倉敷中央病院の弁膜症治療
TAVI(TAVR),MitraClip

倉敷中央病院は、手術適応が難しい重症の患者さんを対象に、胸を大きく切開することなく行える治療を行っています。
経カテーテル大動脈弁留置術(transcatheter aortic valve implantation: TAVI)
経カテーテル大動脈弁置換術( transcatheter aortic valve replacement:TAVR)
MitraClipシステムを用いた経カテーテル僧帽弁クリップ術

重症大動脈弁狭窄症の治療

大動脈弁狭窄症の患者さんは年々増加しています。加齢により動脈硬化が進行すると、弁そのものの変形や石灰化により大動脈弁の狭窄が進行します。そして、労作での息切れ、失神発作、心不全といった症状が出現した時点で手術の適応となります。経カテーテル大動脈弁留置術(transcatheter aortic valve implantation: TAVI)は、そのような重症大動脈弁狭窄症の患者さんに対して、カテーテルを使って心臓に弁を留置する新しい治療法です。

これまで慢性の透析患者さんは適応の対象外でしたが、国内の治験で安全性と有効性が示され、2021年2月1日より指定要件を満たした施設での治療が可能となりました。当院も治療実施施設に認定され、慢性の透析患者さんへのTAVIを行っています。


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    TAVI(TAVR)の治療適応

    外科的人工弁置換術の危険性が高い、もしくは不可能と判断された場合に適応となります。
    具体的には、非常に高齢である、肺や肝臓の病気の合併がある、心臓外科手術を受けたことがある、胸部への放射線治療を受けたことがある、予後が1年以上と考えられる悪性腫瘍の合併がある、脆弱である(寝たきりであるなど、高度に衰弱している場合はTAVIも不適となります)などが挙げられます。 
    近年、デバイスの改良や経験の蓄積などによりTAVIの成績はかなり良好なものとなっています。TAVIの治療成績の改善に伴い、手術の危険性が高いから中間である患者さんにTAVIの適応が拡大されつつあります。 2020年に本邦の弁膜症ガイドラインの改訂が行われ、若年の患者さんにもTAVIの適応が広がりました。このような流れの中で、2021年2月1日より透析患者さんへのTAVIが可能となりました。
    TAVIを行う上で最も重要となるのは、適応を含めた術前評価です。造影CTや心臓超音波検査等で心臓および全身状態の評価を行い、循環器内科医、心臓血管外科医、麻酔科医、画像診断専門医などの多職種からなるハートチームでカンファレンスを行い、TAVIの適応および治療方針を決定します。
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    TAVI(TAVR)の実際

    TAVI(TAVR)では術前評価が極めて重要です。造影CTや心臓超音波検査等で心臓および全身状態の評価を行い、ハートチームカンファレンスでTAVI(TAVR)の適応および治療方針を決定します。 
    治療においては、体への負担を考え足の血管からの治療(大腿動脈アプローチ)を第一選択としますが、足の血管径が細すぎたり、狭窄があったり、蛇行が強い場合などでは胸壁からの治療(心尖部アプローチ)の適応となります。治療は局所麻酔下で行い、最短で術後3日での退院も可能です。
    TAVI(TAVR)に使用する人工弁は、金属の網(ステント)の中に生体弁(動物の組織から作った弁)を縫い付けたものです。現在、足の血管からの治療に使用される人工弁はSAPIEN3(バルーン拡張型)とEvolutR(自己拡張型)の2種類で、いずれの弁も、従来の人工弁(SAPIEN XT/CoreValve)に比べて明らかに性能が向上しています。大動脈弁および大動脈弁輪部の形態や大きさなどからどちらを使用するか決定します。
    経大腿アプローチ
    経心尖部アプローチ

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    TAVI(TAVR)治療実績
    (2020年9月30日現在)

    治療件数
     経大腿アプローチ 451例
     非経大腿アプローチ 81例


    30日以内死亡率
     経大腿アプローチ 0%

僧帽弁閉鎖不全症の治療

MitraClip治療は僧帽弁閉鎖不全症の治療方法として2003年にヨーロッパで始まり、欧米を中心に6万人以上の治療実績があります。日本でも2017年10月に認可がおり、2018年4月から治療開始となりました。日本では12施設で開始となっていますが、当院はその1つとして中国四国地方で唯一のMitraClipの治療施設となっています。外科手術に比べ安全性が高く、手術の危険が高い患者さんでも治療可能です。

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    MitraClip治療の実際

    僧帽弁は心臓の左心室と左心房の間にある弁で、その弁が閉まりきらずに左心房に血液が逆流する病気が僧帽弁閉鎖不全症です。重症の僧帽弁閉鎖不全症は息切れや倦怠感、入院が必要な心不全をきたし、これまで外科的手術(弁置換術・弁形成術)が根本的な治療とされてきました。しかし、心臓の動きが悪かったり、また他の合併症が多いことにより、手術の危険性が高くなり、手術を断念する、もしくは積極的にお勧めできない患者さんが少なくありませんでした。今回、2018年4月から施行可能となったMitraClipシステムを用いた経カテーテル僧帽弁クリップ術は外科手術に比べ安全性が高く、手術の危険が高い患者さんでも治療可能です。
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    MitraClipの適応

    MitraClipは外科的弁置換術・形成術の危険性が高い、もしくは不可能と判断された場合に適応になります。
    具体的には、非常に高齢である、心臓手術の既往がある、心臓の動きが悪い、悪性腫瘍の合併がある、免疫不全の状態である、脆弱である、などが挙げられます。またこれらに加え、前述のようにクリップで僧帽弁を閉じるという性質上、僧帽弁の形態によりMitraClipの治療自体が困難な患者さんもいらっしゃいます。最終的には全身状態の評価とともに、心臓超音波画像等で僧帽弁の評価を行い、循環器内科医、心臓血管外科医、麻酔科医などの多職種からなるハートチームで議論し、MitraClipの適応と治療方針について決定します。
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    MitraClip治療実績
    (2018年4月1日~2020年9月30日)

    治療件数
     146例


    30日以内死亡率
     0.68%

倉敷中央病院 ハートチーム

循環器内科

Department of Cardiology
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心臓血管外科

Department of Cardiovascular Surgery
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