寸評

第15回倉敷ゆかりの循環器研究会

当日10月18日は、光藤和明先生のご逝去10年にあたる日でもありました。「ゆかりの会」と光藤先生へのオマージュとして、特別ムービーが上映され、非常に感動的な時間となりました。制作にご尽力いただいた金池牧子氏に深く感謝申し上げます。

会は、倉敷中央病院循環器内科主任部長に就任された阿部充先生のご挨拶に始まり、光藤先生のご冥福をお祈りして黙祷を捧げた後、開会いたしました。今年の一般演題はいずれも素晴らしく、発表者の皆様の1年間の努力と情熱が伝わってまいりました。私自身も大いに刺激を受けました。

特別講演では、清岡崇彦先生、阿部弘太郎先生より貴重なご講演を賜りました。
清岡先生はこのたび国際医療福祉大学熱海病院循環器内科教授にご就任され、学位研究である冠微小循環についてご講演くださいました。倉敷中央病院で光藤先生、土井先生のもとで厳しくご指導を受けたご経験や、ニューオリンズ留学中にハリケーン被害を乗り越えたお話も印象的でした。現在注目されているINOCAのお話は、「時代が清岡先生に追いついた」と感じさせられる内容でした。

阿部弘太郎先生は、今年九州大学循環器内科教授にご就任されました。CTEPHに対するBPA治療の第一人者としての最新の知見と、九州大学で進められている多彩な研究についてご紹介くださいました。阿部先生の圧倒的なバイタリティーとリーダーシップに、日本の循環器医療を牽引する姿を強く感じました。

きっと光藤先生もすべての講演を見守っておられたことでしょう。予定を約1時間30分延長するほどの熱気に満ちた実りある研究会となりました。当番世話人としてご尽力いただいた加藤隆一先生、ならびに会の運営にご協力いただいた皆様に心より御礼申し上げます。
次回は 2026年9月26日(土)、倉敷国際ホテルにて開催予定です。当番世話人は聖隷横浜病院の芦田和博先生にお願いしております。多くの皆様のご参加とご発表を心よりお待ちしております。

■ 光藤賞

宮脇 大先生(Doctor’s Fitness診療所)

演題名:「大阪府スマートシティ戦略における予防医療の実践」

持続可能性に着目した心臓リハビリテーションの取り組みについてのご講演でした。宮脇先生は倉敷中央病院循環器内科を退職後、現在、診療所の開業およびフィットネスジムの運営を手掛けておられます。重症心不全患者のQOL改善には継続的な心臓リハビリテーション(心リハ)が不可欠ですが、病院での実施能力や通院手段などに課題が残ります。そこで宮脇先生は、大阪府のスマートシティ戦略に沿って複数のフィットネスジムと提携し、地域全体で心リハを継続できる仕組みを構築。行動力と創意工夫によって課題解決を図るその実践的な取り組みが高く評価されました。

入江 成美先生(倉敷中央病院)

演題名:「Danger Shock Trialのショック基準に基づいたSTEMI患者の予後に関する検討」

Danger Shock Trialとは、STEMIによる心原性ショック患者に対するImpella CPの使用が、180日死亡率を有意に改善したと報告された2024年のNEJM掲載試験です。同試験の基準は、①高乳酸血症、②収縮期血圧<100mmHg、③LVEF<45%の3項目です。倉敷中央病院の豊富なSTEMI症例を同基準に当てはめたところ、それぞれの条件を満たす総患者のうち、すべての条件を満たす患者はわずか8%であることが示されました。さらに、各条件の死亡率オッズ比を基にスコア化・層別化することで、今後のMCS(機械的循環補助)戦略を最適化する試みが紹介されました。若手ながら明快でオリジナリティーの高い発表であり、倉中循環器内科の明るい将来を強く感じさせる内容でした。

(文責 代表世話人 細木信吾)