肺癌
原則として病巣を含む肺葉切除とリンパ節郭清を行います。完全切除に必要な場合は2葉切除や1側肺全摘を施行しますが、気管支形成術、肺動脈形成術を行って肺全摘を極力回避するようにしています。進展例では胸壁、横隔膜、上大静脈、心嚢、左房等の合併切除も行います。また縮小手術として区域切除、部分切除を、病巣の大きさ、リンパ節転移の有無、肺機能などを考慮して行っています。
近年、その低侵襲性から、世界的に肺癌に対する胸腔鏡手術(VATS)が普及しつつあり、前述の如く当科でも積極的に取り入れています。但し、癌の手術である以上、根治性が損なわれるようでは本末転倒です。VATSでは現在のところ縦隔リンパ節郭清において、標準開胸よりやや不利である点を考慮して、当科では現在のところ、VATSの適応を基本的に、画像的にリンパ節転移なしと想定される臨床病期T期に限定して実施しています。さらに郭清リンパ節はほぼ全てのstationを術中迅速病理診断に提出し、リンパ節転移が1か所でも認められた場合には、標準開胸と同様の郭清ができるように皮切をやや延長して(8〜9cmほど)徹底郭清を行っています。これにより、従来の標準開胸で行った場合と同様の根治度が達成されていると考えます。
最近は全国的に肺癌に対してVATSを取り入れている施設が増えてきていますが、中には毎回10cmに及ぶ皮膚切開を入れ、肋間をかなり広げて手術を行っている施設も少なくありません。これではVATSの最大の利点である低侵襲性が十分に生かされているとはいえないと考えます。
当科では通常、腋窩付近に小開胸用の4〜5cmの皮切を置き、これ以外に操作孔(ポート)用の約1.5cmの皮切を2か所置いて手術を行っており、肋間の開胸幅を可及的に狭くするようにしています。但し胸膜癒着や分葉不全が高度の場合、および術中迅速病理診断でリンパ節転移が確認された場合などでは皮切を延長することもあります。
また近年、胸腔鏡を含めた内視鏡手術での事故例が数例報道され、内視鏡手術の安全性が問題となってきております。当科でもこの問題を厳粛に捉え、VATSの適応を慎重に検討するとともに、術者を経験豊富な専門医に限定するなど、安全性を第一に考えて手術を行っております。この結果、2006年までに500例以上の胸腔鏡補助下の肺癌手術を行っておりますが、手術関連死亡(在院死亡も含む)は1例もみられておりません。
術後創部痛は標準開胸に比べ軽微で、術後の肺機能低下も少なく、したがって術後QOLは良好であり、通常は術後5〜7日とういう短期間で退院されています。
以下に当科での肺癌切除例術後生存率を提示します。
| ステージ |
1年 |
2年 |
3年 |
4年 |
5年 |
| TA(n=207) |
99.0 |
95.6 |
93.1 |
89.7 |
85.6 |
| TB(n=96) |
93.9 |
86.6 |
83.3 |
79.0 |
74.5 |
| UA(n=20) |
100.0 |
90.0 |
85.0 |
70.0 |
59.2 |
| UB(n=34) |
94.1 |
82.4 |
73.5 |
64.7 |
55.9 |
| VA(n=53) |
84.3 |
62.8 |
43.2 |
29.4 |
27.3 |
| VB(n=13) |
66.7 |
50.0 |
50.0 |
50.0 |
50.0 |
| W(n=14) |
57.1 |
35.7 |
35.7 |
28.6 |
28.6 |
| 全体(n=437) |
93.6 |
85.2 |
80.0 |
74.1 |
69.8 |

ステージはTNM分類による

