2022年度ベストレジデント
日本では感じることのない刺激を得た
海外学会での経験
-2022年度ベストレジデント海外学術出張-
当院では、1年目の初期研修医から優秀者2名をベストレジデントとして選出し、
その特典として、病院の支援の下、海外学術出張の機会を与えています。
2022年度のベストレジデントに選出された入職2年目の初期研修医が、2023年9月上旬、
イタリアで開催された海外学会「European Respiratory Society International Congress 2023」に参加しました。
初めての海外学会へ
この度、2022年度ベストレジデントに選出いただき、海外学術出張の機会をいただきました。私は呼吸器内科志望であり、イタリアのミラノで9月9日~13日に開催されたEuropean Respiratory Society International Congress 2023(以下ERS)に参加させていただきました。
今回ERS参加にあたって、当院呼吸器内科の伊藤明広先生、山野隆史先生に同行させていただきました。日本の学会には何度か参加し、発表も一度経験しておりますが、海外学会の雰囲気は日本のそれとはまったく異なるものでした。
世界最高峰の学会で英語の洗礼を浴びる
まずは、当たり前ですが、すべてが英語であることです。ERSは英語がネイティブでない参加者が多いのですが、それでも講演では活発な議論が繰り広げられていました。英語を聞き慣れていない上に、呼吸器分野の専門用語を熟知していない私には聞き取れないことの方が多く、非常に悔しい思いをしました。
今回私は発表はありませんでしたが、同行の山野先生のポスター発表があり、近くで聴かせていただきました。流暢な英語で発表と質疑応答をこなされている姿を見て、今の自分には到底できないと痛感するとともに、いつか自分も英語で発表できるようになりたいと強く思いました。日々の臨床知識の蓄積だけでなく、英語のリスニング・スピーキング力の向上のために努力しようと感じました。
次に、学会の規模が非常に大きいことに驚愕しました。ERSは呼吸器分野では米国のAmerican Thoratic Society(ATS)と並んで世界最高峰の学会の一つとして知られています。ガイドラインの最新のアップデートや気管支鏡などのデバイス治療の最先端の紹介など、さまざまな講演や発表がありました。日本ではまだ取り入れられていない治療に関しては、目から鱗の情報ばかりで大変刺激的でした。
「言語の壁を乗り越える」思いを強くしたミラノ
学会終了後はミラノの街を散策することができました。ミラノはイタリア第2の都市で、ファッションの街として有名です。街のシンボルであるドゥオーモやその周囲の高級ブティック街は華やかで、観光客で大変賑わっていました。夕食では美味しいイタリア料理を堪能することができました。しかし学会の外に出てもショップやホテル、空港などでの日常会話の英語に苦心する場面があり、言語の壁を乗り越える必要性を強く実感しました。
刺激に満ちた出張機会を得られたことに感謝
このたび海外学会に参加するという貴重な機会をいただき、日本にいるだけでは感じることない刺激を味わうことができました。海外学会の雰囲気を初期研修医のうちから体験できたことは、今後の学会発表の参考になりましたし、何よりも語学学習への意欲を上げることに繋がりました。私の海外学術出張に際してご協力くださった福岡敏雄副院長、石田直副院長、同行いただいた伊藤先生、山野先生にこの場をお借りしてあらためて感謝を申し上げます。
「障子を開けてみよ 外は広いぞ」豊田佐吉*
情報交換技術・翻訳サービスが発達した今日でも、学会などで実際に会って話し合う価値は失われていません。研究結果などの医療情報に加えて、その背後にある様々な苦労や事情、さらにプロフェッショナルとしての思いや価値基準などを共有することの重要性は、むしろ高まっています。国際学会の参加は広く多様な「外」を感じる機会となったようです。率直で前向きな感想に楽しい気持ちになりました。ここを足場にさらなる成長を期待します。 (医師教育研修部長 福岡 敏雄)
*豊田佐吉:大原孫三郎と同時代を生きた発明家・実業家。トヨタグループの前身を作った。
医師人生のターニングポイント
この度寺元先生と一緒にERSに参加させていただき、自分が初めて海外学会に参加した日のことを思い出していました。2011年9月、医師8年目で今回と同じくERSで発表する機会があったのですが、私も自分の英語力のなさを痛感したのを今でも覚えています。私はERS参加を機にその後の医師人生にかなりの影響を受けており、今回寺元先生が初期研修医として海外学会に行かれ、うらやましさとともに意識の高さに感心しています。今後、日本だけでなく世界で通用する呼吸器内科医になってくれることを期待しています。 (呼吸器内科 部長 伊藤 明広)