IBD(炎症性腸疾患)センターの開設

IBD(炎症性腸疾患)センターの開設
炎症性腸疾患(IBD;Inflammatory Bowel Disease)

腸に粘膜の炎症が起きて腹痛や下痢などの症状が出現する炎症性腸疾患は、IBDと呼ばれています。IBDは主として、
・潰瘍性大腸炎
・クローン病
を指します。30歳未満での若年発症が目立ち、好発年齢は中学生から20歳前後ですが、まれに50~70歳で発症する患者さんもいます。原因ははっきりしておらず、発症すると病状が悪い時期と落ち着いている時期を繰り返す、長期間の治療が必要な指定難病です。
日本での罹患者は潰瘍性大腸炎が22万人以上、クローン病が7万人以上で、人口の約0.2%、1000人に2~3人が罹患しているとされています。

1.潰瘍性大腸炎とクローン病

2.倉敷中央病院のIBDセンター

3.担当医の想い

潰瘍性大腸炎とクローン病

 

  潰瘍性大腸炎 クローン病
特徴 大腸、特に直腸で炎症が発生します。
炎症は直腸から連続的(連なるよう)に、大腸の粘膜である表層に生じます。

大腸の全域に加え、小腸など消化管のすべてで炎症が起こる可能性があります。
潰瘍性大腸炎と異なり、炎症は非連続的(さまざまな場所)に生じます。

症状 血が混じった持続性の下痢、腹痛や発熱など 慢性の下痢や腹痛、発熱など
診断 大腸の内視鏡検査で炎症の状態や範囲を調べ、組織検査を行います。 大腸や小腸の内視鏡検査やバリウムを用いたX線検査などで診断します。
治療 目的は症状を抑えて完全に炎症が無くなる状態を目指し、大腸がんや肛門がんなどの腸管合併症を予防することです。潰瘍性大腸炎は薬物治療が主体、クローン病は栄養療法が大切になります。
近年新しい治療薬が出ていますが、使用する薬に明確な基準がなく、処方には高度な専門的知識が必要です。

倉敷中央病院のIBDセンター

IBD患者さんは増加傾向です。若年発症が一般的で、成人だけでなく小児期の発症が多いため、幅広い年齢層に対して的確な診断と治療が必要です。就学、就労、結婚、妊娠・出産などのライフイベントにも配慮が求められます。
そのためIBD診療は専門的でありつつ、多職種を含めた横断的な総合診療を提供できる施設が不可欠になります。ハイボリュームセンターである当院での診療体制をより強固なものにするため、IBD(炎症性腸疾患)センターを2023年7月1日に設立しました。
IBD診療に関わる診療科の医師(消化器内科、外科、小児外科、小児科)、看護師、薬剤師、管理栄養士、医療ソーシャルワーカー(MSW)など、多職種で構成するメンバーで個々の患者さんに適した治療を検討します。職種や診療科の垣根を超えたチーム医療を実践し、多職種のサポートでIBD患者さんに専門的で総合的な診療を提供します。

IBDセンターについては、当院のホームページでも詳細をご紹介しております。

担当医の想い
下立 雄一
消化器内科部長、IBDセンター長

炎症性腸疾患は近年、増加の一途を辿っており、小児期に発症する患者さんの診療も多くなってきました。残念ながら現在の医療でIBDを完治させることは難しく、うまく付き合っていただかなければなりません。
長い治療の過程で、時に手術を要する場合や学業、結婚、出産など大きなライフイベントに遭遇します。またIBDは腸以外の部位に炎症が波及することがあり、単一の診療科のみで対応することが難しい病気です。
私はIBD専門医療機関で研修し、2012年に当院に赴任しました。赴任後、約10年の間に初診の中学生や高校生が成長し、就職・結婚・出産を経験する患者さんを診療する機会をいただき、IBD診療医としての”やりがい”を日々感じております。当院に通院中のIBD患者さん全員がこれまで以上にHappyに過ごしていただけるよう、IBDセンターは複数の診療科や医療スタッフが一丸となり、IBD医療専門チームとして全力で患者さんをサポートしていきます。

専門領域:消化管の内視鏡診断と治療、炎症性腸疾患、ESD
専門医等:日本内科学会総合内科専門医、指導医
     日本消化器内視鏡学会専門医、指導医、上部消化管内視鏡スクリーニング認定医、大腸内視鏡スクリーニング認定医、学術評議員
     日本消化器病学会専門医、指導医、学術評議員
     日本がん治療認定医機構がん治療認定医
     日本消化管学会胃腸科専門医、指導医、代議員、中国・四国支部幹事
     日本ヘリコバクター学会H.pylori感染症認定医
     日本大腸肛門病学会専門医、指導医

横田 満
外科部長

以前に比べ内科治療の選択肢が増え、良好な治療経過を得られる方が増えています。しかしながら、内科治療で難治であったり、がん化したりする場合には手術が必要となります。そのようなときには、私たち外科医が治療を担当いたします。内科医と密に連携し、一人ひとりにとって最善の治療となるように手術の適応、タイミング、方法をご提案いたします。私たちは積極的に腹腔鏡手術を取り入れ、手術による身体への負担を軽くし、術後の早期回復に取り組んでいます。腹腔鏡手術は5~10mmの傷を数か所あけ、手術を行いますので術後の傷跡が分かりにくくなるメリットもあります。
炎症性腸疾患の治療には内科医、外科医、看護師をはじめ薬剤師、管理栄養士らを含む他職種の連携が不可欠です。センター内のチームスタッフが一丸となり、それぞれの患者さんにとってベストな治療となるように努めていきます。

専門領域:大腸癌、腹腔鏡下手術、ロボット手術
専門医等:日本外科学会専門医・指導医
     日本消化器外科学会専門医・指導医
     日本がん治療認定医機構認定医
     日本内視鏡外科学会技術認定医・評議員
     日本消化器外科学会消化器がん外科治療認定医
     日本大腸肛門病学会専門医・指導医
     da Vinci Certificate
     日本内視鏡外科学会ロボット支援手術プロクター(消化器・一般外科)
     The American Society of Colon and Rectal Surgeons International fellow

片山 修一
小児外科部長

腹痛、下痢、血便といった消化器症状のある子どもたちが、炎症性腸疾患に診断されるケースが年々増えています。ほとんどは小児科で見つかることが多いのですが、小児外科の受診や治療を契機に見つかるIBDも少なからず存在します。
私たち小児外科医は、IBDの診断は元より外科的治療にも関わってきました。しかしながら、長い将来と明るい未来が待ち受けている子どもたちに対し、傷を伴う手術治療は極力避けたい気持ちもあり、小児科と相談し治療を決めていくことがほとんどでした。
今回のIBDセンター立ち上げに際し、このような小児期のIBDに対する治療を成人の内科や外科の先生をはじめ、看護師や薬剤師、管理栄養士といったコメディカルのスタッフとチームを組んで一緒に治療方針を考えていくことは、よりきめ細やかな治療を子どもたちに提供できると確信しています。

専門領域:小児外科
専門医等:日本外科学会専門医
     日本小児外科学会専門医
     日本周産期・新生児医学会認定外科医
     日本小児泌尿器科学会認定医

濱端 隆行
小児科医長

近年増えている小児期発症炎症性腸疾患は成人例に比べ病変が広範囲に及び、急速に重篤化することが知られているうえに、成長や学校生活に配慮した治療を考える必要があります。消化器内科や外科の先生方と連携することで、個々の子どもに応じた最適な治療を組み立てることが可能となりました。
また、子どもたちが適切な教育を受け、心理的にも社会的にも十分成熟したところで成人科へ移行することも重要です。当院では小児科と消化器内科が連携して診療にあたる十分な期間(オーバーラップ)を設け、移行医療を円滑に行えるように努めています。
IBDセンターの領域横断的な多職種で構成されるチームにより、炎症性腸疾患という難病疾患を急性期から慢性期まで、内科的治療から外科的治療まで、小児期から成人までシームレスで良質な医療を実践できると確信しています。

専門領域:小児血液、腫瘍
専門医等:日本専門医機構認定小児科専門医、指導医
     日本血液学会専門医

 
 
 
(2023年8月31日公開)

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