2022年度ベストレジデント

子どもたちを笑顔にできる医師を目指して
カンボジアでの医療活動

-2022年度ベストレジデント海外学術出張-

当院では、1年目の初期研修医から優秀者2名をベストレジデントとして選出し、
その特典として、病院の支援の下、海外学術出張の機会を与えています。

2022年度のベストレジデントに選出された入職2年目の初期研修医が、
2023年5月下旬、国際医療NGOジャパンハートがカンボジアで行う医療活動に参加しました。

カンボジアでの医療活動に参加したきっかけは?

小児病棟に入院中の子どもたち、日本人ボランティア(右)と。

私が医師を志したきっかけがジャパンハートです。高校生の時に、ジャパンハートのミャンマーでの活動に参加し、医師は病気を治療するだけでなく、患者さんやご家族の人生を明るくもできるのだと感銘を受ける出来事がありました。私もそんな仕事がしたいと思い、一念発起して医学部を受験。医学生の時にも何度かジャパンハートの海外での活動に参加しました。

入職してすぐに、院内報を読んで小児外科の花木祥二朗先生がジャパンハートで活動されていることを知り、いつかご一緒できたらと思っていました。恐縮ながら、2022年度のベストレジデントに選出いただき、特典の海外学術出張として5月20日~28日、花木先生と一緒にカンボジアでの活動に参加させていただきました。

活動内容は?

カンボジアの首都プノンペンから車で約1時間、のどかな田舎町にある「ジャパンハートこども医療センター」で活動を行いました。カンボジアは1970年代後半のポルポト政権時に知識層の大量虐殺が行われ、生存した医師は50人に満たないとされています。医療の水準はどうしても遅れてしまい、日本のような公的医療保険はなく、治療費を払えずに病院に行けない人も多くいます。ジャパンハートの病院の運営費は日本からの寄付で賄っており、無料で治療を受けることができます。

私は小児科志望なので、主に小児病棟と外来を担当しました。

小児病棟では主に固形腫瘍を診ていて、肝芽腫・腎芽腫・神経芽腫・胚細胞腫瘍などの子が合計30-40人ほど入院しています。一人の小児がん患者の治療費約80-100万円に対し、カンボジアの平均年収は約22万円。一般家庭では支払うことができないのは明白です。実際に「ジャパンハートが無かったら諦めていた」と話す患者さんもいました。

小児外来は、日本との違いに驚きの連続でした。外来は文字通り建物の「外」に簡易的な屋根があるだけで、地面も未整備。スコールで水没してしまうこともありました。主訴は典型的な発熱や腹痛から、野生の牛と衝突して肩が痛い、という日本ではありえない外傷も。想定外の訴えに聞き取りにも苦労しました。

設備や医療費の考え方も日本とは全く違いました。血液検査は非常に高額で、スクリーニング目的の検査はできず、項目を絞る必要があります。病院で行える画像検査はレントゲンとエコーだけ。レントゲンも自分で準備をして撮影をします。首都の病院にはCTなどもありますが、CTは1回1万円。平均月収の約半額と交通費をかけて検査を受けてきて、とは簡単には言えません。慣れないエコーに苦戦し、1年目の研修でもっとしっかりやっておけばと後悔しました。

外来にて。通訳を通して問診を行う。

活動を通じて

当院の恵まれた環境での研修生活を大変有り難く思っています。カンボジアでは、力不足も感じましたが、子どもたちを笑顔にできる小児科医を目指して、2年目も当院で多くを学び、できることを増やしていきたいと思っています。

最後になりましたが、海外学術出張としては異例なボランティア活動を認めてくださった福岡敏雄副院長、小児科ローテ―ト中にも関わらず出張を許可してくださった脇研自主任部長、同行させてくださった花木先生に改めて感謝申し上げます。

患者・住民・地域の価値観や
システムに共感し活用する

J1のベストレジデントに海外学術出張の機会提供を始めたのは2020年度でした。ところが新型コロナのため海外出張が不可能になりました。今年、再開第1号として向かった先はカンボジア、海外ボランティア活動でした。幅広い視野に基づいて患者・住民・地域の価値観やシステムに共感し活用する、というのは公共サービスを提供するプロフェッショナルの基本技量/コンピテンスです。それを感じ受け止め内面化する力を感じるレポートです。ここからさらに成長されることを期待したいと思います。 (医師教育研修部長 福岡 敏雄)

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「困っている人の助けになりたい」
医の原点がそこにある

私自身も初期研修医2年目に活動に参加したことが人生の転機となり、小児外科医を志し今に至ります。「ぜひ同行したい」。昨年から何度もご連絡をいただき、その熱意に打たれ今年は一緒に参加しました。活動中の彼女のとても熱心に、そしてキラキラと楽しそうに診療している姿は、微笑ましいとともに当時の自身を重ねました。国際医療協力はGiveではありません。私自身いつも多くの成長の機会をいただき、医療者の仕事の喜びと楽しさを再認識しています。「困っている人の助けになりたい」。医の原点がそこにあります。 (外科 副医長 花木 祥二朗)

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