福岡副院長の部屋 後編

福岡副院長の部屋 後編

倉敷中央病院副院長 福岡 敏雄 先生

日本救急医学会救急科専門医、指導医
日本集中治療医学会専門医
出身地:広島県
好きな食べ物:みかん、干し柿
※みかんを食べすぎて家族から
「みかん怪獣」と呼ばれる
趣味:ウクレレ演奏

地域で協力して乗り切る救命救急


前回に引き続き、
福岡副院長にお話を伺っていきます。
福岡先生は当院の救命救急センター長でも
いらっしゃるんですよね?

福岡副院長:
そう。
僕がここの救命救急の責任者になったのは
2010年3月で、当時は
「救急医療センター」だったね。

さらに高度な救急医療に対応するため、
「救命救急センター」になったのは、
2013年の4月で、ちょうど10年前です。


県内での救急搬送数は
トップですよね?

福岡副院長:
うん。
でも僕、責任者になってからね、
救急車を全部受なきゃいけないって
言ったことないの。
無理なら断っていいって言ってるのよ。

複数の地域から救急車が来て、
三角波みたいになって、
どうしようもないっていうことがある。

そんなとき、安易に受け続けると、
今診ている患者さんにも、現場にも、
大きなリスクを負わせる状況になる。

現場にそんなの要求できないよ。
ここの救命救急センターが
ひどく切迫することを知ってるし、
そのつらさも怖さも分かってるから、
断って良いって言ってきた。

だけどその一方で、
断る正当な理由がなかったら受けてね、
とも言ってるんだけど。


福岡副院長:
僕がこの病院に着任したときは、
水島地区からの救急車が多かった。
だけどいつの間にか
水島のいくつかの病院が、救急車を
かなり受けてくれるようになったよね。


すごく増えてますよね。

福岡副院長:
でしょう。
あと最近は、総社の病院も
よく受けてくれてる。
本当に助かってる。

これが地域医療エコシステムの根幹だと思う。

地域の病院は、
自分たちが診られる患者さんを受け入れて、
より高度な医療・設備が必要になれば
救命救急センターなど、
次の医療機関に引き継いでる。

くらちゅうとしても、
患者さんを診て、病状が落ち着いたら
地域の医療機関へ引き継がせてもらってる。

その関係性がちゃんと機能してるから、
うちの病院、壊れずに済んでる。

仮に、水島地区とか総社市の救急車が
その地域で受けてもらえてなかったら、
ここの救命救急センター、
もっと厳しいよ。


パンク・・・ですね。

福岡副院長:
ものすごく厳しかったと思う。

昔と比べると、
うちの病院に来ている救急患者って、
軽症者が減って、その分
重症患者の比率が高くなってきた。

くらちゅうの役割は
重症患者を受け入れること。
だから、
ICU(集中治療室)を統合したり、
HCU(高度治療室)を設置したり、
患者のフローを見直しながら、
対応できるようにしていってる。

今回コロナでめっちゃ厳しかったじゃない?
うちも結構、断らざるを得なかったけど。

そのときもね、
うちが重症者でいっぱいいっぱいで
最後の1人が受けられなくてお断りした後、
地域の二次救急医療機関*が受けてくれた
っていうケースが、結構発生したのよ。

助かった。
うちじゃなくて、患者さんがね。


福岡副院長:
ところで知ってる?
うちに兵庫県からも来たの。
救急車で。


えっ兵庫から!!
コロナで?

福岡副院長:
40件以上断られて。
兵庫だよ。
大阪にも行かないで京都にも行かないで。
かかりつけでもないのに、
岡山市も越えて。


えーーーっ・・・。

福岡副院長:
それとか、香川県の救急隊が
重症者を運んでくれて、
なんとか命がつながったってこともあるし。
逆に治療後、香川県の病院へ引き継いだり。

そういう仕組みがあるのは恵まれてること。
救急のこの仕組みが、
まさにくらちゅうが目指す
「地域医療エコシステム」の縮図でもあるね。

病院間における、人と人とのつながり


地域の医療機関との協力体制というのは、
どう構築されていくものなのでしょうか?

福岡副院長:
くらちゅうでトレーニングして
救急科専門医の資格を取った若手が、
地域の医療機関で
救急医として勤務したりして、
少しずつ救急を診る医者が増えていってる。

そういった人材がこれから力を付けてきたら
二次救急医療とか特にね、
対応できるケースが増えてくると思うし。

そうなれば、
僕らはやっぱりいろんな意味で助けられるし
逆に地域の病院にも、僕らが
バックに付いていると思っていただけたら
ちょっとチャレンジングな患者も
診てもらえるかもしれない。

で、そのことが結果的に
患者さんにとっても
より近くで早く的確な医療を
受けられることにつながる。


お互いのつながりや信頼関係が大事ですね。

福岡副院長:
そう。
あとは日ごろのコミュニケーション。


そういう人の交流って、
結構、重要ですよね。

福岡副院長:
うん。
うちの医師も、いろんな病院に
研修に行かせていただいているし、
逆に行った先での医療機関も
刺激になっていると思うし。

実際にある病院からは、
「先生の病院から若いのが来てね、
救急についていろいろと提案してもらって。
看護師も喜んでる。」って褒めてもらったよ。

もう嬉しくて仕方ないよね、上司としては。
自分が褒められるより数百倍うれしいよね、
そういうのって。ふふふ。

逆にいくつかの施設からは、
僕たちが専攻医(専門医を目指し学ぶ医師)
を受け入れて、何カ月か現場で
トレーニングしてもらったり。

うちの病院は救急患者さんが多くて、
24時間救急のチームが診てる。
だから、短期間でたくさんのことを
勉強できると思ってもらえるみたいで。

こういった関係性を上手くつくっていけば、
人的な交流はこれからも続くんじゃないかな
と思ってるんだけどね。
結局のところは人のつながりだと思うのね。

自分で頑張るのは限界があるけど、
仕組みをつくるのは無限なので。

たとえば自分自身が今の職を退いても、
その仕組みは今後も動くわけで・・・。


今の課題みたいなのってあるんですかね?

福岡副院長:
いくつか課題はあるのよ。
そのうちの一つはね、
お互いが「わく」じゃなくて「のりしろ」に
なれるチームがあったらいいと思って。

つまり、「わく」と「わく」だと、
隙間できるじゃん。
ストーンって落ちちゃう。
でもお互いに「のりしろ」があったら
落ちない。

そこは、あなたもできるかもしれないけど、
私もやりますよ、みたいな。
お互いが、そんな感じになると
いいかなと思って。

こんな患者はあちらが診るとか、
あんな患者はこちらで診れないとか
そう言い合ってるのはね、
患者さんにとってのリスクを
すごく高めるようなイメージがあって。

お互いを補完できる
「のりしろ」のチームなら、
自分自身の本当の得意分野とか、
強みも分かってくる。
自分の「わく」を決めてしまったら、
そこから出なかったら、
自分の強みが分かんないままじゃん。


そうですね。
今のお話は医療現場だけでなく、
他にも共通して言えることだと思います。


60歳から挑戦する新たな趣味


お忙しくされている先生ですが、
休日はどのように過ごされているんですか?

福岡副院長:
あのね、60歳になる手前から
ウクレレ始めたの。
これね、実はめっちゃ、はまってる。


え!どこか教室へ通われてるんですか?
何曲か弾けたり?

福岡副院長:
いや、もう1回チラッと行ったぐらいで、
あとは独学でやってるんだけど。
何かね、弾くのが楽しくて。
そうだね、いろいろ弾けるよ。

で、これはいける!と思ってね。
・・・ピアノ買ったの。


・・・え?ピアノですか!

福岡副院長:
そしたらさ、ピアノはね、
難しいね・・・。はは(笑)。

一応、今なんとかしようとは思って
いろんな作戦を考えてんだけど、
今ちょっと、バタバタしててできない。
何とか弾けんかな、と思って。ピアノ。


先生、ウクレレでコンサート
やらないんですか(笑)?

福岡副院長:
はははは。
麦わら帽子なんかかぶってね!
短パン履いて。また考えとく。

中学校、高校は寮だったんだけど、
そのときの先輩がギター弾いたりしてて
かっこいいなと思ってたんだけど。

まあ、自分はそんなギターなんてね、
私立の中学校、高校行かせてもらって
経済的に厳しいこと分かってるから、
そんなこと言えないよなと思って。

で、ふと60歳になって、
楽器やってみたら面白いの!
こんなに楽しいんだって思って。

でね、ギターを買ってもらったのよ。
子供たちが誕生日プレゼントに
何か買ってあげるっていうから。


えっ、ギターもやるんですか!

福岡副院長:
そしたらさ、
ウクレレは弦が4本なんだけど、
ギターは6本あるでしょう。

指が足らないのよ(笑)。
ギター、これ難しいと思って。
ウクレレでコード覚えちゃったから、
ギターの押さえるコード、全然違うじゃん。
何でこんなに違うの!?

だけどね、ギターも弾きたい。
もうちょっと落ち着いたら、
ピアノとギターを何とか弾けるように・・・。


弾けたら、かなり格好いいですよね。
ウクレレを始めるきっかけはあったんです?

福岡副院長:
あっ、全然。何もなくて(笑)。
あるときね、たまたま、
本当にたまたま、
Amazonで6,000円とか8,000円で
ウクレレを売ってるのを見つけて。

え!ウクレレってこんな安いの!?って。
そしたら横にいた僕の次女がね、
お父さん買ってみなよ、っていうわけ。
どうしようかな・・・買おうかな・・・
じゃあ、買ってみようか!って。


ポチッた。

福岡副院長:
そう。ポチったの。
6,000円くらいの。

最初は結構難しくて、
どうしようかと思ってたら、
何かちょっとずつ弾けるようになって。

そしたら娘が、
お父さん、もうちょっと良いの
買ってあげるって、2万円弱ぐらいの
ちょっと良いやつを買ってくれたのよ。
音が少し違っててさ、それもまた楽しくて!


へええ!優しいですね!娘さん。

福岡副院長:
お父ちゃん、たきつけて(笑)。

自分の聴きなれた曲とか、弾くと楽しいよ。
井上陽水とかさ。


あ、ウクレレに合いそうですね(笑)

福岡副院長:
合うよ、合うよ、本当に。
楽しいやっぱり。うん。

※「写真はイメージです」だそうです(笑)


福岡副院長、
良いお話をありがとうございました。
最後は面白くていっぱい笑っちゃいました。


皆さん次回をお楽しみに!