
篠原
まず、簡単に自己紹介しましょうか。
尾﨑
私は奈良の大学で学び、倉中を初期研修先に選び、ジュニアからそのまま麻酔科シニアレジデントとして進んでいます。最初から麻酔科を志望していました。
堤
僕は福岡の民間病院で初期研修を終えて、4月から後期研修で当院へ来ています。初期研修のころはまだ志望科がはっきりと決まっていなくて、外科系か、麻酔科か…といろいろ悩んでいました。
渡邉
僕はもともと倉敷出身で、琉球大学へ進学し、そのまま沖縄で初期研修を受けて、後期研修から倉中へ来ました。
篠原
僕は徳島出身で大学までを徳島で過ごして、初期研修で姫路へ行き、後期研修から倉中です。倉敷は母の地元で縁があり、抵抗なくやって来ました。
篠原
尾﨑先生、堤先生は、入職してから4か月経ったけど、実際シニアとして働き出してどうですか?
尾﨑
充実しているなぁ、と感じます。忙しいと感じる暇がないくらい(笑)その日の症例を一生懸命こなしたら、もう1日が終わっている(笑)
篠原
初期研修先の病院とくらべて、倉中は違うなって思うところはある?
堤
なんといっても症例の幅広さとハイリスク患者の多さですね。僕が初期研修を受けた病院ではほとんどASA PS分類1か2でしたが、こちらではPS3以上のハイリスク患者が多くて驚きました。特に冠動脈疾患の既往がある患者さんが多い印象があります。当院の循環器内科や心臓血管外科が有名というのもあるんでしょうね。
篠原
当院麻酔科で後期研修をしようと決意した要因は?たくさんの病院があると思いますが…
尾﨑
出身大学にはいつでも帰れるので、あえて外へ出られる時期に別の病院へ行こうと。症例も医師の数も多い、とにかく大きな病院という視点で倉中を選びました。医師の数が多ければ、いろんな考えに触れられるし、学べる。症例が多ければいろいろな手技が身に付くはず。そういう環境が自分にとって良いと思って。
堤
僕の場合は、前の病院は中規模で手術も少なく、見られる症例も限られていたので、いろんな症例が見られて経験を積める先…ということで倉中を選びました。大学病院だと、見学はできても経験を多く積めるかという点で難しそうだと感じましたし。
系列病院を数か月ずつローテーションでまわれそうな病院を見学したのですが、実際は、所属した病院にある程度勤務して他病院は短期研修で行く、という状況で、あまり自身のためにはならないと感じてやめました。
篠原
うちは診療科がそろっているから、ひと通りの麻酔が経験できるのが大きいですね。
尾﨑
小児の心臓外科と移植がないくらいですよね。
篠原
後期研修のあいだに経験しておきたい麻酔科症例を頭のなかでイメージしていくと、緊急手術の対応や心臓外科、産婦人科、脳外科、小児外科の麻酔ができる環境は絶対必要。それが全部そろっている病院を後期研修先に…と考えて、関西の病院をリストアップして診療科を調べたんだけど、数えるくらいしかなかったです。
尾﨑
篠原先生は大学に残ることは考えなかったんですか?
篠原
大学だと、臨床もやって研究もやって博士号とって…みたいなルートがあるじゃないですか。今はそれを選ばなくてもいいのかもしれないけど。あと、最初はオーソドックスな麻酔をひたすら経験して学んだほうがいいかな、というのもありました。
渡邉先生は沖縄で就職しようとか思わなかった?
渡邉
沖縄の医療はものすごく地域密着型なので「地域医療」というキーワードが常に意識にあって。沖縄で6年間お世話になったので、沖縄の医療に貢献したいという思いと、医療状況をみたかったこともあって、初期研修先は沖縄の病院にしました。沖縄の医療状況もわかったところで、故郷の倉敷はどうなんだろうと考えて、幸いにも実家の近くに倉敷中央病院があり、研修先に決めました。麻酔科志望に至ったのは、最後の最後。初期研修時代は、救急は初期研修医が対応していました。状態が悪い患者さんをすぐICUや手術室へ送るけど、その先で何が行われているかわからない…「集中的に治療する分野を一番診ているのは何科だろう」と考え、「結局は麻酔科が全てを管理しているんだ」と気づいて、麻酔科へ進むことを決めました。
渡邉
前の病院の麻酔科医は3人で、それぞれやり方が違い、「麻酔のやり方は人それぞれなんだ」と認識していたのですが、こちらに来て初めて、一人ひとりがこれまで積み上げてきた多くの知識を基にさまざまな考えを確立し、麻酔に携わっていることを知りました。これだけ多くの麻酔科専門医がいるからこそ分かったことだと思います。そして、みんな自分の麻酔に自信を持っている。後期研修開始当初、変なことをすると、すごい剣幕で怒られました。「何やってんだ!」と(笑)。ショックでしたが、1年くらい麻酔科で研修すると、確かにこんな素人みたいな麻酔は許せないだろうな…と気づきました。上からこれだけ厳しい視線が浴びせられる病院というのも、なかなかないかもしれませんね。
篠原
逆にそれだけ厳しい指導のなかで学ぶんだから、ある程度のレベルまではいくんじゃないかな、という思いはありますよね。
渡邉
周りからの支えで成長できている実感はありますね。愛のムチというか。ただ、「あの先生がやっていたからやりました」は何の言い訳にもならないとも思いますし、説得力がないなと実感しています。
忙しさに関しては…どうですかね?たぶん倉中に来た方は、忙しいのが当たり前と思っていると思うので、そんなに苦にしてないんじゃないかと思いますけど…
尾﨑
とにかく経験を積みたくて仕事メインで選んだ!という方が多いんじゃないでしょうか。
渡邉
倉敷中央病院が完全なる地域医療の病院だということも、働いていると日々痛感します。全国を股にかけるのではなく、あくまでも岡山県、とくに西部圏域を医療圏として患者さんを診ている病院。
堤
岡山だけじゃなく広島や四国の他病院から患者さんが緊急手術で送られてくるけれど、当院に送られるだけあって、かなりのハイリスク症例がやってくるなあと感じます。それだけ倉中が信頼されているということだと思います。
渡邉
それを受けて自分が麻酔をする、という状況は、かなりの責任感・使命感を感じます。前の病院だと、どうしても難しかったら最後は、大学とか、近くにある基幹病院へ送っていました。「送られる」立場は経験したことがなかったです。倉敷に愛着があるなしにかかわらず、医療者としての責任感は身に付きますね。
篠原
僕が初期研修を受けた病院は、麻酔科医が2人しかいなかった。そして研修医2年目のときに大学の医局が撤退するといって、麻酔科医がいなくなりました。でも結構手術件数が多くて、外科の先生が麻酔をしたり、緊急手術で研修医が麻酔をしたり、めちゃくちゃ。だけど、今、中規模の病院でも麻酔科医が数人、という状況が多いと思うんです。そのなかで、うちは20名ほどの麻酔科スタッフがいます。多くの医師から指導を受けられるメリットは大きいですよね。でもハイリスクな患者が多いだけに、危険な思いは何度もしているでしょう?
尾﨑
安全に危険な思いができる環境ですよね。必ず上級医がサポートしてくれる体制があるので。怖い怖い、と思いながら、後ろに上級医がいてくれてよかった、という状況が何度もあります。
篠原
僕は、初期研修のときに緊急の麻酔を看護師さんとかけたことがあります。今考えると怖いけど、その頃は別に怖い目にあっていないから、恐怖心がありませんでした。だけど麻酔科医として働いていると、思いがけないことが起きて怖い思いをする瞬間があります。それがリスクマネジメントにもつながると考えているので、逆に麻酔科医はそういう「怖い思い」をたくさんしていく必要があると思います。
渡邉
その上で、自分が何とかしないといけないんだという覚悟ができています。
篠原
拘束の日でも、必ず上級医の先生がバックアップについてくれているから、助けを求めることができるし、それは安心ですよね。
堤
そうですね、何かあったときを考えると…。
渡邉
うちは集中治療部門からNCU(脳神経外科・脳卒中科)、CCU-S(心臓血管外科)、CCU-C(循環器内科)が独立しているので、麻酔科の専門である術後状態の管理や、救急で運ばれてきた内科的疾患の患者さんの全身状態の管理がICU業務として確立していますよね。今後、救急のICUを作ろうという動きもあるとか。となると、麻酔科としては、院内で状態が悪くなった患者さんと、術後の状態の悪い患者さんをICUで診ることが求められる役割となりますね。
堤
ICUがしっかりしているから、術中に困った症例があっても、術後を管理してくれるという安心感もあります。
篠原
うちはどの科も後期研修医が多い。同じくらいの年代の人と仕事する機会が多いっていうのは、刺激にもなるし、いろんな話も聞きやすいと思うんです。尾﨑先生は、もともと初期研修からやってきた仲間が各科に進んでいるけど、やっぱり話しやすい?
尾﨑
仕事上のことなど、よく情報交換しています。ジュニアレジデント時代からこの環境にいると、相談し合えるこの環境が当たり前に感じます。小児科のルートはどこでとるの?と質問したり、逆に質問されたり。
篠原
うちのジュニアの特権ともいえますね、同期が30人もいるし。研修医も、初期後期あわせて200人ぐらいで、医師の総数が400人くらいだから、ほぼ半数…なかなかないと思うんです、こういう病院って。
尾﨑
半分は研修医だけど、半分は専門医だから、わからないことはまずシニアの先生に聞けるし、それでもわからなかったら上級医の先生に聞けるから、絶対答えは出るよ、と。
堤
同じくらいの年代の人だと、やっぱり聞きやすいし、刺激にもなりますね。
渡邉
そういえば、たとえシニアレジデントであっても麻酔科医として尊重してくれる雰囲気を感じます。他科の、上の先生であっても、意見を求められたりとか。科に対しての尊重がしっかりされてるなと思います。
篠原
麻酔科医として必要なものはうちの研修にはほぼ揃っていると思います。あと、うちはセミナーなどを聞きに行きたいと申請したら旅費を出してくれる、あれはいいシステムだと思います。自分が勉強したいと思ったこと、たとえばDAM(Difficult Airway Management)のセミナーとか、経食道心エコー、ACLSのセミナーとか。施設によっては、そこまでしてくれるかどうか…ふつうは自腹で行かないといけないことのほうが多いと思います。
尾﨑
学会もですか。
篠原
回数の制限とか、下っ端は出してくれないとか…あると思います。その点うちは、学会参加するときは発表なくても全額負担してくれるし、太っ腹ですよね。
渡邉
セミナーなどの情報をネットで調べて、学びたいセミナーがあれば業務と折り合いがつく範囲でチャンスは与えられる環境ですよね。学びたいと思えば自分がどこまで興味を持って調べるか、それ次第。
尾﨑
あと、学会発表にからんでですが、うちは珍しい症例の種類も多いですし、難易度も高いので、「こういう症例を体験しました」と発表しやすい環境だと感じます。「こういう変わった症例があるから、こんど発表してみたら?」と提案していただいたりとか。学会での発表経験を積むという点で、恵まれていると思います。
渡邉
後期研修修了後に小さい市中病院に行ったとして、物足りなさを感じることがあるんじゃないか…と思うこともあります。
篠原
それは僕も感じることだけど。後期研修後のことって、考えたことあります?たとえば麻酔科医といっても、手術の麻酔、集中治療、ペインクリニック、救急…いろんな道がある。今は主に手術の麻酔をやっているわけだけど、どうですか?
堤
今まで初期研修医のときに経験しているのが救急ぐらいなので、ICUとか、そっちのほうはあまりイメージがわかないのですが…
篠原
後期研修2年目でICUの研修をして当直も担当することになるから、そこで考えてもいいですね。渡邉先生は?
渡邉
救命救急病棟を持っているような病院の救急科で働きたいです。
篠原
今、隣に建設中の棟に救急部門が移って、救命救急センターとするっていう話もありますね。
渡邉
うちが3次救急を取れれば、残ろうかなと思うんですけど。救急外来でみた患者さんをしっかり病棟で状態管理して、退院まで診られれば、ひとつ、自分としてはゴールかなと思っています。
篠原
あと、エキスパートを目指す方にはってことで言えば、ここ数年、神経ブロックやエコーガイド、経食道心エコーが注目されているけど、うちも実績ありますよね。
尾﨑
数をこなせばこなすほど、試験対策もしやすいと聞きます。
篠原
経食道心エコー有資格者は、うちの病院だと麻酔科に1人、心臓外科や循環器内科にもいる。その先生たちから教えてもらえる環境があるのは良いですよね。これからの麻酔科医には必須分野だと思います。
渡邉
技術に関しては、症例が幅広く、数も多いのでどんどん身につくでしょうね。そういう意味では有利な環境だと思います。
篠原
自分が興味ある分野に、自分から積極的に取り組める環境でもあるよね。前の病院では神経ブロックとかやっていました?
堤
いいえ、全麻か脊麻か硬麻か、そのくらいでした。
尾﨑
私は、最終的には集中治療がしたくて麻酔科へ進んだので、そういう方向へ進みたいと思っています。
篠原
岡山、倉敷について思うことはありますか?
堤
天候がすごく良いですね、食べ物もおいしいし。
渡邉
果物がおいしいですよ。桃やピオーネや…。
篠原
交通の面でも、意外に便利。岡山まで行けば、そこから「のぞみ」に乗れるのは大きいですよね。毎年学会が開かれる神戸も1時間で行けるし。日帰りできるのは助かります。
尾﨑
買い物も、大阪まで出かけたり。大阪も新幹線ですぐです。今年の秋に倉敷駅北口にオープンするアウトレットモールも楽しみです。
堤
そうそう、津山のホルモンうどんを食べに行きました。九州新幹線が開通したので実家の熊本に帰るのが便利になりました。
尾﨑
私は鞆の浦に行きました、ポニョの舞台といわれる…あと、ジュニア時代にはよく、四国へうどんを食べに行っていました。香川まで、車で1時間で行けますし。
篠原
じゃあ後輩として入ってくる皆さんへ、アピールポイントを。
渡邉
僕は麻酔科を選んだことは正解だったと思っています。科として、麻酔科はとても魅力的だし、特に救急医療のなかでは重要なポイントを占めていると思います。そのあたりに興味がある方は、一度うちの麻酔科を覗いてほしいです。僕は倉敷中央病院、好きですよ。地域医療に貢献できて、特殊な症例も経験できて。
堤
術後の緊急対応は、救急へ行ってもできそうですよね。色々な経験を積めるいい病院だと思うので、頑張って麻酔の勉強をしたい!という方にはお勧めです。
尾﨑
忙しいけど、上の先生は各段階で経験してもらいたいと思って症例を当ててくださるので、愛のある指導をいただいているなと感じています。
篠原
仕事の日は確かに忙しいし、ハイリスク患者さんの症例も多いけど、休みの日は完全にオフ。オンオフはっきりした充実した生活ができていると思います。当直や拘束に当たった次の日は、早く帰れたり、仕事をセーブできる体制があります。休みには呼び出しは無いし、気持ちを切り替えながら仕事ができています。
渡邉
業務面では、倉中の麻酔科医として働けるようになったら、どの病院にいっても困らないと思いますね。
先輩からのメッセージ
01『晴れの国、おかやま』で一緒に麻酔しませんか。
地元倉敷を離れ、南国沖縄で楽しい学生生活と充実した初期研修時代を送り、そろそろ故郷の医療も見てみようかと思い倉敷中央病院へやって来ました。病床数1151床、手術室23室、医師数400人以上の巨大病院は桁違いのスケールで私に襲い掛かってきました。後期研修1年目に経験した手術件数は621件でそのうち緊急手術は132件、新生児から90歳以上の高齢者まで患者背景は様々で、手術も多種多様。これまでに見たこともない手術も多く、日々勉強し毎日歯を食いしばって何とか1年終えることができました。2年目になると神経ブロックや心臓外科麻酔、ICU研修など麻酔の幅を広げられるような研修がはじまりとても充実しています。忙しい毎日ですが、講習会や学会発表など学術的な分野への参加も病院が援助してくれるので大変助かります。もうすぐ3年目ですが、麻酔科当直医として深夜の緊急手術とICU対応ができるようになることが当面の目標です。みなさんも、『晴れの国、おかやま』で一緒に麻酔しませんか。
02経験豊かな指導医のもと、幅広い経験ができる環境が待っています
当院の麻酔科の特徴は、第一に症例が豊富であること。移植医療、先天性心疾患手術の麻酔を除き、ほとんどの外科手術の麻酔を経験することができます。日々の麻酔を経験豊かな指導医のもとで研修することで、様々な病態、重症度の患者の麻酔管理が行えるようになります。手術室は最新の機器が導入され、ハードもソフトも申し分ありません。第二に、充実した集中治療を学べること。当院の集中医療センターには、年間800人あまりの患者が入室します。生後数日の新生児から高齢者まで、また救急センターから入室してくる、さまざまな病態の急性期患者や術後患者、病棟で急変した患者などの診療を通じて、広範な病態と治療技術を学ぶことができます。ICUにはほとんどすべての診療科の医師たちが集まり、日に何度もカンファレンスを行っています。良好な人間関係の中、互いに切磋琢磨しながらの仕事はとても充実しています。



