麻酔科―ジュニアレジデント1年次 中村 通孝
2009.11.25
倉敷中央病院での麻酔科研修が始まり、あっという間に2カ月が経ちました。麻酔科研修は3カ月ですので、現在3分の2が終了したところです。2カ月だけでの体験記となりますが、研修内容と感想を以下にまとめます。
研修内容
麻酔科の研修は1年目にあり、期間としては3ヶ月あります。 その3カ月間の間に @麻酔 AICU B救急 の研修があります。 月曜日は7時45分から論文の抄読会があり、火曜日〜金曜日は8時からカンファレンスが始まり、当日の麻酔症例の問題点と麻酔法、緊急手術症例やICUに入室している患者さんの状態の共有をします。そしてカンファレンスが終了したら麻酔やICUなどその日の担当に応じて仕事が始まります。
@ 麻酔
◇一日の流れ
麻酔準備→カンファレンス→麻酔導入→維持→覚醒→術前診察・術後回診
 ▲薬剤などの準備
麻酔は指導医の先生とマンツーマンで担当します。研修が始まり1日目はオリエンテーションで麻酔科での仕事の説明があり、2日目から早速麻酔を担当することになりました。
まず麻酔をかけるにあたり『術前診察』があります。そこで患者さんの状態やカルテチェックを行い、麻酔時の問題点を把握し、指導医の先生と打ち合わせをします。それから、実際に患者さんに会って診察と説明をします。
 ▲2カ月でボロボロになった書籍類
手術当日になると朝一の手術であればカンファレンス前に、前日行った術前診察や打ち合わせを元に麻酔の準備(麻酔機モニターの設定、薬剤、輸液、挿管など)を行います。そして、麻酔を導入して維持、覚醒という順に進みます。導入と覚醒の時は指導医の先生にみてもらえるから安心です。維持に関しては患者さんによっては任されることもあります。そして、無事に覚醒したら病棟の看護師さんへと経過を申し送り、見送れば一人目が終了となります。その後、次の患者さんの麻酔準備に取り掛かります。通常1日平均2〜3人担当します。午後になり手術室がある程度落ち着いてきたら、術後診察と翌日の術前診察に取り掛かることになります。
基本的に朝から晩まで手術室にこもりっぱなしということが大半で、拘束日(緊急手術があった時に麻酔をかける担当として呼ばれる日)には夜間に呼ばれることも多々あります。多いときには1日で6件の手術の麻酔に入ることもありました。
◇経験した手技や知識など
バッグマスク換気、気管挿管(ラリンジアルマスク含む)、動脈ライン確保、静脈ライン確保、中心静脈ライン確保、動脈血採取、胃管挿入、頚静脈エコー、気道吸引、麻酔機器の設定、麻酔チャート作成、人工呼吸器設定など
A ICU研修
 ▲指導医とともに患者さんの処置中
ICU研修としては3カ月のうち1週間+隔週毎の土曜日があります。ICUに入室になるのは全身管理が必要となる患者さんで、病棟で状態の悪化した人、救急から直接搬送されてくる人、術後の人と様々です。
連続した期間としては1週間だけになりますので、積極的な治療への参加は難しかったですが、指導医の先生やシニアの先生とともにラウンドし、患者さんの状態管理をしますので、ICUにおける鎮静・鎮痛、呼吸管理、循環管理、栄養管理の考え方などについてとても勉強になりました。
また、月曜日には一人担当の患者さんがあたりますので、その患者さんのプロブレムリストや病態、管理、治療などに関して文献的な考察をし、金曜日に発表します。その際、考察内容、文献の吟味や活かし方、また過去にあった症例や経験などを交えて様々に指導してもらえるのでとても勉強になりました。
B 救急
 ▲指導医に相談
救急研修としては週に1度のペースであります。救急の日は麻酔のカンファレンスには出ず、救急のカンファに出て、夜間に救急に来た患者さんの振り返りをし、情報を共有します。
金曜日には朝7時半から放射線科の先生によるCT読影のレクチャーがあります。
研修内容としては救急外来に来られた方の対応(問診・診察・検査)、救急車対応、必要に応じ他科へのコンサルトをします。
困った際にはすぐ横の部屋にJ2の先生や救急の先生がいるので、すぐに相談できてとても安心です。
救急車に関しても必ずJ2の先生か他の先生と一緒に診察に当たることになるので対応の仕方や検査の選択などとても勉強になります。
そして、当日の17時以降に担当した患者さんの振り返りがあり、対応が良かったか、もっと詳しく病歴を聴取するべきだったポイントなどを教えてもらいます。
振り返り終了後は麻酔に戻ります。
感想
 ▲研修において掛け替えのない同期達
僕が麻酔科を研修して最初の感想は、とても「怖い」ということでした。特に最初はそうでした。
麻酔に用いる薬の多くは、投与すれば数分以内に効果が出てきます。しかも、投与してしまうと取り出せないので使用に当たっては緊張します。経験のない自分には、どれだけ入れたら、どれだけの効果があって、どのくらいの時間で効いてくるのか、よくわかりませんでした。さらに、その人の背景や状態によってもその効果や時間にはばらつきがあるのです。どれくらいまで使わずに見ていていいのかという、治療開始のタイミングの決定も重要です。そして、初めて一人にされたとき(もちろん、リスクの少ない患者さんの麻酔維持中の短時間ですが)、何も起こらないことを祈りながら、血圧が変動するたびにドキドキしていました。
当院の麻酔研修はマンツーマンです。様々な場面で上の先生がそばにいて、一つ一つ教えてもらうことができます。患者さんのごとに、そのさまざまな変化に、どのように先生が対応しているかを見て学んでいくと、何かが起きる前に予測して対応しようという姿勢が自然と身に付いてきたような気がします。たとえば、『血圧が変動するたびにただあわてて、昇圧薬投与などを考える。』という状態から、『なぜ血圧が変動するのか理由を考えて対応をしよう。』というようになり、さらには『尿量も少なく、Aline波形に呼吸性変動もあるから血管内容量が足りないのかな。今後血圧が下がるかもしれないから少しVolumeを負荷しておく方がいいな』とか、『硬膜外麻酔を投与したから今から血圧は下がってくるな』と先回りできるようになります。
当院は手術件数がとても多く、麻酔科は大変忙しい科ではありますが、2カ月だけでも本当に様々な経験があり勉強になりました。また麻酔科はとても優しく教育的に指導して下さる先生が多く、麻酔計画における先生ごとの視点や考え方を勉強できますのでとても恵まれている研修環境だと思います。 まだまだ分からないことやできないこと、また怒られてへこむことなども多々ありますが、同期7人で同時に研修しておりますので、お互いに励ましあい、切磋琢磨していけるのも魅力の一つだと思います。
長々と書いてしまいましたが、百聞は一見に如かずだと思いますし、ぜひ一度実習に来て下さい。
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