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  新たな直線加速器(ライナック)が稼動しました

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倉敷中央病院放射線科放射線治療室は、昨年11月に新たな直線加速器(ライナック)を導入しました。3 か月に渡る線量測定、調整を終え、この2 月から稼動を開始しました。旧ライナックと併せて2 台体制となり、増え続ける放射線治療の需要に十分な対応が可能となります。また新ライナックは最新のテクノロジーを装備しており、より高度な治療が行えるようになります。それらを駆使することによって、地域医療に一層の貢献を致したいと考えております。以下新ライナックで可能となる最新の放射線治療についてご紹介させていただきます。

  1. 頭部定位放射線治療(stereotactic radiosurgery:SRS、ラジオサージェリー)
  2. 定位放射線治療は、放射線を絞り込んで多方向から照射することにより、病巣のみに高線量を集中する治療法です。3 p以下の、小さな境界明瞭な脳腫瘍(転移性脳腫瘍、聴神経腫瘍、髄膜腫、動静脈奇形等)が適応となります。1 回で高線量を正確に照射するために、ピンで頭部をフレームに固定して照射します。当院では1995 年からSRS に取り組んで来ましたが、旧ライナックでは円形のコリメータを使用していたので複雑な形状の病変への対応に難渋しました。新ライナックではmicro-multileaf コリメータを使用し、どのような形状にも対応した高精度の治療ができます。今夏までには後述のIMRT を応用したSRS(IMRS)も開始予定です。

    重要な神経組織(視神経、脳幹等)を含む病変、3 pを超える病変では、放射線障害の懸念があるため、複数回に分割して定位放射線治療を行います( stereotacticradiotherapy:SRT)。当院では3 年前からSRT も開始しております。固定は合成樹脂で作成したマスクで行います。固定誤差は2 o程度でピン固定には劣りますが、分割により安全性は高くなります。SRS ではピン固定による痛みを嫌がられる方、全身状態的に長い治療時間(設定の準備から治療終了まで2−3 時間)に耐えられない方もおられ、このような方にもSRS の代わりにSRT を行います。SRT の治療精度も新ライナックにより格段に向上します。

    頭部ラジオサージェリー専用機であるガンマナイフ、サイバーナイフと比較しても、新ライナックを用いたSRS ではより形状対応性の優れた治療が可能です。SRT に関しても、ライナックでは数回〜30 回以上まで病態により柔軟に対応できますが、サイバーナイフでは数回の分割が限度であり、ガンマナイフでは分割照射は困難です。

  3. 体幹部定位放射線治療
  4. 近年、頭部以外の体幹部についても定位放射線治療が行われるようになりました。頭部のような厳密な固定は難しく、呼吸、拍動等の動きも無視できませんので、頭部程の精密な照射は困難です。しかし、我が国の諸施設で精度と治療成績の向上を目指して長年の努力がなされた結果、昨年、「体幹部定位放射線治療」として保険適用となりました。

    3 p以下の1−2 個の肺腫瘍、3 p以下の境界明瞭な脊椎腫瘍が主たる適応です。特に肺腫瘍においては世界に先駆けて本邦で優れた治療成績が報告されています。

    当院では新ライナックの導入に併せて体幹部定位放射線治療も行えるよう、周辺機器を整備しました。本年3 月頃から治療が可能になる予定です。

  5. 前立腺三次元原体照射(3D-comformal radiotherapy:3D-CRT)
  6. 前立腺癌は近年急増し、腫瘍医学の重要な課題となっています。放射線治療は手術に並ぶ旧い歴史をもっており、特に70 歳以上の高齢者、T3 以上の局所進行癌に対しては第一選択の局所療法とされています。従来の放射線治療でも生存率でみると治療後10 年までは手術に匹敵する成績が報告されていますが、PSA 値の経過観察、生検による検討では効果が不十分であることが明らかになって来ました。これは前立腺が直腸、膀胱に接しているので重篤な障害の懸念から十分な放射線量を前立腺に照射できないことが主な原因と考えられています。

    この点を克服するために、多方向から臓器の形状に合わせた照射野を設定し、膀胱、直腸を重篤な障害をきたさない程度に遮蔽しつつ、高線量を前立腺に照射する治療法が3D-CRT です。10 年以上前から米国を中心に開発され、副作用を増やすことなく治療効果を向上させることができると報告されて来ました。当院においても新ライナックの導入とともに3D-CRT が可能となります。泌尿器科と協力し、少しずつ慎重に照射線量を増やして局所制御率の向上を図りたいと考えております。

    なお、今夏以降には前立腺癌にも後述のIMRT を応用し、より高線量の必要な進行症例にも十分対処できるようにしたいと計画しております。


    前立腺癌3D‐CRT の照射部と線量分布

  7. 強度変調放射線治療(intensity modulated radiotherapy:IMRT)
  8. 上述の治療法はいずれも、病変に絞った均一な強度の照射野で多方向から放射線を照射することにより、病変に線量を集中し、周囲組織への線量を減少させようとする技術です。一方IMRT は同じ照射野内での放射線の強度を敢えて不均一に変える(変調する)ことにより、病変への線量集中性を高めようとする治療法です。定位放射線治療や3D-CRT よりもさらに高度のコンピューターテクノロジーが必要です。

    適切に行えば非常に柔軟な治療計画が可能であり、さらなる治療効果の向上と障害の減少が期待されています。前立腺癌、頭頚部腫瘍での応用が広がっており、IMRT とSRS を併せたintensity modulated radiosurgery(IMRS)も行われています。

    当院でも今夏頃よりIMRT を開始できるようにしたいと考えております。

以上、新ライナックによって実現できる最新の放射線治療技術について述べさせていただきました。困難な技術的課題も多く、予定通りのスケジュールでは進まないかもしれませんが、少しでも早く、より良い治療を提供できるように治療室スタッフ一同努力する所存です。

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