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心臓病センター[get_image]
心臓血管外科のご案内

心臓血管外科主任部長ご挨拶

小宮達彦[get_image]

 私は1985年に当院心臓血管外科に赴任して参りました。1990年から2年間フランスに留学した後、倉敷に再び帰ってまいりました。1996年に心臓血管外科部長を拝命し、今日に至っております。私の一貫した思いは、いかに良い治療を行って、患者さんに喜んでいただけるかです。そのために夜を徹して治療を行うことも、厭いませんでした。また最新の治療を行うための知識、技能の吸収には人一倍努力して参りました。中には最善の治療を行ったつもりでも残念な結果に終わることもありました。しかし、あのときこうしておけばよかった、あの判断は甘かったのではないかという思いが、次の患者さんの命を救うことにつながります。この思いは若いときから、今に至るまで常に心の真ん中にあり続けています。
 30年以上の長い期間にわたり倉敷の地にとどまって心臓外科の治療に携わることができたことにより、若い医師や看護師の総力を発揮できる環境、教育システムをじっくり作り上げることができました。まさに『継続は力なり』という言葉に表されると思います。医療安全ということも、単なる掛け声に終わらず、実質的効果がある体制を確立できたのではないかと考えています。

副院長(兼)心臓血管外科主任部長 小宮 達彦


心臓血管外科概要

 当心臓血管外科は1980年に開設されました。当初より新生児から高齢者までの心臓、大血管手術に積極的に取り組んでおり、岡山県西部を中心として、山陰地方から四国に至るまで、広範囲の患者さんを対象としてきました。緊急手術は24時間完全体制で臨んでおり、近年では重症患者も続々救命できるようになりました。循環器内科との緊密な連携により、虚血性心疾患や弁膜症の治療においては、中国地方のトップレベルと自負しています。また治療レベル向上のため、積極的に海外留学を行い最先端の治療を施せるように努めています。年々手術件数も増加しており、スタッフは現在後期研修医も含めて12名です。2019年の年間手術件数は、736例で、そのうち心臓大血管手術は439例でした。

心臓病センター

 2005年7月に、心臓病センターが開設されました。外来、検査、血管造影、CCU(内科16床、外科8床)、手術室(専用3床+ハイブリッド手術室)、病棟、救急が心臓病の診断、治療を目的として一つの建物内に有機的につながりました。救急、血管造影室、CCU、手術室が移動のロスがなく迅速に治療を開始することができます。

新しい治療への積極的取り組み

 近年、心臓外科では技術革新が著しく、新しい治療を積極的に取り入れてきました。狭心症や心筋梗塞の患者さんへのオフポンプ冠動脈バイパス術は1999年より積極的に開始しました。僧帽弁閉鎖不全症に対する弁形成術にも早くから積極的に取り組んでおり、2000年以降に1058例の僧帽弁形成術を行っています。また大動脈弁閉鎖不全症に対しては、2001年の2尖弁に対する弁形成を成功させて以来、通算273例の大動脈弁形成術を行ってまいりました。
2010年に当院を含めた日本の3施設で経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI) の治験を開始されました。90歳以上の高齢の患者さんに対しても、短期間の入院で回復する画期的な治療であり、現在までの410例の手術を循環器内科と共同で行ってまいりました。僧房弁に対しても、2018年から循環器内科でMitraClipによる治療が開始されました。患者さんにとって体に負担の少ない治療、低侵襲治療の重要性は高まっています。6~7㎝の小さな傷から弁膜症の手術を行うMICSに近年積極的に取り組んでおり、3D内視鏡を用いた僧帽弁形成術、スーチャーレス人工弁を利用した右小開胸大動脈弁置換術を基本術式にしています。
胸部大動脈瘤、腹部大動脈瘤に対しても、通常の手術が必要な患者さんは少なくありませんが、高齢の患者さんでは、低侵襲治療としてステントグラフト治療を用いた治療を行っています。現在までに875例に行ないました。

緊急受け入れ体制

 当院には心臓外科医、麻酔科医、循環器内科医が24時間常駐しており、手術センター、集中治療センターも常時受け入れ体制ができています。何かありましたら何時でもお電話頂ければ、すぐに対処致します。当院のドクターカーの出動により、広く中四国よりの搬送が可能です。 

真のチーム医療

 心臓外科の治療は心臓外科医のみで担うのではなく、循環器内科医が診断および術前治療を行い、麻酔科医、人工心肺技士、手術看護師とのチームで手術を乗りきり、術後は集中治療看護師、リハビリ技士、臨床工学技師、栄養士とのチーム医療で多数の人間がかかわります。病棟でも多くの医療スタッフがかかわることにより、安全で効率よく、なおかつ心のこもった医療が提供できると信じています。また心臓外科医師も主治医制からチーム制へと体制を整えました。手術はもちろんのこと日々の治療方針の決定もチームで行いますので、すべての患者さんにハイレベルの治療を提供できる体制だと考えています。


診療内容

1:虚血性心疾患の治療

 最近6年間の待機的単独冠動脈バイパス術数は396例で、体外循環を使用しない心拍動下多枝冠動脈バイパス術(オフポンプ冠動脈バイパス術)を全体の90%、開存率の高い左右内胸動脈を用いたバイパスを55%の患者に行っています。従来手術合併症頻度の高かった、高齢者や腎不全患者、脳血管病変を有する患者に対しても、安全に手術が行われる様になりました。緊急冠動脈バイパス術は、過去6年間の単独冠動脈バイパス術は59例で、安全優先のため60%を体外循環使用下で行っています。
(詳しくは、虚血性心疾患のページをご覧下さい。)

2:大動脈疾患

 胸部大動脈瘤は最近5年間で待機的手術が、387例でした。胸部下行大動脈瘤や胸腹部大動脈瘤に対してはステントグラフトを積極的に使用しており、5年間で135例に施行しています。急性大動脈解離は生命の危険が非常に高い病気ですが、過去5年間で190例の緊急手術を施行しており、95%で救命できています。
腹部大動脈瘤では最近5年間で待機的手術が456例でした。ステントグラフトは、高高齢者や開腹手術の既往がある場合などに行なっており、最近5年間では211例に行っています。
(詳しくは、大動脈疾患のページをご覧下さい。)

3:弁膜症

 大動脈弁狭窄症、僧帽弁閉鎖不全症が増加しており、2019年の弁膜症手術数は276例でした。可能な限り自己弁を温存した術式を選択する様にしています。僧帽弁形成術はこの5年間に217例施行しました。また大動脈弁形成術を行う病院は日本ではまだ少ないですが、当院では積極的に取り組んでいます。2000年以降に539例の大動脈弁閉鎖不全症に対する手術中、265例(49%)の症例で自己弁温存術式を行ないました。大動脈基部病変に対しては、バルサルバ洞形態を維持したグラフト(Valsalva graft)を用いてreimplantation法を137例に行なっています。特に若い患者さんでは可能な限り、自己弁を温存する術式を第一選択と考えています。
弁膜症手術の手術成績は良好で、早期に手術を行えば心機能の悪化を防ぎ、通常人と変わらない寿命が期待できます。65歳以上の高齢者の弁置換術では原則としてワーファリンが不要となる生体弁を使用しています。また80歳以上の高齢の大動脈弁狭窄症に対しては経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI)を勧めています。
(詳しくは、心臓弁膜症のページをご覧下さい。)

4:高齢者手術

近年80歳代の患者さんの手術は年を追って増加傾向にあります。2019年は81例の予定心臓大血管手術が行われました。大動脈瘤の手術が多いです。次に多いのは弁膜症ですが、大動脈弁狭窄症はTAVI治療が考慮されるため、開胸手術が必要な患者さんは限られます。高齢者といえども患者さんの活動能力、全身状態を考慮して手術適応を考えています

5:末梢血管

 心臓の小切開手術は、低侵襲心臓外科手術(Minimally Invasive Cardiac Surgery: MICS)ともよばれています。通常の心臓手術は前胸部の真ん中を20cm程度切開します。真ん中下の小さな切開(10cm)で手術を行なう方法も有用ですが、最近は右胸部の小さな切開(6-7㎝)で行っています。2017年秋より3D内視鏡を導入しており、完全内視鏡下僧帽弁形成術を現在までに36例に行っています。また大動脈弁置換術もスーチャーレス人工弁の導入により、右肋間からの手術を標準化しています。
(詳しくは、小切開手術:低侵襲心臓外科手術(MICS)のページをご覧下さい。)

重要なお知らせ

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主任部長から患者のみなさまへ

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循環器内科ウェブサイト