最近のめまい診療(後編)

最近のめまい診療(後編)
最近のめまい診療(後編)

めまいは自分やまわりがぐるぐる回る、ふわふわしている、気が遠くなりそうな感じ、物が二重に見える、吐き気がするなどの症状が含まれます。原因はさまざまで、良性発作性頭位めまい症やメニエール病をはじめとする末梢性めまい、脳梗塞や脊髄小脳変性症などに起因する中枢性めまい、ほかにも深部知覚障害に起因するめまいや心因性めまいなど多岐にわたります。
脳梗塞、心臓病、高血圧、糖尿病といった生活習慣病とも関連が深い「めまい」について、このページでは、2024年8月21日に倉敷中央病院の市民公開講座「倉中医療のつどい」で当院耳鼻咽喉科医長の木村俊哉先生が講演された内容の中から、めまいのリハビリなどについて紹介します。

原因が分からないめまい

診察をしても原因がはっきりせず、慢性的に長引くめまいがあります。困られている方もおられると思いますが、そのようなめまいが、2017年に「持続性知覚性姿勢誘発めまい(PPPD)」と提唱されました。症状としては、浮遊感といったふわふわする感じが3カ月以上、ほとんど毎日続きます。立っていたり、乗り物に乗ったりすることで症状が悪化する傾向があります。めまいを引き起こす耳の病気や平衡障害などが先行して発症することが多いです。これらの症状や各検査などを踏まえ、旧日本平衡神経科学会(現;日本めまい平衡医学会)がめまいを引き起こす疾患としてメニエール病や突発性難聴など16疾患を挙げていますが、それらに当てはまらない場合をPPPDと診断します。若い方より高齢者、過去にうつ病などの精神疾患を抱えられている方で多くみられます。そのような方には、抗うつ薬を服用いただくと治る方もおられます。

リハビリはありますか?

難しい分野ではっきりしたことは言えませんが、例として5つ、以下に紹介します。

①親指を立てて、それを見つめながら首を振る、頭を上下に動かす。実際やるとしんどく、何か気持ち悪い感じがします。ふらつくこともありますので、安全な場所で行ってください。

②前へ進む。早く進む、ゆっくり進みながら首を横に振る、縦に振るといった動きです。大人になるとしなくなるような激しい動きがリハビリになります。

③足の力だけで体を左右、もしくは前後に傾けます。転倒の恐れがありますが、決して無理はしないでください。軽く傾く程度でも問題ありません。

④椅子から立って前へ進んで折り返して戻ってくる。同じ部屋をぐるぐる回る。このような動きを大人はしませんが、めまいのリハビリには大切です。

⑤壁に何かチラシがあると設定し、そこを見るように歩きながら頭だけ向ける。このような動きで三半規管の機能が鍛えられるとされています。

大切なのは無理のない程度に実施することで、めまいがし始めた場合は止めてください。めまいの不安のない状態で楽しく取り組んでいただくのが大切です。

平衡感覚を養う

遊びや運動による平衡機能の向上は、3歳ぐらいから始まります。運動能力向上のゴールデンエイジは9~11歳の時と言われており、このころには体も大きく成長して、14歳ぐらいで運動神経がある程度でき上がります。以後も筋力がついたり、体が大きくなったりしますが、基本的な運動能力の基本は14歳ごろででき上がると言われています。
ただ、平衡感覚自体は3歳から8歳のころが最も大事と言われています。平衡感覚は若いころに鍛えられるので、大人になったときには、どうやって鍛えられたかを忘れてしまっています。そこで、前述したような普段しない動きをしていただくと、平衡感覚のリハビリにつながります。

成人後は個人差もありますが、50歳以上で耳石器の衰えや筋力低下が始まり、70歳以上で三半規管が衰えると言われています。ただ、さまざまな研究などを見ると、80歳代でも三半規管が衰えていない場合もあります。つまり、使わなくなると機能が衰えたかのように思えますが、リハビリなどをしていると衰えないとされています。

ラジオ体操

個人的なお勧めはラジオ体操です。若いときは思いませんでしたが、体をひねったりジャンプしたり、上半身を動かすなど、結構激しい運動です。平衡感覚を養うことに繋がるだけではなく、地元で集合型のラジオ体操が開催されていれば、参加者同士でコミュニケーションをとることもできます。高齢になっても、自分自身に合った形でできる体操と思っています。

Key Takeaways

一番お伝えしたいことは、「めまいが起きているときは休んでください」「めまいがないときは動いてください」ということです。めまいが起きると不安だと思います。「まためまいが起きたら嫌だから、動かないでおこう」ということが、一番めまいが治りにくいです。めまいがないときは動くのが大切ですので、心がけていただけると幸いです。

倉敷中央病院広報室のYouTubeチャンネルでは、2024年8月21日に木村先生が「めまい」をテーマに解説した市民公開講座の動画を公開しております。WEBページに収まらなかった内容もありますので、下記のリンクバナーをクリックしてぜひご覧ください。

 

木村 俊哉
倉敷中央病院 耳鼻咽喉科・頭頸部外科 医長
専門領域
めまい
専門医等の資格
●日本専門医機構認定耳鼻咽喉科専門医
●日本めまい平衡医学会認定めまい相談医
●耳鼻咽喉科専門研修指導医

(2024年10月21日公開)

YouTube倉敷中央病院公式チャンネル

CTA-IMAGE YouTubeに倉敷中央病院広報室チャンネルでは、疾患の解説動画や院内トピックス紹介動画などを配信しています。市民公開講座「倉中医療のつどい」WEB配信の映像もご覧いただけます。

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