田村 暢一朗

VOICE

倉敷中央病院 救急科

田村 暢一朗

海外での学びへ扉を開き
若手の挑戦を支援

インドネシアからの招待

2016年に、当時岡山大学 救急医学教授であった氏家良人先生からの紹介で、インドネシアの麻酔科医師が当院救急科で1-2か月間の研修を行いました。その縁で、彼らが幹事を務めるインドネシア小児麻酔学会/救急医学会(ISPACC–ISAMED 2026、会期 : 2026年6月19-20日)で講演しました。
また、Dr. Soetomo Regional General Hospital(インドネシア・東ジャワ州スラバヤにある1,183床の大学病院)でも医師、看護師などを対象にレクチャーの機会を得ました。

インドネシアの医療事情、インドネシアの医師キャリアパス、インドネシアで外傷外科研修をお考えの方へのおすすめポイントなどをご紹介します。

ISPACC–ISAMED 2026での講演

ISPACC–ISAMED 2026では、Trauma updateというセッションで講演を行いました。バイタル不安定であれば、CTなどの画像検索を行う前に外科的止血を行う体制で外傷診療を行っており、テクノロジー自体よりも、即座の止血とそれを可能にするチームビルディングが重要であるとお話しさせていただきました。

また、別のセッションでは、インドネシアの島では医療リソースが少ないため、医療の質の担保をどう確保するかについてディスカッションが行われていました。インドネシアは大小17,000以上の島々からなる世界最大の島国で、島々で奮闘する医師は厳しい医療体制で奮闘しています(医師が誰も来たがらない、ヘリは利用できない、呼び出しが多く休みがとれない、など)。日本でも過疎地域では似たような状況が生じており、都市部とネットワークで繋ぐ、tele-ICUなどの技術を深めていく世界的な必要性を感じました。

Dr. Soetomo Regional General Hospital
インバウンドレクチャー

インドネシアの医療水準は都市と地方で大きな格差がありますが、ジャカルタ、スラバヤ、バリ島などの主要都市にある外国人向けの私立病院は設備が近代化されており、高い水準の医療が行われています。

学会前日の618日には、スラバヤ州の都市部にあるDR. SOETOMO General Hospitalの見学と、院内講演も行いました。麻酔科医、外科医、脳外科医、整形外科医、医学生、看護師など約30名に参加いただきました。

こちらでは、脚立から転落し、手にしていた剪定はさみが背部に刺さり、腰動脈、下行結腸損傷を負ったケースの止血プロセスに関するディスカッションを行いました。ディスカッションでは「外傷では早期の止血が最も重要である」「腹膜刺激兆候があればCT画像がどうであれ開腹術の適応がある」などの意見が聞かれ、インドネシアでは世界標準の外傷診療教育が行われていることを感じました。

患者を総合的に診る力を早い段階から養成
-General Physicianの育成-

インドネシアでは、6年間の医学部教育を修了した後、2年間の卒後臨床研修を受けます。日本の初期臨床研修と似ていますが、大きな特徴は、この2年間の研修修了時にGeneral Physician(総合診療医:GP)の資格が取得できることです。つまり、卒後研修の目的そのものが「GPの育成」に置かれている点にあります。

研修では複数の診療科をローテーションしますが、教育プログラム全体はGPを中心に設計されています。そのため、各診療科では専門医養成を目的とするのではなく、GPとして必要な知識や技術を身につけるための教育が行われています。研修修了後は、約70%の医師がそのままGPとして地域医療の現場で働くと聞きました。

日本でも、高齢化の進行や複数の疾患を抱える患者の増加により、幅広い視点で患者を診療できる総合診療医の重要性が高まっています。また、医学生や若手医師の間でも、総合診療への関心は年々高くなっています。

今回、インドネシアの医師教育システムに触れ、総合診療医の育成を卒後教育の中心に据えている点は非常に印象的でした。当院でも初期臨床研修を行っていますが、これからの時代に求められる医師を育成するためには、インドネシアのGP育成システムや教育ノウハウから学ぶべき点が多いと感じました。特に、患者を総合的に診る力を早い段階から養成する教育は、日本の医師養成においても参考になる取り組みだと思います。

Dr. Soetomo Regional General Hospital
見学・研修おすすめポイント

幅広い病態に対応する集中治療や救急医療を学べる

私が訪問したDR. SOETOMO General Hospitalでは、麻酔科医が非常に幅広い診療領域を担当していました。救急外来(ER)での内因性疾患や外傷患者の初期診療に加え、新生児から成人までを対象とした集中治療、緊急手術の麻酔管理、さらにはペインクリニックまでカバーしています。

また、インドネシアならではの特徴として、熱帯地域特有の感染症や、ファロー四徴症をはじめとする先天性心疾患の患者を多く経験できる環境がありました。そのため、幅広い病態に対応する集中治療や救急医療を学ぶには非常に恵まれた研修施設であると感じました。
担当する診療範囲が広いこともあり、麻酔科レジデントの数は非常に多く、1学年あたり約100名が在籍しているとのことでした。この規模の大きさからも、同院がインドネシアの医師教育において重要な役割を担っていることがうかがえます。

日本に好意的なインドネシアの生活・文化

インドネシアでの滞在を通じて感じたのは、日本文化への親しみの強さです。特に日本のアニメや漫画は広く浸透しており、多くの人が日本に好意的な印象を持っていました。そのため、日本からの研修生も温かく迎えられる雰囲気があります。

また、インドネシアは世界最大のイスラム教徒人口を有する国であり、宗教的な背景から飲酒をしない人も多くいます。私自身は滞在中に大きな治安上の不安を感じることはなく、安心して生活することができました。病院スタッフとのコミュニケーションについても、多くの医師や医学生が英語を話すことができるため、日常業務やカンファレンスへの参加に大きな支障はありませんでした。こうした点からも、海外での臨床研修先として十分魅力的な環境だと思います。

もしインドネシアでの研修や医療に興味がありましたら、現地の医師との交流や情報提供のお手伝いができますので、ぜひ気軽にご連絡ください。

他の先輩の声はこちら

2022年度採用

初期研修医

2022年度採用

初期研修医

2021年度採用

初期研修医

2022年度

ベストレジデント

2022年度

ベストレジデント

専攻医

2024年修了
(循環器内科)

専攻医

2024年修了
(脳神経外科)

院外から見た研修

松七五三 晋