なんで子供がほしいんだろう?夫婦とか家族ってなんだろう?
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不妊症で通院されているかたのほとんどが、「子供がほしい理由なんて別にない、ただ単純に子供が欲しいだけだ」と言われます。後継ぎがいないと困るから、とか、じいちゃんばあちゃんがうるさいから、という理由のかたは少数です。子供がほしい、ってのは自然な気持ちだということです。
一方、子供さんがなくても仲良く楽しくふたりで暮らしている夫婦はたくさんあります。それでOKなら不妊治療を受ける必要はありません。
わたしたちは、どちらの考え方もわけへだてなく尊重しています。実際、わたしたちの職場とか親戚とかにも子供さんのいない夫婦がいます。むこうから相談されることがなければ、こちらから「不妊治療ってのはこうこうなんだけど受けてみない?」なんて言うことはありません。
家族構成が多様化している現在では、夫婦だけ、夫婦と子供、母親と子供、父親と子供、とかいろいろな家族があります。独身だってひとつの家族構成と言えます。どんなスタイルでも幸せに暮らしている家族はあります。どのスタイルが幸せ、なんて単純には言えないのです。
不妊治療で通院されると、治療自体がとても苦しく感じられることがあります。われわれ不妊治療スタッフは、「子供がほしい」という自然な気持ちを応援しつつ、でも治療がかえって心の負担にならないよう配慮しつつ、子供さんを望まれているご夫婦の手助けをしていきたいと考えております。 |
| 周囲からのハラスメントなんかに負けるな! |
ここ10年くらいで不妊にたいする社会の認知もずいぶんかわったと思います。不妊治療をあつかうテレビ番組でも、とても暖かい視点で編集されるようになってきました。倉敷中央病院も数年前に山陽新聞の取材を受けましたが、記者のかたがとても丁寧に取材をされたのが印象に残っています。
しかしいまだに「子供のつくりかた教えちゃろうか」てなデリカシーのないひともいます。職場で、近所で、あるいは親戚とかから、いろんなハラスメントがあるかと思いますが、そんなもんに負けるな!しょせん他人は他人、クールに対応しましょう。
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| なにか趣味や気晴らしを |
不妊治療は、治療自体がストレスになります。基礎体温の上下で一喜一憂したり、妊娠を楽しみに待っているときに月経が来て落ち込んだり、うまくいかないときには谷底に突き落とされるようだ、とおっしゃいます。
なにか趣味や気晴らしを持たれることをお勧めします。不妊治療のことを忘れられるような時間があると、気持ちにも余裕がでてきます。 |
| 夫婦のあいだの思いやりを忘れずに |
| 他人からの冷たい言葉はともかくとして、最もむずかしい問題は、夫婦のあいだで不妊治療にかける熱意のズレがあるときです。妻が夫に「今日が排卵日なのになんで寝てしまうんだよー」と思うときもあるでしょう。夫が妻に「がんばって治療を続けて子供を産んでくれー」と言いたくなるときもあるでしょう。しかし、支えあうべきはずの夫婦が、相手に過度のプレッシャーをかけてもうまくいきません。夫婦でもおたがいに思いやりをもち、心に余裕をもって治療を受けてください。 |
| 夫が妻に「おまえの好きなようにしたらいい」と言うのはよくない |
| たとえば奥さんが「原因不明不妊で人工授精を6回しましたが、よい結果が出ないようですから、体外受精を勧めます」と病院で言われたとします。こんなときご主人が、「どっちでもいいよ、自分の思うほうに決めたら」というのは、あまりよくないと私は思います。「自分で決めろ」というのは、妻の自主性を尊重して優しいように一見思えますが、実は無責任なのです。「僕は体外受精って人工的な感じで好きじゃないから、あと半年は人工授精を続けようよ」とか「体外受精のほうが妊娠率が高いのなら、お金がかかるけどやってみようか」とか具体的な意見を言うべきです。夫婦で話し合って方針を決めた、ということで奥さんは安心して治療を続けられるからです。 |
| 不妊治療のステップアップについて |
不妊治療では、タイミング指導、人工授精、体外受精、という受精方法の段階があります。治療を高度にすることは確かに妊娠率を高くしますが、じゃあどんどんステップアップしたらよいかというと、そうでもありません。
1999年にアメリカで、通常のステップアップ不妊治療を受けた群と、最初から体外受精を受けた群とで、1年後の妊娠率を比較した調査が行われました。意外なことに、最初から体外受精を受けた群のほうが妊娠率は低いという結果が出ました。
ある一組の御夫婦でも1回目の体外受精で受精卵を3個戻して妊娠せず、2回目にも妊娠せず、ようやく3回目にはうまく妊娠され、しかもいきなりみつごちゃんという例もあります。3回目の治療では卵と精子と子宮のコンデイションが良かったのだろうと考えられます。この「コンデイションが良い」ということがどういう条件がそろうと成立するのかはよくわかっていません。タイミング指導や人工授精でも、「コンデイションが良い」というのをずっと待っているわけです。これはある程度の回数が必要です。
不妊治療は「出口の見えない長いトンネル」と形容され、できるだけ早く妊娠したいと思われるのはよくわかりますが、「体外受精でないと妊娠しないんだ」「体外受精をすれば妊娠できるはずだ」と思いつめるのはよくありません。また近年、性急なステップアップを行なう病院がありますが、患者さんの適切な医療費負担という観点からも問題があると思います。
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| 不妊治療を受けた結果、子供さんに恵まれなかったかたへのメッセージ |
不妊治療を受けて子供さんができる。これはご夫婦にとっても、われわれにとっても幸せなことです。しかし、体外受精などの高度医療を受けられても残念ながら子供さんに恵まれないかたもおられます。現在の医療は、簡単にいうと精子と卵を出会わせるところまでが限界です。精子に問題がある、卵に問題がある、子宮への着床に問題がある、などまだまだ人知の及ばない聖域があります。
このさき医療はさらに進歩していくでしょう。未熟精子の培養技術、未熟卵の培養技術、さらには遺伝子のみ夫婦のもので受精卵の細胞質は他人のものを利用するようになるかもしれないし、ひょっとして子宮移植も登場するかもしれません。
しかし、どれだけ医療が進歩しても、いつの時代にもかならず、最先端医療を受けても子供さんに恵まれないかたはいるだろうと思います。現在の医療の問題として、高度医療を受けても妊娠・出産に至らないかたにたいするメンタルケアが大きく遅れています。
不妊治療の結果、子供さんに恵まれないことが現実的になったときこそ、夫婦のきずながためされる時です。前に書いたように、家族構成が多様化する現代において、子供がいるから幸せ、子供がいないと不幸せ、といった単純な割り方はできません。そういう場合には、ふたりで生きていくというライフスタイルを設計しなおさなくてはならなくなります。おそらく結婚する時には「困難に出会った時にも互いに助け合い生きていこう」と誓ったはずです。わたしたちも、不妊治療で子供さんに恵まれず、試練を乗り越えて、明るく夫婦ふたりで生きていきます、と力強く言われたご夫婦を何組も見てきました。そういうご夫婦を心から尊敬しています。 |