当院では2010年5月19日より、ハイブリッド型手術室:ハイブリッドオペレーションシステムの稼動を開始しました。
ハイブリッド型手術室とは、手術室に懸垂型の血管造影装置(3D−CT撮影も可能)を統合させたもので、高画質な透視・3D撮影を行うことができるオペ室(手術室)のことをいいます。基本は手術室ですので、感染防止のための配慮、無影灯をはじめとする手術に必要な照明機器にも配備しています。カテーテルを使う内科的治療と外科手術による治療法とを一つの部屋で行うことができます。
これによって、手術のみでは到達困難な部位に対しても治療が可能となったり、カテーテルのみでは治療できない病変に対しても手術を同時に行うことで治療できます。また小さな創や小さな侵襲で治療が可能となります。
現在同じ病気に対する治療でも多数の治療法があり、当院ではこのハイブリッド手術室を用いたハイブリッド手術を行うことで、患者さんにより低侵襲かつ効果的な治療の提供を目指しております。
ハイブリッド型手術室の導入は、中・四国では倉敷中央病院が初となります。
現在国内でハイブリッド型手術室が稼動している主な施設は、大阪大学、慈恵医大、埼玉医科大学、仙台厚生病院、三井記念病院(平成22年12月22日現在)で、当院を含め6施設のみとなります。
現在行っている具体的な治療としては胸部大動脈瘤や腹部大動脈瘤に対するステントグラフト治療やステントグラフト治療を組み合わせたハイブリッド手術。閉塞性動脈硬化症に対するバイパスとバルーン拡張の同時施行などがありますが、当院に特徴的な治療として、大動脈弁狭窄症の患者さんに、経カテーテル生体弁による大動脈弁置換手術の治験を行うことです。この新しい手術は、小さな切開創からカテーテルを用いて、透視や血管撮影を行いながら、カテーテル内に挿入された人工弁を植え込むため、侵襲の少ない、画期的な手術方法です。大動脈弁狭窄症の多くは加齢によるもので、患者さんの多くが高齢です。通常の開胸による大動脈弁置換術を行うにはリスクの高い患者さん(高齢者、腎障害、呼吸障害など)に対して非常にメリットの大きな治療方法になることが期待されています。この治療によって今まで手術治療が必要でも体力的に不可能であった患者さんにも治療が可能となる可能性があります。ヨーロッパではすでに2003年から治験が開始となり、その成績が良好なことから2007年にCEマーク(商品がすべてのEU加盟国の基準を満たすものに付けられるマーク)承認され、すでに販売が開始されています。アメリカでも大々的に治験が行われており、FDA(アメリカ食品医薬品局)の認可が近々行われる見通しです。
先述の新しい手術を行うためにはハイブリッド型手術室があることが条件であり、日本における治験は、当院と大阪大学、榊原記念病院(東京都)の3施設が実施施設に選ばれ、本年4月から開始となりました。心臓血管外科と循環器内科が合同でこの治療を行っており、欧米の施設においては、すでにステントグラフトの市場の拡大、および経カテーテル生体弁による大動脈弁置換手術の有望性から、固定型の血管撮影装置を備えたいわゆるハイブリッド型手術室を備えるところが増えています。
通算:心臓外科291例、脳外科31例、循環器内科12例、整形外科6例、外科4例【合計:344例 】