治療開始後早期に、十分な寛解に導入できるかにかかっています。このため、強力な化学療法が必要となりますが、当院では化学療法による白血球減少に起因する易感染性に備えて、現在43床の準無菌室と、3床の完全無菌室を用意して、治療の安全性を確保しています。高齢者、身体条件の悪い場合には、シタラビン少量療法など、全身状態に合わせた治療を行っており、難治症例に対しては、QOLに主眼をおいた外来診療も行っています。

    急性骨髄性白血病(AML)の化学療法後の長期生存は、高齢者を除いても平均して40%を下回っています。現在では、病型、染色体・遺伝子異常、初診時の検査成績、治療反応性等より、ある程度の予後を推測することが可能になっており、常に、どの段階で同種造血幹細胞移植を考慮すべきかを念頭におきつつ治療しています。

    成人の急性リンパ性白血病(ALL)については、従来かなり悪かった治療成績は改善しつつあり、特に若年者では、治療成績の良い小児に準じて治療強度を高めて予後を改善する試みが検討され、治療成績を向上させています。また、寛解導入後の微小残存病変の有無で治療の予後が予測しうることも明らかになっており、治療効果を参考にしつつ、同種造血幹細胞移植を考慮する時期を検討しながら治療を行っています。最も予後が悪いとされる、フィラデルフィア染色体陽性のALL(いわゆるPhALL)についても、慢性骨髄性白血病の項で触れる、チロシンリン酸化酵素阻害薬と呼ばれる分子標的薬の併用によって、治療成績は非常に改善しており、治療は少しづつ進歩しています。

    初発時の治療方針は、了解がいただける場合には、JALSG(Japan adult leukemia study group)等の多施設共同研究に参加し、他施設と情報を共有することで、当院の診療内容を高めるとともに、日本や世界のこの領域の治療の向上に貢献したいと考えています。

  3. 骨髄異形成症候群(MDS)
  4. 多能性造血幹細胞レベルでの異常によると考えられているMDSは、白血病化する例と、血球減少が進行する例があり、病態によりさまざまの予後を呈しますが、検査所見より予後の層別化がかなりできるようになっています。年間30名程度の新規入院症例があります。現在のところ根本的な治療は、同種造血幹細胞移植しかないため、移植可能年齢で、予後不良の場合には、積極的に移植を進めています。比較的高齢者に多く、移植関連死も多いとされてきましたが、後で述べます骨髄非破壊的移植の応用で適応範囲は広がっています。一部の症例では、免疫抑制療法により血球減少が改善されます。、最近新たな機序で治療効果を発揮する、メチル化阻害薬のAzacytidine-ビダーザが使用可能となり、適切と思われる症例に積極的に使用しています。白血病化した場合には、急性骨髄性白血病としての治療を、造血不全が主体の場合には、造血刺激因子投与や輸血療法を行いつつ、長期予後やQOLを考えた治療を行っています。また、5q−症候群と呼ばれる一部の例では、Lenalidomide-レブラミドが著効を発揮します。

  5. 骨髄増殖性疾患
    1. 慢性骨髄性白血病(CML)
    2. CMLは、遺伝子レベルでも異常の解析が進んでいる、Ph染色体の出現による多能性造血幹細胞レベルでの異常に基づく疾患であり、放置すれば長期的にはほぼ100%急性白血病化します。近年CMLの遺伝子異常を標的に創薬された、チロシンリン酸化酵素阻害薬である内服薬Imatinib-グリベックの出現で、治療戦略が劇的な変化を遂げました。Imatinibは、早期に多数の症例で染色体レベルでの寛解をもたらし、そのかなりの部分が分子遺伝学的寛解まで到達できることが判明、多くの患者さんがこの状態を長期間維持できることが示唆されています。このため、同種移植を考慮する場合は、非常に少なくなっています。さらにImatinib耐性の場合の新規薬剤(Nilotinib-タシグナ、Dasatinib-スプリセル、Bostinib-ボシュリフ)も使用可能となっており、外来ベースでコントロール可能な疾患となっています。
      当院では年間10〜15名の新規症例があります。

    3. 骨髄増殖性疾患(CML以外)
    4. CML以外の骨髄増殖性疾患も、骨髄系の多能性幹細胞レベルでの腫瘍性変化によって生じると考えられています。約半数にJAK2と呼ばれる遺伝子の変異が認められます。特に真性多血症(PV)や本態性血小板血症(ET)は、赤血球や血小板を主体にすべての血球系の増加が認められますが、CMLのように白血病化することはあまりありません。出血傾向が生じることと、血栓傾向が生じることがあり、フォンウィルブランド因子が保たれ、血小板数高値の場合は抗血小板剤を併用するとともに、赤血球増多に対しては、まず瀉血を行います。それでも血球数の調節が必要な場合には、抗腫瘍剤として、2次発ガンの可能性の少ないHydroxycarbamide-ハイドレアで血球数を調節することになりますが、最近、ETに対してはAnagrelide-アグリリンも使用可能となり、PVに対しては、Ruxolitinib-ジャカビが使用可能です。一方、骨髄の繊維化が主体となる、原発性骨髄繊維症は、脾腫を合併し、長期予後もET、PVに比して不良のため、一部の例では造血幹細胞移植が考慮されます。また、脾腫による症状の緩和にRuxolitinibが使用可能です。年間10〜20名程度の新規症例があります。

  6. 悪性リンパ腫
  7. 悪性リンパ腫は、腫瘍化したリンパ球がリンパ節や諸臓器のリンパ装置を中心に増殖する疾患で、造血器腫瘍の中でも化学療法が有効な疾患であると同時に、局所での進展を見せるため、放射線療法が有効な場合も多く、治癒可能な造血器腫瘍の代表格です。年間140名程度の新規症例があります。

    治療としては、初回寛解導入はCHOP療法を行うことが多く、B細胞性リンパ腫で、Bリンパ球の表面抗原であるCD20陽性の場合には、抗CD20抗体(Rituximab-リツキサン)を併用しています。局所療法が必要な場合、放射線治療科と検討して放射線療法を併用しています。多くの症例では、途中からは外来での化学療法となります。

    胃のマルトリンパ腫の場合は、ヘリコバクターピロリ菌との関連が指摘されており、しばしばピロリ菌の除菌療法で経過を見た上で治療方針を決定します。

    一部の重症例や化学療法に反応する再発例には、自家末梢血幹細胞移植を併用しています。再発例の予後は不良であり、当院では化学療法に反応する初回再発例を除いて、経過に応じて、同種造血幹細胞移植までを視野に入れた治療を行っています。完全に治癒しないことの多いことが問題となっているいわゆる低悪性度リンパ腫に対しても、病期にあわせて、放射線化学療法、抗体療法、自家末梢血幹細胞移植、同種造血幹細胞移植を組み合わせて、治癒を目指した治療を行っています。Bendamustine-トレアキシンや、抗CD20抗体に放射性同位元素をつけた Ibritumomab tiuxetan -ゼバリンについても、低悪性度リンパ腫の再発例、難治例に積極的に使用しています。

    一方で、再発を繰り返しておられる方には、外来で抗腫瘍剤を使いながら、できるだけQOLを保った治療を行うこともしばしばあります。

  8. 多発性骨髄腫
  9. 加齢とともに発生率の増えるこの疾患は、形質細胞と呼ばれる免疫グロブリンを産生する細胞の腫瘍です。高齢者に多く経過が長い反面、完治することは少なく、病的骨折や、腎機能障害をはじめとする臓器障害をきたしやすいため、従来、当院も含め、高齢者ではMP療法等の比較的緩やかな化学治療が主体となり、比較的若年で自家移植可能な状態であれば、予後を改善することが証明されている、自家末梢血幹細胞移植を含んだ治療が行われていました。近年、分子標的薬である Bortezomib-ベルケイドや、Thalidomide-サレド、その誘導体であるLenalidomide-レブラミドやPomalidomide-ポマリスト、さらにヒストン脱アセチル化酵素阻害薬であるPanobinostat-ファリーダックが使用可能となったため、治療の幅が拡がり、治療戦略が一新されつつあります。自家造血幹細胞移植は予後を改善しますが、完治は望めないため、一部の症例では、後述します免疫学的効果による根治を期待して、同種造血幹細胞移植も行っています。

非腫瘍性疾患

  1. 再生不良性貧血
  2. この疾患は、汎血球減少を呈しますが、今日では一種の免疫異常がその病因として想定されており、中等症以上では、蛋白同化ホルモンに加えて、免疫抑制療法(抗リンパ球グロブリン/抗胸腺グロブリン-ALG/ATGやシクロスポリン)や造血刺激因子が用いられ4割から6割の症例に有効です。重症例では、薬物治療が無効な場合には、同種造血幹細胞移植を早急に行う必要があります。重症例の一部に、やがて白血病/MDSに変化していく例があり、注意を要します。国の指定難病になっています。年間10名〜15名の新規症例があります。

  3. 特発性血小板減少性紫斑病
  4. 血小板に対する抗体を生じ、自己の血小板が、脾臓を中心とする網内系で処理されることによって血小板減少を生じる疾患で、原因不明の紫斑で受診されたり、無症状で健診で発見されることもしばしばある病気です。血小板数により経過観察をする場合も多いのですが、治療を要する場合には、最近、約6割の例で、胃におけるヘリコバクターピロリ菌の感染が発病に関連していることが判明しており、ピロリ菌陽性者では最初に除菌療法を行っています。急性期やピロリ菌除去が無効な場合には副腎皮質ホルモン等のホルモン剤が用いられます。長期的には副腎皮質ホルモンが有効でない例が多く、副作用も多いため、難治性の場合には、3分の2の症例に有効であるという脾摘もご相談しています。当院の外科では、可能な症例には、腹腔鏡下の脾摘術も行われています。最近、血小板の元になる巨核球の造血刺激因子であるトロンボポエチンの受容体作動薬である、Eltrombopag-レボレードとRomiplostim-ロミプレートが使用可能となり、約半数に有効です。年間15名〜20名の新規患者があります。国の指定難病になっています。 妊娠を契機に発症されたり、妊娠で増悪されることがありますが、そのような方についても、産婦人科と協力して妊娠中の管理を受け持ち、できる限り安全に出産ができるよう支援しています。

  5. 血栓性血小板減少性紫斑病 溶血性尿毒症症候群(TTP HUS)微小血管血栓症(TMA)

  6. 病原性大腸菌O-157で有名になったHUSやTTPは、合わせてTMAとも呼ばれ、さまざまな原因により、血小板減少、溶血、意識障害、腎不全等を発症します。フォンヴィレブランド因子の切断酵素であるADAMTS13の発見によって疾患の概念が整理され、TTPではADAMTS13が抗体産生のため著減し、HUSでは著減せず、TTPとHUSは別の病態と考えられています。TTPでは、免疫抑制療法併用下の血漿交換療法が、HUSでは厳重な全身管理が早期の標準的治療となります。当院では、ADAMTS13活性値、ADAMTS13抗体価を参考に早期の診断を行い、TTPの場合には、血液治療センターですみやかに、血漿交換療法、免疫抑制療法等を行っています。TTPは、国の指定難病になっています。

造血細胞移植

上記のようなさまざまの疾患で、治癒を目指した治療法として造血細胞移植があります。
日本骨髄バンクの認定施設として、他院からの紹介患者さんも含め、非血縁者間同種骨髄移植にも積極的に取り組んでいます。骨髄バンクドナーの方の骨髄採取も積極的に担当しており、末梢血幹細胞採取の認定施設にもなっています。臍帯血移植についても、日本さい帯血バンクネットワーク登録移植医療機関として、次第に移植件数が増加しています。2015年末までに、469例の同種造血幹細胞移植を行っています。2015年末までの同種移植の内訳は、血縁者間骨髄移植126例、血縁者間末梢血幹細胞移植66例、非血縁者間骨髄移植186例、非血縁者間末梢血幹細胞移植11例、非血縁者間臍帯血移植80例です。
自家末梢血幹細胞移植では、通常では造血障害が生じるため使用できないような超大量の薬剤を、臓器障害が生じる限界まで使用した後に、あらかじめ採取、凍結保存した自分の造血幹細胞を移植することにより、腫瘍性疾患の治癒を目指します。2015年末までに168例の経験があります。移植自体の危険率は約5%とされています。同種造血幹細胞移植では、上記の目的のほかに、GVHD(移植片対宿主病)と呼ばれる、ドナーのリンパ球が、患者さんの組織を攻撃しつつ、腫瘍細胞をも攻撃する反応を利用したGVT効果(移植片対腫瘍効果)を期待しています。最近では、この効果が同種移植の主な効果として認識され、従来の超大量放射線化学療法による移植に加えて、いわゆるミニ移植(骨髄非破壊的移植)等のさまざまな治療法が開発されつつあります。ミニ移植は、まさに移植の最大の合併症であるGVHDから治療効果を得ようとする治療ですので、決して安全な治療ではありませんが、高齢者や臓器障害を持たれた、従来移植不可とされていた方にも実施可能ですので、当院でも実施件数が次第に増加しています。50歳以下の成人での、再発を除いた同種移植自体の危険率は、血縁者間では10%〜15%、非血縁者間では、30%程度と考えています。ただし、急性白血病を例にとりますと、非血縁者間移植ではGVT効果のため移植後再発が少なくなるので、移植患者さん全体の生命予後は、血縁者間、非血縁者間で、ほぼ同等と考えられます。
当科では、専任の移植コーディネーター(HCTC)を置き、倫理性の確保された移植が、迅速かつ安心して受けられるよう努めています。
主任部長 上田 恭典が監修したHCTCの冊子(造血細胞移植クリニカルコーディネート入門)は、最下段で閲覧可能です。
我々の施設では、今日までの経験に基づいて移植管理の簡易化を進めるとともに、病棟全体を無菌化し、移植前後のQOLの改善とケアの充実を図っています。

Haemapheresisについては、血液治療センターをご参照ください。


03その他

施設認定

  • 日本血液学会認定血液研修施設
  • 日本輸血・細胞治療学会認定医制度指定施設
  • 日本アフェレシス学会認定専門医制度認定施設
  • 日本骨髄バンク非血縁者間骨髄採取認定施設・移植認定診療科
  • 日本骨髄バンク非血縁者間末梢血幹細胞採取認定施設・移植認定診療科
  • 日本さい帯血バンクネットワーク登録移植医療機関
  • 日本輸血・細胞治療学会認定輸血検査技師制度指定施設
  • 日本人類遺伝学会・臨床細胞遺伝学認定士研修施設

カンファレンスのご案内

血液病理カンファレンス
毎月 第1水曜日 18:00から

その他

造血細胞移植クリニカルコーディネート入門(PDFファイルが開きます)

 


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