膵臓がんと向き合う ~負担の少ない手術と最新のお薬について~(後編)

膵臓がんと向き合う ~負担の少ない手術と最新のお薬について~(後編)
膵臓がんと向き合う ~負担の少ない手術と最新のお薬について~(後編)

膵臓がんは、かつては発見した時点で進行していることが多く、治療が困難な病気とされてきました。しかし、現在では医療技術の進歩により、早期に発見して適切な治療計画を立てることで、完治を目指せる「治る病気」へと変化しています。2026年1月20日に倉敷中央病院の市民公開講座「倉中医療のつどい」で、外科主任部長の増井俊彦先生が「膵臓がんと向き合う ~負担の少ない手術と最新のお薬について~」と題して講演した内容から、最終回となる後編では切除不能と判断された場合の治療方法や患者さんから寄せられる「よくある質問」について紹介します。

放射線治療:IMRTと重粒子線

がんが重要な血管を巻き込んでいて手術ができない「ステージ3」の場合には、放射線治療の実施が検討されます。
IMRT(強度変調放射線治療):放射線の強さを精密に調節し、がんの形にぴったり合わせて照射します。周囲の正常組織への影響を抑えながら、がんに強いダメージを与えます。
重粒子線:炭素イオンを照射するもので、がん細胞を死滅させる力が従来の2~3倍あります。切除不能とされたケースでも、これらの治療によって手術可能な状態まで腫瘍を縮小させた事例も報告されています。膵臓がんに対しては2024年6月から保険適用になりました。

個別化医療:がん遺伝子パネル検査

「がん遺伝子パネル検査」を行うことで、一人ひとりの遺伝子の特徴を調べ、その変異に合った薬(分子標的薬)を探すことができます。 膵臓がんでは、治療につながる遺伝子変化が判明する可能性は約10%ですが、適合する薬があった場合には生存期間が大幅に改善するデータが示されています。

新たな治療薬:「KRAS阻害薬」

膵臓がんの90%以上に関与している「KRAS」という遺伝子があります。長年、この遺伝子の表面が滑らかすぎて薬が結合しにくいため、創薬が難しいとされてきました。しかし近年、AIを用いた解析技術により、がん細胞のわずかな「ポケット(隙間)」に結合する阻害薬が開発されました。特定の変異(G12CやG12Dなど)を狙い撃ちする新しい薬の治験が国内でも始まっています。

緩和ケア

緩和ケアは「治療ができなくなってから行く場所」ではありません。現在は、がんと診断された早期から治療と並行して行うことが推奨されています。痛みや精神的な不安、治療の副作用を早期から和らげることで、生活の質(QOL)が向上し、結果としてがん治療を長く継続できる体力の維持につながります。

よくあるご質問

講演の最後には、患者さんやご家族から寄せられることの多い疑問について紹介されました。

Q. 手術ができないと言われたら終わりでしょうか?

A. いいえ。手術ができなくても、抗がん剤、最新の放射線治療、症状を和らげる緩和ケアなど、選択できる治療は数多くあります。

Q. 高齢でも手術は可能ですか?

A. 年齢のみで判断することはありません。本人の体力や持病の有無、病状の理解度などを踏まえ、総合的に検討します。

Q. 抗がん剤治療は非常に辛いものでしょうか?

A. 副作用には個人差があります。現在は副作用を抑える工夫も進んでおり、状況に合わせて投与量を調整しながら進めることが可能です。

Q. セカンドオピニオンを求めるのは失礼ですか?

A. 全く問題ありません。納得して治療を受けるために非常に大切なプロセスです。ただし、治療開始が少し遅れる可能性がある点は考慮が必要です。

膵臓がん予防のために今日からできること

医療は日進月歩で進化しており、正しい知識を持って前向きに治療に向き合うことが、病気を克服するための鍵となります。

倉敷中央病院広報室のYouTubeチャンネルでは、2026年1月20日に増井先生が「膵臓がん」をテーマに解説した市民公開講座の動画を公開しています。WEBページに収まらなかった内容もありますので、下記のリンクバナーをクリックしてぜひご覧ください。

このページの内容は令和8年1月20日時点で正確な情報に基づき、情報提供のみを目的として制作されています。原因や症状・推奨される治療などは、個人差がありますので、ご自身への適応に関しては必ずお近くの医療機関、もしくは、かかりつけ医にお問い合わせください。

増井 俊彦
倉敷中央病院 外科主任部長
専門領域
肝胆膵外科
専門医等の資格
●日本外科学会専門医、指導医
●日本消化器外科学会専門医、指導医
●日本がん治療認定医機構がん治療認定医
●日本肝胆膵外科学会高度技能指導医
●日本肝臓学会専門医
●日本膵臓学会認定指導医
●日本肝胆膵外科学会/日本内視鏡外科学会ロボット支援手術プロクター
●日本内視鏡外科学会技術認定医
●da Vinci Certificate

(2026年2月6日公開)

YouTube倉敷中央病院公式チャンネル

CTA-IMAGE YouTubeに倉敷中央病院広報室チャンネルでは、疾患の解説動画や院内トピックス紹介動画などを配信しています。市民公開講座「倉中医療のつどい」WEB配信の映像もご覧いただけます。

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