腹部大動脈は臍下で左右総腸骨動脈に分岐し、さらに尾側で内・外腸骨動脈へ分岐します。外腸骨動脈は末梢下肢へ血流を送り、内腸骨動脈は一部の腸管と臀部(お尻)へ血流を送ります。腹部動脈瘤の手術の際に対する術式は, 内腸骨動脈の血行再建もしくは瘤切除が望ましいですが, 瘤が大きいと剥離が困難であり, 術野の問題から内腸骨動脈瘤切除のみで再建を行なわない場合やステントグラフト治療ではendoleak(血流の漏れ)予防目的に内腸骨動脈の塞栓をすることも少なくないです。内腸骨動脈への血流がなくなると一定の確率で、しばらく歩くと下肢のだるさや痛み等から歩けなくなり,しばらく休むと再び歩けるようになるといった症状がでるようになり、「間歇性跛行」と呼ばれます。間歇性跛行は命には別状はないですが、日常生活に大きな支障をきたしますので、当科では積極的に血流温存・再建を行っています。
術前は左記のような両側の巨大な内腸骨動脈瘤に対して両側内腸骨動脈を温存する形っで人工血管置換術を施行しました。術後は間歇性跛行を認めず術翌日より歩行を開始し独歩退院されました。(→:内腸骨動脈瘤)
ステントグラフト治療では数年前までは総腸骨動脈瘤に対するステントグラフト治療では、内腸骨動脈を温存することが不可能でした。しかし新しいデバイスIBE(Iliac Branch Endoprosthesis)を用いることで内腸骨動脈を温存したステントグラフト治療が可能となりました。(→:温存した内腸骨動脈)