平成28年7月5日・7日の2日間に分けて、2年目ジュニアレジデントを加えての多職種倫理研修会が開催されました。今回は「化学療法を続けていた手術不能の肺がん患者さんに予後を伝えるにあたり、お見舞いに来られていた娘さんに説明する」という事例が提示されました。突然呼び止められて化学療法の中止や予後説明を切り出された娘さんは混乱し、抗がん剤治療に望みをかけている父親の気持ちを訴えます。医師は家族に伝えることが病院の決まりだから…と繰り返します。この事例提示を受け、6グループに分かれ、患者本人・家族・医療者それぞれの立場で考え、どのような対応が望ましかったか、倫理的に問題があったのはどの部分か、など話し合いました。
全体発表では「重要な話は場を設定して行うべき。立ち話で説明する内容ではない」「(抗がん剤が効かないなど)治療経過についてこれまで伝えられていなかったのではないか」「病院の取り決めなので、と一方的に話し、自分を守る言い方をするのはよくない」という声があがりました。また、あるグループはデモンストレーションで発表を行い、あらためて説明の場を設けた上で、家族の言葉に傾聴・共感しながら病状を伝え、「抗がん剤治療は中止しても、痛みの緩和、呼吸ケアなどは継続します」と丁寧に説明し、今後の方針に同意いただく流れを示しました。
グループ発表をうけて、緩和ケア科医師より「がんの余命告知と倫理の問題」と題してレクチャーが行われ、「悪い知らせを伝えるのは単なる情報提供ではなく、これからのことを話し合う=患者を支援するという気持ちが大事」「余命を尋ねられたときはある程度の目安を示してあげることが大切」と参加者に伝えました。また、「どうして知りたいのですか?」「どうして伝えたくないのですか?」と、相手の想いを汲み取るかかわり方が大事とし、患者・家族に寄り添う気持ちの重要性をあらためて参加者全員で共有しました。