心臓血管外科シニアレジデント 境 次郎
2010年11月13日~17日にアメリカ、シカゴで開催されたAHA scientific session 2010に参加し、当科で行った冠動脈バイパス手術におけるグラフト血管の長期開存率などの成績をまとめた研究発表を、学会最終日の11月17日にoral presentationにて行いました。
今回発表した臨床研究はretrospective studyで、冠動脈バイパス術における、グラフト選択(右内胸動脈グラフトおよび橈骨動脈グラフト)およびグラフト中枢吻合部位の選択(ACバイパスおよび左内胸動脈をinflowにするY composite grafting)がグラフト長期開存率に与える影響を検討したものです (Impact of Proximal Anastomotic Site on the Patency of Free Internal Thoracic and Radial Artery in Coronary Artery Bypass Grafting Y Composite Grafting v.s Aorto-Coronary Bypass, Circulation. 122(21_MeetingAbstracts) (Supplement 1), November 23, 2010.)。
これまで何人もの先輩が忙しい臨床業務の合間を縫って臨床研究をまとめ、国内学会にとどまらず、海外学会にも挑戦してきた姿を間近に見てきました。普段から、シニアレジデントの我々でも、運がよければ(?)海外学会で発表できるチャンスがあるのだと感じられ、そのことがハードな研修においても私自身のモチベーションを維持できた理由の1つになっていたと思います。また、今回発表した研究テーマは、私がシニアレジデント1年目から取り組んできたものであり、ある意味で、このAHAでの発表がシニアレジデントの3年間の研修の集大成ともいえるものでした。
学会には指導医の島本医師とともに参加し、厳しくもありましたが熱心な指導や援助のおかげで、何とかoral presentationを終えることができました。やはりoral presentationはハードルが高かったのですが、やり終えてみて何物にも変え難い充実感を得ることができましたし、同時に多くの課題も見つかりました。今回私が経験したことや感じたことをこの場ですべて表現することはできませんが、ただ一つ、すばらしい経験ができたと自信を持って言えます。
当院での3年間のシニアレジデント研修を通して、小宮主任部長をはじめ、何人もの指導医から熱心な指導を受け、先輩や同期のレジデントからさまざまなことを学んだことで、私自身ようやく外科医としてのスタートラインにつくことができましたと感じています。倉敷中央病院のシニアレジデント制度においては、自分が学ぶだけでなく、後輩も指導する屋根瓦方式がとられています。今回の私の海外学会への挑戦が、心臓血管外科の後輩レジデントへの刺激となり、彼らが自分自身の研修を充実させていくきっかけの1つになれば、レジデント制度への私のささやかな恩返しとなるのではないかと思います。
最後に、今回海外発表の機会を与えてくださった倉敷中央病院医師教育研修部および心臓血管外科、研究や発表の指導を懇切丁寧に行ってくださった小宮主任部長や島本先生をはじめ指導医の先生方にお礼申し上げます。また、3年間自分をいつも支えて続けてくれた妻と息子に感謝しています。