てんかんを知ろう

てんかんを知ろう
てんかんを知ろう

てんかんは、実は身近な病気

特別な人がてんかんになるわけではありません。どなたでもてんかん発作を起こす可能性はあり、そのなかで「起こしやすい人」「起こしにくい人」にわかれます。
日本人の約100人に1人がてんかん患者さんと言われています。小学校・中学校で3組に1人くらいの計算になります。「でも、小学校や中学校で、てんかんの人はいなかった」とおっしゃる方も多いのではないでしょうか。てんかんで薬を飲んでいても周りの人にそれを教える人はあまりいません。ご家族と担当医が知る以外、周囲には伝えていないことも多く、見えにくいだけです。

てんかんを発症する割合

性差はほとんどありません。

20代以下 0.5~0.6%
10代、とくに14歳以下の小児については、遺伝発症の方が多い。
60代以上 1~1.2%

実は、高齢者に多い「てんかん」

当院では14歳以下は小児科、15歳以上を脳神経内科で診ています。当科で見ている患者さんの多くは、原因が不明です。
実は、てんかん発作は60代以上の高齢者に多く起こります。若い時に発作を起こした経験がなくても起こります。高齢者は老化により脳が傷ついていきます。MRI検査をすると、大なり小なり傷がある方がほとんどです。この傷は脳腫瘍、脳出血、脳梗塞、外傷などによるもので、これが発作を起こす可能性を高めます。たとえば、脳神経細胞が障害されるアルツハイマー病の方は、てんかん発作を起こすことがよくあります。

 

失神する=てんかんではありません

失神とは、急激に脳の血流が失われて意識を失うことと定義されています。
脳細胞はもともと活動エネルギーを蓄えていて、それが勝手に発動しないように脳がコントロールしていますが、血流が途絶えたら7~8秒で暴走が始まります。
意識消失発作は良性失神、痙攣性失神、心因性失神、てんかん発作の4つに大きく分けて考えます。
てんかんの診断は、検査に加え発作を起こしたときの状況をもとに行います。

良性失神 例えば朝礼時に長時間起立していて起こるものなど。
痙攣性失神 重篤な病気の方も多く含まれており、てんかん疑いで当科を受診した方を循環器内科など他科へ紹介することもある。
心因性失神

強いストレスを受けたりした時に、けいれんを起こしたり、反応が無くなったりするものです。検査では異常は見つかりません。
厳密に言えば失神の定義にあてはまりませんが、見ただけでは失神っぽいので、「失神」の用語が使われます。

てんかん発作 脳細胞の異常な電気的興奮で身体に異常がでるもの。
発作が起きた状況、脳波・頭部画像などの検査を元に、「てんかん発作」と診断されます。

 

てんかんと診断されるまで

患者さんへの問診、発作を目撃した方からの情報を聞きとります。同時に脳波検査やMRI検査を行います。脳波・MRI共、そんなに感度の良い検査では無く、時に診断には時間がかかります。1回の検査でてんかんとわかるのは3~4割とも言われています。てんかんの専門医でないと判断が難しい場合もあります。

てんかん発作とてんかんの定義

てんかん発作…脳細胞の異常な電気的興奮で身体に異常がでるもの
てんかん…てんかん発作を2回以上繰り返すもの。

1回目の発作で受診された患者さんについて、他の要因が除外され、てんかん発作と判断されたときに「てんかんの可能性あり」と伝え、本人・ご家族と相談しています。
2回目の発作の可能性が高い、もしくは2回目が許されない方については、坑てんかん薬を使います。例えば、人前で活動する職業の方など、発作を避けたいと希望される方は、ご希望に沿うようにしています。
ただ、高齢者の多くは脳出血・脳腫瘍・認知症など脳障害が明確なことが多く、2回目発作の可能性が高いことを踏まえて1回目の発作時にてんかんと診断し、投薬を開始することもあります。

 

てんかんの治療

基本は服薬で、薬を使うことで発作頻度を減らし、通常の生活ができるようになることが目標です。最近の、多くの薬は1日1回の内服ですが、2回や3回の場合もあります。てんかんの薬は継続して長期服用することが多いので、副作用が少ないこと、処方しやすいことを考えて処方しています。

薬の役割は、炭火に水をかけ続けるようなもの

脳の傷は直せないので、薬を使って発作を抑えます。
炭火の火種が完全に消えているかは外から見てもわからないですよね。20年薬を飲み続けて「これだけ長い間飲んだから大丈夫かな」と服薬を中断したとき、絶対発作が起きないとは言えません。

妊娠中の方の服薬について

服薬をやめて発作を起こすほうがリスク大

まずは主治医にご相談をお願いしています。
妊娠されると胎児への影響を恐れ、薬を止めてしまう方がおられます。てんかん発作が起きなければよいのですが、薬で発作を抑えている方の多くは、てんかん発作が起こってしまいます。
妊娠中にてんかん発作が起きることはとても危険なことです。気を失ったり、けいれんすることで怪我をしたりする可能性があり、そのことは直接お腹の中の赤ちゃんに危険なことです。けいれん中に息が止まることで身体の中の酸素が減って、それが赤ちゃんに害を起こすこともあります。
また、てんかん発作が起きることで、次のてんかん発作が起きやすくなって、薬を以前より増やさなくていけなくなることもあります。
特に最近の薬は胎児への影響が少ないものが多く、まずは主治医への相談をお願いします。

患者さん・ご家族に注意していただきたいこと

患者さんへ

決められた量の薬を規則正しく飲み続けることが大事です。
飲み忘れたらスキップするのではなく、その場で飲みましょう。「毎朝服薬しなければならないのに夜に飲み忘れに気づいた」という場合、次の服薬タイミングが近くても飲んでください。1日分の服薬がないことで血中の薬の成分濃度が下がるのは発作のリスクを高めてしまいます。
水回り、高所作業はお一人の時は避けてください。一人で入浴(浴槽につかる)して溺れたり、階段の昇り降りの際に転落する、屋根の修理で転落するなど、事故につながりかねません。
また、旅行など非日常の場は飲酒や夜更かしなど生活リズムが崩れやすくなるため、注意が必要です。

周りの方へ

発作が事故につながらないよう、注意してあげてください(水回りでの行動、高所作業、運転への配慮。転倒時頭を打たないよう環境整備など)。
そして、発作が起きたときにはサポートしてあげてください。そして、温かく見守っていただくことをお願いします。

  • 発発作が起きたら、まずは救急車を呼ぶ。
  • 体を横向きにする。
  • 嘔吐物を口から掻き出す。
  • 転倒時に首を骨折していることもあるのでむやみに動かさない。

 

進藤 克郎(しんどう・かつろう)
脳神経内科 主任部長
●日本神経学会専門医、指導医、代議員
●日本内科学会認定内科医
●日本神経救急学会評議員
●京都大学医学部臨床教授

 

 

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