| 不妊治療にはある程度の期間が必要です |
さてここまでで不妊治療の流れを書いてきましたが、当院の不妊外来で何割の方が妊娠されているのか、また妊娠までに何ヶ月かかっているのか、を調査しました。
初診から2年間の間に妊娠されたかどうか、どんな治療を受けられたか、また治療をやめられた方がどのくらいいるのか、などを調べました。
さきに結果を申しますと、
・出産経験のない方の場合、
61%の方が妊娠され、52%の方が出産されていました。
・出産経験があり2人目の子供さんがほしい、と来院された方の場合、
60%の方が妊娠され、56%の方が出産されていました。
(出産経験がある方でも、意外にも、妊娠率・出産率は出産経験のないかたと
同程度であったわけです)
・初診から妊娠までの期間は初回妊娠でも2回目以降でも差はなく、
平均で9ヶ月半の期間がかかっていました。
・一方、治療を中止された方では、
平均で10ヶ月半で治療を中止されていました。
次に細かいデータを示しております。
調査は1999年7月から2002年6月までの3年間に当院を初診された方を対象にしました。
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| 初診から検査を受け治療にはいるまで |
ここでいう一般治療とは、体外受精・顕微授精以外のタイミング法、排卵誘発、人工授精、手術などをさします。

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| 治療の種類と経過 |

流産には子宮外妊娠と死産が含まれています。
また妊娠反応が陽性となっただけでエコーでは妊娠が確認できない「化学流産」は妊娠に含んでいません。 |
| 初診から妊娠に至るまでの期間 (検査中に妊娠したケースは除外) |
初診から2年間の観察期間で61%のかたが妊娠されましたが、 初診からの3ヶ月ごとにくぎってみた棒グラフです。
平均では 9.6 ヶ月で妊娠されています。
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| 初診から自己中止に至るまでの期間 (検査中に中止したケースを含む) |
初診から2年間の観察期間で30%の方がご自身の判断で治療を中止されましたが、 初診からの3ヶ月ごとにくぎってみた棒グラフです。
平均では 10.5 ヶ月で自己中止されています。
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| 当院のデータ、どのように感じられたでしょうか。 |
以上、当院での初診から妊娠までの期間、妊娠率などのデータを公表しました。「こんなに時間がかかるのか」とか、「6割しか妊娠してないのか」など、いろんな感想を持たれることと思います。こういったデータをホームページ上で公表している病院は少ないようです。しかし日本のトップクラスの不妊施設でも、来院された方の5〜6割が妊娠されている、というのが現状のようです。
妊娠までの期間は、すぐに妊娠された方から何年もかかって妊娠された方までを100として、1年以内に妊娠された方が70-75%、2年以内に妊娠された方が90-95%、という施設が多いようです。なかには「当院では受診された方の9割が1年以内に妊娠されます」という広告をする施設もありますが、それは疑わしいです。
こんなに何ヶ月もかかるのなら、最初から体外受精を始めたらいいじゃないか、と思われる方もあるでしょう。ところが、1999年にアメリカで、普通どおりにタイミング法→人工授精→体外受精、と進む群と、最初から体外受精を行う群とを、患者さんの了解のもと無作為に群をわけて妊娠率を比較したところ、意外にも、普通どおりに進む群のほうが、妊娠率が高いことという結果が出ました(出典:Fertility and Sterility 1999年71巻468-475ページ)。体外受精は、他の方法では妊娠が困難であると診断された場合のみに適用すべき治療なのだということです。 |
| 不妊治療には時間がかかるのです |
不妊治療の通院というのは、なかなか大変なものです。治療費がかかるから奥さんも仕事をやめたくない、でも仕事をしていると治療を受けるべき日(排卵日など)に休めない、といったジレンマがあります。倉敷中央病院の不妊外来は月曜から土曜までの午前を中心にしていますので、仕事を持ちながらの通院は、なにかと大変であろうと思います。なかなか思うような結果が出なくて治療をあきらめたという方には、申し訳なく思います。夜の診察をしている不妊専門病院もあります。転院を希望される場合、それまでの治療内容を紹介状に書きますので、遠慮せずおっしゃってください。
でも、「半年がんばったのに結果が出ないから、もうやだ、やめてやる」、というやめかたはもったいないです。しんどい時には一時休憩、という形にされることをお勧めします。
以前、「半年も通ってるのに妊娠しないなんておかしい、もう不妊治療なんかやめろ、と旦那に言われた」と言われた方がいました。医師としては不妊治療にはある程度の期間がかかることがわかっていますが、患者さんご夫婦には、どの位の期間がかかるのか、ということをご存じないので、このようなギャップが生じるわけです。
私どもが今回、妊娠までの期間を公表したのも、こういう情報公開がご夫婦の治療方針決定の一助になれば、と思ったからです。 |