大原美術館レポート

大原美術館訪問 初期臨床研修医が感じたこと

2024年度採用者の気づき・学び

美術館訪問で感じた
社会貢献の思いを医療と重ねる

大原美術館見学を通して、大原孫三郎氏の功績を初めて知ることができました。なかでも最も驚いたのが奨学金制度を22歳のときに始めたことです。偉人たる所以と倉敷市の発展の功績を学ぶことができ、非常に刺激になりました。

また、大原美術館については、事前に学芸員さんのお話を聞くことで美術や造形に対して感じるものが増えたように思えました。当時の美術品に対する考え方や、それを日本に持ち帰る苦労が、実際の美術品を見ることで肌に感じることができました。大原孫三郎氏の思いは、さまざまな形で社会に貢献する、という点で私たち研修医も見習うべき点は多くあり、患者さんを思い患者ファーストの医療を提供し続けられるように研鑽したい。

学芸員の仕事と
美術館の存在意義

今回学芸員という専門職の具体的な絵の解釈の話やその絵の成り立ちについての話を聞き、美術館は美術品を展示するだけでなく保存して研究していくことも大切であると改めて感じました。また、大原美術館には学芸員の方が多くおられ、きちんと保存、管理がされているのだと改めて感じました。

大原美術館の成り立ちについて、大原孫三郎の「社会に貢献していくという志し」のもと西洋美術を日本に広めるためにできたという理念を今回知りました。また、その理念のもとで倉敷中央病院も成り立っており、自分も倉敷中央病院の職員の一員として働いているという自覚を持って日々努力していきたいと考えます。

意図や背景を考えながら
鑑賞することで、
医療現場に必要な発想を得られた

岡山市が地元であるため大原美術館には何度か訪れたことがありましたが、今回は大原美術館へ向かう前に美術館の方に講義をしていただいたことで、大原孫三郎、児島虎次郎が尽力した大原美術館の存在する意義や博物館全体の意義を再確認したうえで鑑賞できました。

上記を踏まえて美術品を鑑賞する上で、自分が初見で気に留めたポイントだけでなく、作者が何を見せたいのか、どのような背景で制作されたのかを考えながら見ることを意識しました。さらに、前回訪れたとき展示の内容や配置なども変更されている点があり、それらに関する美術館の意図を考えながら鑑賞しました。

前述のように鑑賞することで新たな視点が生まれ、自分の中での発想が広がることに繋がり、有意義な時間を過ごすことができました。

医療の現場でも患者さんの意図を汲むことと自分の視点を持つことを両立させる必要がある場面に遭遇することがあると予想されるため、様々な角度から多くの発想を持つことを意識して業務に取り組んでいきたい。

大原美術館が担う社会的意味

大原美術館は倉敷市民にとって馴染み深い施設です。大原孫三郎がそう願ったように倉敷の人々に芸術的教養を与えてきました。これは他ならぬ倉敷市民である自分だからこそ自信をもって断言できることです。

倉敷で生まれ育った私は小学生の時に学校で大原美術館を学び、大原孫三郎と児島虎次郎の存在を知りました。そして美術館に訪れた時の衝撃を忘れられません。圧巻でした。今だから分かりますが大原美術館に展示されている作品は超の付く程の有名作家ばかり。それを幼い頃から享受出来るのは特別なことでした。

それからというもの、西洋美術に興味を持ち世界各国の有名美術館に訪れては長時間の鑑賞を続けました。今までにこの目で見た作品と得た感動は数知れません。そう私を駆り立てた源流となったのは間違いなく大原美術館でしょう。

大原孫三郎は才気のある経営者でありながら社会的奉仕の信念を忘れなかったといいます。大原美術館の開館もその一環です。彼の様々な事業から約100年が経ちますが私のような人間が存在することそれ自体が彼の目論見の成功を物語っています。

大原美術館に込められた
想いに触れて

大原美術館を見学して、大原孫三郎が日本に残したかったものを体験してきました。それは「社会に必要なものを還元する精神」です。

児島虎次郎から芸術の素晴らしさを伝えられた大原孫三郎は、世界中から多くの芸術作品を収集されました。収集された絵は、その国ごとの絵の雰囲気や色彩があり、当時の画家の目に映っていた風景や表現がありました。撮影者によってあまり変化のない写真とは異なり、絵のタッチや用いる色彩などを変化させることで、異なる世界を表現しようとする画家の精神を実感することができました。当時大原美術館に足を運んだ人達は、絵から得た文化的多様性を知ることで、単なる芸術から社会に必要なものにまで昇華され、想いが社会を変化させたのだと感じました。

大原孫三郎と児島虎次郎が日本に良いものを残したいという思いを互いに持ちながら絵画収集し、現在の大原美術館に至ったことは、私も患者さんを大切にするという信念を持って行動することで、いずれ日本に良いものを還元できるのかもしれないという勇気を頂きました。オリエンテーションも始まったばかりですが、引き続き頑張っていきたいと思います。