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眼科のご紹介

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01概要

基本診療方針


主任部長   岡田 守生

当科の診療圏は岡山県下はもとより福山をはじめ広島県東部、島根県や四国に及びます。対象疾患は、白内障をはじめ網膜硝子体疾患、黄斑疾患、糖尿病眼合併症、緑内障、眼外傷、角膜移植など、眼科疾患全般に及びます。手術は、白内障手術、硝子体手術、緑内障手術などを多く行っています。レーザー治療は、通常のレーザーのほか光線力学的療法(PDT)による黄斑疾患の治療も行っています。従来から当科は眼科の急性期病院、最終病院としての機能を担ってきました。緊急に処置を要する疾患に対応していること、他院からの紹介患者が多いこと、重症例が多いこと、総合病院の利点を生かして他科との協力のもとに全身疾患の合併例などを受け入れていることなどが特徴です。なお、当科受診の際には紹介状を持って受診していただくことをお願いしています。

日本眼科学会の眼科専門医研修制度の見直しによって、専門医の資格取得の要件として、初期臨床研修修了後の2年間のうちの一年は認定を受けた施設で研修を行うことが必要となりました。施設認定要件には眼科専門医資格を持つ指導者複数名が必要で、大学病院以外の市中病院で認定を受けているのは全国的にも少数です。当科はこの「眼科研修プログラム施行施設」に認定されており、眼科専門医の教育にも努力しています。

アイセンター

2013年8月から、アイセンターを開設し運用を開始しました。このアイセンターは、手術室3室、術前準備室兼術後リカバリー室、術前合同説明室、診察室、受付を含む施設で、眼科の手術は入院外来ともにここで行うようになりました。

設計に際しては、院是の「患者本位」の思想のもと、患者の皆様に安心して手術を受けていただけるように、人に優しい設計を心掛けました。ドアや壁面には木製の倉敷格子の意匠を用いて、暖かい印象にしています。術前準備室兼術後リカバリー室には、手作りの色ガラスによるステンドグラスの窓を設えました。手術室の壁は、冷たい印象を避けるために木目模様にしています。

アイセンターの稼動によって、入院外来ともに眼科の手術を受けられる方はすべて、手術室に隣接した術前準備室兼リカバリー室で術前準備と術後安静を行うようになりました。術前準備室兼リカバリー室では、ご家族の方1名が付き添っていただくことができます。患者さん、ご家族の方への術前説明等も、落ち着いた環境にあるアイセンターで行ってゆきます。アイセンターの開設によって、手術説明や手術準備から術後安静への流れが改善され、患者さんやご家族が安心して快適に手術を受けられるようになりました。


02診療内容

新たな試み

1)加齢黄斑変性症、特発性脈絡膜新生血管、近視性脈絡膜新生血管に対する抗血管内皮成長因子抗体を用いた治療
近年、加齢黄斑変性など脈絡膜から異常な血管が発生する疾患に対して、血管新生を誘発する血管内皮成長因子(VEGF)に対する抗体(抗VEGF抗体)を用いる治療が行われています。加齢黄斑変性と近視性脈絡膜新生血管の治療には保険適用薬剤がありますが、その他の特発性脈絡膜新生血管などの治療には保険適用薬剤がありませんので、他の抗VEGF抗体薬(商品名:アバスチン)を用いた治療を臨床研究として行っています。アバスチンを用いた治療は、臨床研究としての治療ですので、効果や合併症などについても不明な部分があることをご理解ください。

2)網膜静脈閉塞症や糖尿病網膜症などの網膜循環障害による黄斑浮腫、増殖糖尿病網膜症や新生血管緑内障に対する抗VEGF抗体の薬剤を用いた治療
網膜静脈閉塞症や糖尿病網膜症などの網膜循環障害による黄斑浮腫の改善や増殖糖尿病網膜症の新生血管や新生血管緑内障の虹彩新生血管の抑制に、上記の抗VEGF抗体を用いた治療の有効性が報告されています。網膜静脈閉塞症や糖尿病網膜症などの網膜循環障害による黄斑浮腫の治療には保険適用薬剤がありますが、増殖糖尿病網膜症の新生血管や新生血管緑内障の虹彩新生血管の治療には保険適用薬剤がありませんので、他の抗VEGF抗体薬(商品名:アバスチン)を用いた治療を臨床研究として行っています。アバスチンによるこれらの治療は保険適用となっていないので、当科では臨床研究として行っています。アバスチンを用いた治療は、臨床研究としての治療ですので、効果や合併症などについても不明な部分があることをご理解ください。

3)加齢黄斑変性、中心性漿液性網脈絡膜症に対する低減照射光線力学的療法
ベルテポルフィンとレーザー光照射を用いた加齢黄斑変性に対する光線力学的治療は、2004年から保険適用となりすでに確立した治療法ですが、照射するレーザーエネルギーを従来の量より少なくすることで副作用を低減できる可能性が示されています。また、難治性の中心性漿液性網脈絡膜症に対しても光線力学的療法の有効性が報告されるようになり、当科でも臨床研究として行っています。

4)新しい緑内障手術の導入
緑内障手術は眼圧を下降させる手術ですが、術式により房水流出路手術(房水流出路再建手術)と房水濾過手術に分けられます。流出路再建手術として、トラベクロトミーが行われてきましたが、近年あらたな流出路再建手術がいくつか開発されています。それらのうち、トラベクトーム手術は、結膜や強膜を切開することなく小さな角膜切開から房水流出路の入り口である線維柱帯を切開する新しい術式です。この手術は、角膜だけの切開で行えること、手術時間が短いなどの利点があります。当科ではトラベクトーム手術を2011年から導入し治療を開始しています。

5)ベーチェット病の難治性網膜ぶどう膜炎に対するインフリキシマブ(商品名:レミケード)による治療
ベーチェット病は、発作と緩解を繰り返す難治なぶどう膜炎で、進行すれば著しい視力低下を来します。これまでにもさまざまな治療薬が使用されてきましたが、従来の治療法でも充分な効果が得られないことがあります。インフリキシマブ(商品名:レミケード)は慢性関節リウマチやクローン病の治療薬ですが、ベーチェット病のぶどう膜炎にも有効であることが証明され、眼科領域では2007年に難治性のベーチェット病に対する治療薬として保険適用となりました。本薬は、従来の治療法で充分な効果が得られない場合にも効果が期待できますが、全身的な副作用も起こりえますので使用に際しては当院の内分泌代謝・リウマチ内科(リウマチ・膠原病外来)と協同して治療にあたっています。

加齢黄斑変性に対する光線力学的療法

かつては西洋人に多くみられた加齢黄斑変性が日本でも急増していますが、その傾向は続いています。この病気は視力の中心である黄斑部に異常血管が発生し、そのために視力が著しく低下する疾患です。治療には通常のレーザー凝固術や硝子体手術が行われてきましたが、黄斑直下にある病変については通常のレーザー凝固を行うと黄斑網膜が障害されるため、その適応や視力改善効果が限られていました。このような黄斑下の病変に対して開発されたのが光感受性薬剤であるベルテポルフィンと長波長レーザーを用いた「光線力学的療法(PDT)」です。2004年から保険適用となり当科でも精力的に治療を行ってきました。当科では現在まで416回の治療実績があります。本治療はすべての方に有効というわけではなく、効果も限定的ではありますが、従来の方法では治療困難であった症例でも視力が維持あるいは改善される可能性があります。
さらに、先に述べた抗VEGF療法が有効なことが分かってきており、これらとPDTのコンビネーション治療が行われるようになってきました。

白内障

白内障は、加齢のほか外傷、アトピー性皮膚炎の眼症状、先天白内障などによって起こります。治療は手術ですが、現在ではほとんどの症例に小切開の自己閉鎖創を作成し超音波乳化吸引術と眼内レンズ挿入術が行われています。当科の特徴として、白内障が進行して水晶体核が硬いため前述のような方法がとれない難症例、高齢あるいは全身疾患の合併があって術前術後の全身管理が難しいことが予想される症例、水晶体の支持組織が脆弱で術中合併症発生の可能性が高い症例など、難易度が高い白内障症例があげられます。また、他の眼疾患との合併例も多いため、他の手術(緑内障など)との同時手術も多く行っています。白内障単独手術の場合には、重篤な全身合併症がなく、術後の通院が可能な方には通院手術も行っていますが、術後経過観察のために比較的頻回の通院が必要です。
2015年の白内障手術件数は、約1428件でした。

裂孔原性網膜剥離

裂孔原性網膜剥離の治療は手術治療ですが、いわゆる経強膜法と硝子体手術による方法を症例ごとの病状によって使い分けています。経強膜法は強膜側から凝固針によって網膜裂孔を凝固した後、剥離網膜下の液を強膜側から眼外に排出し、シリコンスポンジを強膜に縫い付けることによって裂孔に対応する部分の眼球壁を眼内に向かって突出させます。この処置によって網膜裂孔を含む剥離網膜を眼球内壁に密着させて裂孔閉鎖を行います。硝子体手術による方法は、硝子体を完全に切除したのち眼内を空気に置き換え、網膜裂孔をレーザー光凝固あるいは眼外から冷凍凝固します。術後は凝固部位が瘢痕化するまでの間、俯き姿勢をとるようにします。表1に示すように、硝子体手術機械と手技の進歩により、最近は網膜剥離手術に占める硝子体手術の割合が次第に増加しています(表中の、DEKは経強膜法、硝子体は硝子体手術を示します)。2015年の裂孔原性網膜剥離の手術は97件でした。

表1:網膜剥離手術の成績(過去10年間)
 
2005年
2006年
2007年
2008年
2009年
2010年
2011年
2012年
2013年
2014年
硝子体
(眼)
54
73
71
69
81
67
59
69
65
69
DEK
(眼)
53
33
26
26
27
26
26
18
15
12
合計
(眼)
107
106
97
95
108
93
85
87
80
81

網膜剥離手術の成績(2015年

表2に2015年の網膜剥離手術件数と初回手術による網膜復位率、最終復位率を示します。最終的な網膜復位率は、98.9%でした。図1に2015年の術前術後視力(術後視力の調査時点は、術後1年以内)を示します。ほとんどの症例で術後視力改善を得ています。

表2 網膜剥離の手術成績
2015年
硝子体手術(眼)
76
経強膜法(眼)
14
合計(眼)
90
初回手術での網膜復位率(%)
93.3
最終の網膜復位率(%)
98.9

図1 網膜剥離術前術後視力:2015年
網膜剥離術前術後視力:2015年

硝子体手術

硝子体手術は、眼内の硝子体を切除し、硝子体腔や網膜などの病変を治療する手術です。
裂孔原性網膜剥離、増殖糖尿病網膜症、黄斑円孔、黄斑前線維症、黄斑浮腫、網膜静脈閉塞症、加齢黄斑変性、黄斑下出血、眼球の外傷や眼内異物などの治療を行います。
近年は、従来の器具に比べてより細い手術器具(23ゲージや25ゲージ)を用い結膜切開を行わず、術創の無縫合を目指す低侵襲な術式が行われるようになってきており、当科でも積極的に取り入れています。
2015年の硝子体手術件数は、322件でした。

特発性黄斑円孔

特発性黄斑円孔は、特に誘引なく黄斑部網膜に円孔が形成され視力が低下する疾患です。現在では硝子体手術によって治療すると黄斑円孔を閉鎖することができます。
2015年の黄斑円孔の手術件数は、25件でした。

黄斑円孔の手術成績(2015年)

表3に、初回手術による黄斑円孔閉鎖率を示します。図2に2015年の術前術後視力(術後視力の調査時点は、術後1年以内)を示します。1年以内の経過観察でも、ほとんどの症例で術後視力改善を得ています。

表3 特発性黄斑円孔術前術後視力:2015年
年度 2015年
手術件数(眼)
25
初回手術での円孔閉鎖率(%)
100

図2 特発性黄斑円孔術前術後視力:2015年
特発性黄斑円孔術前術後視力:2015年
黄斑前線維症

黄斑前線維症は、黄斑部の網膜上に線維膜が発生し、これが網膜を牽引して網膜皺襞が形成される疾患です。網膜の皺のため変視症と視力低下が起こりますが、硝子体手術によってこの線維膜を除去することで視機能が改善します。
2015年の黄斑前線維症の手術件数は、86件でした。

黄斑前線維症の手術成績(2015年)

図3に2015年の術前術後視力(術後視力の調査時点は、術後1年以内)を示します。

図3 黄斑前線維症術前術後視力:2015年
黄斑前線維症術前術後視力:2015年

糖尿病網膜症

糖尿病網膜症は、以前は後天失明原因の第1位でしたが、近年、緑内障に1位の座を譲り2位となりました。しかし、依然として視力障害を来たす主要な疾患であることに変わりありません。糖尿病網膜症は糖尿病の罹病期間が長くなるほど病期が進み、適切な時期に適切な治療を行わないと視力予後が不良となるので、継続的な経過観察が必要です。網膜症が増殖期に進行してゆく場合は網膜レーザー光凝固を行います。増殖期になり硝子体出血が起こったり、牽引性網膜剥離が起こった場合には、いたずらに自然経過にまかせると予後不良となるので適切な時期に硝子体手術を施行することが大切です。また、糖尿病黄斑症による視力低下は薬物療法やレーザー治療では改善しないことも多く、その場合には硝子体手術が有効な場合があり、手術を行っています。
2015年の糖尿病網膜症に対する硝子体手術件数は、53件でした。


糖尿病網膜症に対する硝子体手術の成績(2015年

図4に2015年の術前術後視力(調査時点は、術後1年以内)を示します。
約73.6%の症例で術後視力が0.3以上となり、約54.7%の症例で術後視力が0.5以上となりました。

図4 糖尿病網膜症術前術後視力:2015年
糖尿病網膜症術前術後視力:2015年

緑内障

緑内障は高眼圧によって視神経が障害され、視野が狭窄してゆく疾患と定義されますが、最近では眼圧がいわゆる正常範囲(21mmHg以下)にあるにもかかわらず緑内障的な視神経乳頭の変化と視野狭窄を示す症例が少なくないことが注目され、これを正常眼圧緑内障として緑内障の一種と考えるようになっています。緑内障による視野狭窄は不可逆性なので、通常の緑内障はもとよりこの正常眼圧緑内障に対しても、視野狭窄が進行しない程度にまで眼圧を降下させることを治療の目標とします。
緑内障は隅角の状態によって閉塞隅角緑内障、開放隅角緑内障に分類し、また他疾患に付随して起こってくるものを続発緑内障として区別していますが、これはぞれぞれの病型によって治療法が異なるからです。原発閉塞隅角緑内障は、まず隅角を広げるために虹彩切開術を行うことが一般的でしたが、最近では隅角を広げる目的で白内障手術を行うことも提唱されています。その後、十分な眼圧下降が得られない場合は、眼圧降下剤の点眼やその他の緑内障手術を選択します。原発開放隅角緑内障では、眼圧降下剤の点眼による保存的治療がはじめに選択されるのが通常です。保存的治療で十分な眼圧降下が得られない場合、房水流出路手術(トラベクロトミー、トラベクトーム)や房水濾過手術(トラベクレクトミーなど)を行います。続発緑内障に対しては、原因疾患の治療によって眼圧降下が得られる場合は、眼圧降下剤を使用しつつ原疾患の治療を行います。十分な眼圧降下が得られない場合は、上記術式や毛様体レーザー凝固術などの術式から、病状に最適な術式を選択して行います。
緑内障治療の目的は、視野狭窄を進行させないことですので、そのためには眼圧が適正に維持されているかを経過観察することが大切です。どの程度の眼圧が適切であるかは病状の進行度合いによって異なり、緑内障が進行すればするほど、その視野を維持するためには眼圧を低く保たなければなりません。このような考え方から、視野狭窄を進行させないための眼圧レベルを視野の状況によって設定する「目標眼圧」という概念が提唱されています。しかし、視野狭窄が進行するかしないかはその人ごとに異なりますので、一律に目標眼圧のみを指標とするだけでは不十分で、やはり視野検査を定期的に行うことが不可欠です。当科では緑内障専門外来を設け、緑内障の方の経過観察を行っています。また、病状が安定している場合には、他院へ経過観察を依頼しています。その上で、必要な検査のみを定期的にお受けすることを行っています。
2015年の緑内障手術件数は115件でした。


主な緑内障手術の成績(2015年)

トラベクロトミーは、2015年は57件でした。
図5に2015年のトラベクロトミーの術前術後眼圧(調査時点は、術後1年以内)を示します。
トラベクレクトミーは、2015年は29件でした。
図6に2015年のトラベクレクトミーの術前術後眼圧(調査時点は、術後1年以内)を示します。 表4に、トラベクロトミーとトラベクレクトミーの術前術後眼圧(調査時点は、術後1年以内)の平均を示します。

図5 トラベクロトミー術前術後眼圧:2015年
トラベクロトミー術前術後眼圧:2015年
図6 トラベクレクトミー術前術後眼圧:2015年
トラベクレクトミー術前術後眼圧:2015年
表4:トラベクロトミーとトラベクレクトミーの術前術後眼圧の平均
術式
眼圧
2015年
トラベクロトミー 術前眼圧平均(mmHg)
29.0
術後眼圧平均(mmHg)
17.8
トラベクレクトミー 術前眼圧平均(mmHg)
29.2
術後眼圧平均(mmHg)
15.6

未熟児網膜症

未熟児の入院が増加傾向で、特に超未熟児の割合が増えています。これに伴い、重症の未熟児網膜症も多くなりました。網膜症が進行し、ダイオードレーザーによる網膜光凝固の施行が必要な症例も多く、2015年は10例、19眼にレーザー光凝固を行いました。

角膜移植

国内の提供角膜は依然、慢性的に不足しています。
2015年の角膜移植件数は、0件でした。

その他の疾患

手術以外の目的で入院治療を行っている疾患には、視神経炎、ぶどう膜炎、眼窩蜂窩織炎、重症角膜感染症、眼内炎などがあります。


03その他

施設認定

  • 日本眼科学会専門医制度研修施設
  • 岡山県アイバンク協力医療機関
  • 眼球登録取扱病院

カンファレンスのご案内

倉敷眼科臨床懇話会
開催日:3・6・9・12月の第2木曜日、19:00~21:00、第5会議室
内 容:紹介患者の経過報告と教育講演

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