甲状腺がんの外科手術

甲状腺がんの外科手術

甲状腺がんの外科手術

のどぼとけのすぐ下、気管を取り囲むように位置し、蝶々が羽を広げたような形をした小さな臓器の甲状腺。甲状腺から分泌されるホルモンは、脳の活性化や新陳代謝の促進、体温調整などの働きがあります。この甲状腺がんの外科手術について、当院耳鼻咽喉科の山田光一郎先生に聞きました。

甲状腺がんの症状
甲状腺がんの症状について、小さい場合は自覚症状がほとんどなく、健康診断の際に触診やエコー検査、胸部CT検査などで偶然見つかることも少なくありません。大きくなると首が腫れ、さらに周りの組織を巻き込むと声のかすれや物が飲み込み にくくなる嚥下障害などを来たします。一般的に甲状腺がんは女性に多く、男性の約3倍です。20歳代でも発症することがありますが、40歳代から50歳代の女性が大半です。

甲状腺がんの検査
まず超音波検査で腫瘍の有無や大きさなどを調べます。がんが疑われる場合などでは注射器で細胞を採取する細胞診検査をします。がんの場合は進行度を評価するため、CTによる画像検査も行います。甲状腺にできるがんは主に5種類ですが、約9割は乳頭癌です。乳頭癌は比較的進行が遅くて比較的予後が良いとされています。ただ、極めて進行の早いがんもあるため注意は必要です。

甲状腺がんの手術
当院耳鼻咽喉科では内分泌代謝科と密接な連絡を取り、病理診断科などとともに定期的にカンファ レンスを開催して外科的治療を行います。甲状腺がんは放射線治療や化学療法の効果が大きくなく、手術が第一選択となります。ただし、がんの大きさが1cm未満の場合は経過観察とすることもあります。手術は全身麻酔で行います。がんが甲状腺の左右いずれかにある場合は、がんがある部分を半分切除する「部分切除術」を、左右ともにがんがある場合は全部切除する「全摘術」となります。リンパ節への転移が疑われる場合は周囲のリンパ節も切除します。

部分切除術の場合、鎖骨のやや上を5~6cm皮膚切開して甲状腺を摘出します。手術の際は声帯を動かす反回神経を傷つけないように慎重に操作します。症例によっては、神経刺激装置を使用した神経の確認も行っています。がんの場所や大きさによりさまざまですが、部分切除術の場合、手術時間は標準的なものだと2時間以内で、入院期間は約1週間です。周囲の臓器を大きく巻き込むような進行甲状腺がんの外科手術も、必要に応じて外科、形成外科などと協力して積極的に行っています。

術後の経過は
食事制限はなく、手術翌日から食事も可能です。歩行もできますが、首は急に動かさないようにしていただきます。全摘術の場合は、甲状腺ホルモンの内服が必ず必要となります。部分切除術の場合でも、ホルモンが不足した場合、甲状腺ホルモンの内服が必要となります。また、リンパ節や肺などへの転移の有無をチェックするため、最低10 年間は年に1回、エコー検査やCTなどを行う経過観察が必要です。

山田 光一郎
耳鼻咽喉科 部長
専門領域:甲状腺腫瘍を含む頭頸部腫瘍
専門医等:日本耳鼻咽喉科学会専門医
     日本気管食道科学会専門医
     日本内分泌外科学会専門医
     日本がん治療認定医機構がん治療認定医
     耳鼻咽喉科専門研修指導医

(2022年2月24日公開)

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