TINU症候群とは?

TINU症候群とは?
【症例】
10代 女性 生来健康
現病歴
入院1か月前からの複数の抗菌薬が効かない発熱、右眼の充血にて当科に紹介受診した。右眼は眼科の診察でぶどう膜炎が疑われ、軽度の血清クレアチニン値の上昇と尿潜血も認めたことから精査目的に入院した。
膠原病の家族歴はなし。
診察時には両眼とも充血していた。口内炎や陰部潰瘍の既往はなし。腰痛はなし。皮膚病変も特になし。
検査データ: CRP 0.64 mg/dl, Cre 0.83mg/dl, 尿蛋白陰性, 尿潜血1+(沈渣1-4/HPF), 蝋様円柱、白血球円柱を少数だが認める, 低補体正常, ANA陰性, 抗SSA抗体陰性, リゾチーム12.3 μg/ml(軽度高値), ACE 6.5 U/l(正常範囲)

 

<担当医のアタマノナカ>
ぶどう膜炎の鑑別っていろいろあるけど、、、あまりピンとくるものはないなぁ。腎機能障害があるけれど、尿蛋白も陰性で潜血のみ。。。ここを起点に精査をしてみよう


日眼会誌 2012;116(4):412-20より

追加検査で、尿中βMG/Cre:1620μg/gCre,尿中NAG/Cre: 8.3IU/gCreより尿細管障害が疑われ、腎生検を施行した結果は尿細管間質性腎炎であった。

 

<指導医からのコメント>
サルコイドーシスでもなさそうだし、他の鑑別も間質性腎炎とはあまり結びつきません。TINU症候群ですね。

【入院後経過】

血清クレアチニンは自然に改善し尿潜血も陰性から弱陽性が続き、発熱や視力障害も続くため中等量のステロイド内服にて治療を開始したところすみやかに解熱しCRPも陰性化した。尿所見上も改善をみとめた。

CQ:TINU症候群とは?

TINU症候群(Tubulointerstitial nephritis and uveitis syndrome)とは、原因不明の尿細管間質性腎炎にぶどう膜炎を伴う症候群で、サルコイドーシスとの鑑別でしばしば問題となる

思春期女性に後発し、ぶどう膜と尿細管間質に存在する共通抗原(修飾CRP)に対し細胞性免疫を中心とした免疫応答が生じたものと言われており、修飾CRPに対する自己抗体の存在も確認されている(Ocul Immunol Inflamm 2008;16(1):51-3, Clin J Am Soc Nephrol 2011;6:93-100)。

特定のHLAがリスクになるという報告もあるが詳細はわかっていない。小児のぶどう膜炎の原因疾患としては割と有名。

65%の症例が間質性腎炎の先行で発症しており、平均3ヶ月遅れてぶどう膜炎が発症していたという報告がある(Surv Ophthalmol. 2001 Nov-Dec;46(3):195-208)。

ぶどう膜炎は通常治療適応となり、ステロイド(点眼~内服)、シクロスポリン、MTX、MMF、TNFα阻害薬などの有効例の報告がある。

腎障害は軽微なものは自然軽快することもあるが、腎不全に至るケースも散見されるため一概に経過観察でよいとはならない。ステロイドを使用する場合は通常1~1.5mg/kgで治療される。
尿中β2MGが病勢判定に重要だとされている(小児科 2020;61(6):p843-53)

 

結論
  • 若い女性のぶどう膜炎+尿潜血or腎機能低下をみたらTINU症候群を鑑別に入れる
  • サルコイドーシスとTINUの鑑別は重要
  • TINUの腎障害は様子を見れることもあるし、治療したほうが良い場合もある
担当:WKK
略語表記
β2MG: β2ミクログロブリン
MTX: メトトレキサート
MMF: メコフェノール酸モフェチル
※実際の症例をmodifyした架空症例を題材にしています
※保険適用外の検査や治療に関する記載が一部ある可能性がありますが、これらを推奨するものではありません

 

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