リウマトイド因子陽性の関節痛患者は
関節リウマチといってよいの?

リウマトイド因子陽性の関節痛患者は  関節リウマチといってよいの?
【症例】
50代 女性
半年前から冷えると指が痛むことがあり、最近になり複数の指の痛みを自覚することが増えた。
近医の整形外科で相談したところ、採血でリウマチの検査をしましょうと勧められ結果が陽性だったので、関節リウマチの疑いで当科に紹介となった。
喫煙歴:なし 関節リウマチ、膠原病の家族歴なし
Review of systems:口腔乾燥、皮疹、発熱などは特になし
既往:非結核性抗酸菌症(治療歴なく3年前から画像フォローのみ行われている)
近医での採血検査結果:
リウマトイド因子(RF):68 IU/ml(基準≧15 IU/ml)、抗CCP抗体:0.7 U/ml(基準<4.5 U/ml)、CRP 0.05 mg/dl

 

<担当医のアタマノナカ>
うーん、あんまり触っても腫れている感じもないし、リウマチっぽくはないけど、、、やっぱり抗体検査が陽性だったら、関節リウマチだと考えて精査したほうがよいのかな。。。?

 

<指導医からのコメント>
関節所見を常日頃からとっている先生の所見を信じましょう!あやしいと思ったら関節エコーで確認して自分にフィードバックすればなおさら完璧ですね。
ところで、この方の検査結果ですが、リウマトイド因子が陽性なら本当に関節リウマチらしくなるといっていいんでしょうか?他に気をつけることはないですか?

CQ:リウマトイド因子陽性の関節痛患者は関節リウマチといってよいの?

発症して間もない早期の関節リウマチ(RA)患者では、リウマトイド因子の感度41-66%、特異度87-97%と報告されており(Arthritis Rheum 2009;61:1472-1483)、感度66%、特異度90%とすると、有病率が高く見積もっても1%の疾患なので、検査前オッズ= 1/99 =約0.01となり、RFが陽性の場合の検査後オッズ = 検査前オッズ×感度/(1-特異度) = 0.066、検査後確率 = 0.066/(1+0.066) = 0.062 なので、特に他の情報がない時点でRFが陽性だけだと検査後確率は6.2%ということになります。

また実際に健常者での抗体検査結果をみた本邦のコホート研究によるとRF陽性は6.4%抗CCP抗体は1.7%でしたので、けっこう健常者でもRF陽性の方はいるということになります(Arthritis Care Res 2014;Dec 66(12):1818-27.)。

めくらめっぽう測っても解釈に困るだけということですね!

さらに、特にリウマトイド因子に関しては、様々な病気で偽陽性になることが知られています。特にシェーグレン症候群やクリオグロブリン血管炎、C型肝炎患者では高率にRFが陽性になりますのでご注意ください(やっぱり結核も注意が必要です)(こちらにわかりやすい図表があります:Dis Markers. 2013; 35(6): 727–734)
今回はこれ以上の解説を割愛しますが、↓こちらのブログがとても詳しくまとめてくれているため、興味のある方はぜひご一読ください。(https://tuneyoshida.hatenablog.com/entry/RF

【当科での関節痛患者へのアプローチ@倉中】

アタマの中を図示すると、だいたいこんな感じになるかと思います。
実際には発症早期の場合はなかなか診断が難しいことも多いです。
そんな時には関節エコー検査や抗体検査などはとても有用だと実感します。

【経過】

再度行った触診では、DIP関節に軽度の骨性腫脹を認め、圧痛関節は認めず、腫脹関節はなかった。
リウマトイド因子陽性は既往の抗酸菌感染症による偽陽性の可能性が考えられた。
変形性関節症による関節痛が疑われたためアセトアミノフェン定期内服とNSAIDsの屯用で経過をみたところ、徐々に痛みは和らぎ、鎮痛薬も不要になったため1年後に終診となった。

 

結論
  • 検査をする前にしっかり関節を触って関節に炎症所見(腫脹)があるかを確かめよう!
  • 自身がない時(ある時でも)関節エコーは積極的に活用しよう!
担当:WKK
略語表記
RF: リウマトイド因子
RA: 関節リウマチ
※実際の症例をmodifyした架空症例を題材にしています
※保険適用外の検査や治療に関する記載が一部ある可能性がありますが、これらを推奨するものではありません

 

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