- 前立腺癌
当科における根治的前立腺全摘除術の症例数は全国的にみても上位に入っています(2008年 86件、2009年 87件、2010年 91件、2011年 108件)。当科では通常の開腹手術で行っていますが、皮膚切開は5〜6cmと小さく、いわゆるミニマム創手術の大きさです。術前に性機能があり性機能温存を希望する症例に対しては、術中に陰茎海綿体神経電気刺激を行って勃起神経を確実に温存するようにしています。意図して勃起神経温存術式を行った場合にはほぼ100%温存可能です。最近は60歳代前半以下の若年患者さんが増加する傾向にありますので、性機能温存は術後QOLの向上に寄与していると思われます。前立腺全摘除術にあたっては、術後5〜6日目に尿道バルーンを抜去し7〜8日目に退院するクリティカルパスを適用していますが、95%以上の症例はパス通りに退院しています。同種血輸血を要した症例は2%以下にとどまっています。
限局性前立腺癌に対する根治的治療法としては、手術だけでなく放射線療法もあります。放射線療法の中でも外照射(当院)、高線量率組織内照射(川崎医科大学)、ヨード(I-125)密封小線源永久挿入(岡山大学)の3通りの方法があります。当科では、これらの治療選択肢について患者さんに説明し、十分話し合った上で治療方針を決定しています。
また、局所進行性前立腺癌に対しては、内分泌療法を先行させた後に放射線療法(外照射)を行うことによって根治あるいは長期間の局所制御を目指しています。新リニアック装置では強度変調放射線療法(IMRT)が可能で、総線量74Gyで施行しています。近隣の泌尿器科の先生方からも、放射線治療目的で数多くの患者さんをご紹介いただいています。
- 尿路上皮癌
進行性膀胱癌に対しては根治性最優先のため膀胱全摘を第一選択としており、抗癌剤・放射線併用による膀胱温存治療はあまり積極的には行っていません。膀胱全摘症例に対しては、勃起神経温存とともに自然排尿型尿路再建術を積極的に行い、QOL向上を目指しています。
膀胱癌、腎盂尿管癌の治療においては、術前、術後の局所制御や転移巣治療を目的とした多剤併用抗癌剤治療が重要な位置を占めています。当科では、集学的治療により根治の可能性がある症例には積極的に化学療法を行っています。また、palliative treatmentとしての抗癌剤治療も適応を十分に考慮した上で積極的に行う方針で治療にあたっています。このため、化学療法を施行する症例が大学病院に劣らず多いのが特徴です。
- 腹腔鏡手術
現在、副腎腫瘍、腎腫瘍(癌)、腎盂尿管腫瘍(癌)のほとんどは腹腔鏡手術で治療しています。開腹手術の適応となるのは腫瘍が非常に大きく悪性度・浸潤度が高いケースのみになっています。腹腔鏡手術といっても、当科では腹腔を経由しない後腹膜アプローチが大部分を占めています。腹腔鏡手術は、手術創が小さいため術後早期の痛みが少なく回復が早いというメリットがあります。当科では1994年より腹腔鏡手術を導入しており、患者さんには安心して治療を受けていただけるだけの十分な症例数と経験を有していると自負しています。2004年から泌尿器腹腔鏡技術認定制度が発足しましたが、現在当科では3名の医師(寺井、井上、西澤)が技術認定を受けています。
- 前立腺肥大症
前立腺肥大症の手術は経尿道的前立腺切除術(TURP)が標準的方法とされていますが、当科では2005年7月からホルミウムレーザー前立腺核出術(HoLEP)を導入しました。HoLEPは肥大腺腫(内腺)と外腺との間の剥離面に沿って止血しながら内腺を丸ごと核出して膀胱内に遊離させた後、モルセレーターを用いて細切・吸引除去する術式です。TURPと比べて出血量が少なく、灌流液吸収による循環器系への影響が小さいため、高度の前立腺肥大症や内科的合併症のためTURP不適応とされた症例にも安全に施行できます。術後の排尿状態の改善も非常に良く、優れた手術方法だと思います。当科ではHoLEPを既に500例以上実施しており、TURPや開腹手術(前立腺被膜下摘除術)を行うことはほとんどなくなりました。4泊5日入院のクリティカルパスを適用しています。
詳しくは当院ホームページの掲載記事をご覧ください。
ホルミウムレーザー前立腺核出術
- 男性不妊症
男性不妊症は男性生殖器を診療対象に含む当科にとって重要な疾患です。不妊の原因の半分は男性側にあるとされています。当院婦人科はもちろん、近隣地域の婦人科医との連携のもと、精巣精子回収術、精巣上体精子回収術など最近進歩の目覚ましい補助生殖医療の一翼を担っています。精巣精子回収術は手術用顕微鏡を用いるmicrodissection法で行っています。本法は精巣組織へのダメージが少なく精子回収率が高いのが特長で、最も難治とされるYoung症候群やKleinfelter症候群症例の挙児にも成功しています。社会的生産年齢期にある患者さんのニーズに応えるため、外来手術でも行っています。
- 女性泌尿器科
40〜50歳以降の女性では、骨盤内臓器の支持組織(筋肉、靭帯等)の脆弱化が原因で生じる尿失禁や性器脱が高頻度に見られます。これら女性特有の疾患を扱う分野はurogynecologyあるいは女性骨盤底医学と呼ばれ、この数年間で治療法が目覚ましく発展しています。当科では2007年初めより「女性泌尿器外来」を開設し、尿失禁や性器脱を中心として女性骨盤底医学に本格的に取り組んでいます。尿失禁に対しては、各種の理学療法機器(干渉低周波治療装置ウロマスター、磁気刺激治療装置ネオコントロール、バイオフィードバック療法装置フェミスキャン)を有しているほか、最新のTOT手術も実施しており、病状や患者さんのニーズに合った治療法を選択できるようにしています。また、性器脱に対するメッシュ修復術(TVM手術)も2006年6月から開始しましたが、既に240例以上実施し、合併症なく非常に良好な治療成績をあげています。今後もますます患者さんが増えると予想されますので、当科としても力をいれている分野です。
詳しくは当院ホームページの掲載記事をご覧ください。
女性泌尿器外来開設のお知らせ、女性泌尿器外来ホームページ