成人先天性心疾患外来について

先天性心疾患は新生児の約100人に1人の確率で発生するとされます。近年における手術やカテーテル治療、薬物療法の進歩によって、このような患者さんの9割以上が成人に到達できるようになり、すでに50万人を超える成人の患者さんがいると考えられています。
このような患者さんの増加に伴って、成人後に生じる新たな問題(就労、妊娠・出産、再手術、生活習慣病 等)が注目されるようになりました。これまでは小児循環器を専門とする医師が引き続き患者さんの診療にあたっていましたが、患者さんのライフステージに応じた様々な問題を解決するためには、循環器内科を含めた様々な診療科の医療スタッフがチームを組んで診療にあたることが重要であると考えられるようになりました。しかし、このような診療体制は全国的にも十分に整備されているとは言い難く、成人後の診療に不安を抱えている患者さんも多いのが現状です。
当科では、このような成人先天性心疾患(Adult Congenital Heart Disease: ACHD)患者さんを包括的に診療する目的で、ACHDを専門とした医師による外来診療を行っています。

当科の成人先天性心疾患(ACHD)外来について

当科では、2008年4月からACHD専門外来を開設しました。当初は、当院の小児科で定期的に経過を見ていた患者さんが成人となり、循環器内科への移行をご希望、あるいはご了承いただいた患者さんの診療を主に行っていました。その後、ACHD患者さんの増加に伴って、2015年4月より院外からの紹介患者さんにも対応できるように、外来枠を増やして診療にあたっています。
また、2022年4月より本邦で新たに専門医制度が開始され、当科からは2名の医師がACHD専門医として認定を受けることが出来ました。

図1 当院ACHD外来の診療実績(2022年5月まで)

図1は2022年5月時点の、当院ACHD外来の診療実績を示しています。Fallot四徴症や両大血管右室起始症に代表されるような、複雑心奇形の患者さんも多く通院されています。また、通院されている患者さんのうち、半数以上は小児期に何らかの心臓手術を受けています。元々の心疾患や受けた手術の種類によっては、長い経過の中で様々な術後合併症が生じてくることがありますので、無症状の患者さんであっても終生の経過観察が必要となります。

移行医療について

当院ではACHD患者さんの「移行医療」に取り組んでいます。 移行医療には、小児科から成人診療科へ診療体制が移ること(transfer)だけでなく、患者さんが成長に伴って自立していくこと(transition)の両方が含まれます。先天性心疾患は生涯にわたって付き合っていかねばならない疾患であり、患者さんが病気と共によりよい人生を送るためには、移行医療は大切なステップになります。信頼している小児科の先生の元を離れることに不安を感じる患者さんやご家族は多いですが、ACHD専門のスタッフがしっかりとサポートします。また、成人診療科へ移行後も「移行医療」は続いていきます。ご自身の病気に関する疑問など、どんなことでも気軽にご相談ください。

当院のACHDカンファレンスについて

当院では月に1回、ACHD患者さんの定期カンファレンスを行っています。小児科医、循環器内科医、産婦人科医、消化器内科医、各専門看護師、検査技師などの多職種で症例検討を行い、ACHD外来への移行対象患者さんや、移行前後のケアや問題点について相談を行っています。また、妊娠や出産をACHD患者さんの問題点の一つとして妊娠、出産の問題がありますので、出産を望まれるACHD患者さんや実際に妊娠、出産となるACHD患者さんについて綿密な相談の上、方針を決定しています。疾患や生活上の不安が問題となる場合は、必要に応じて臨床心理士や精神科医に相談し、適宜介入を行っています。

検査・診断・治療の内容について

心エコー図検査、心臓CT、心臓MRI検査などを必要に応じて施行し、ACHDの診療経験が豊富なスタッフが正確かつ専門的な診断を行います。必要に応じてカテーテル検査を施行する場合もあり、検査内容によっては日帰りで行うことができます。また、電気生理検査、ペースメーカ植込み術、カテーテルアブレーションなどの不整脈治療や、心房中隔欠損症や動脈管開存症のカテーテル閉鎖術など、高度な専門性を必要とするカテーテル治療にも対応しています。

お問い合わせ

ACHD外来は以下の医師が担当しております。ACHD外来に関する相談、ご質問につきましては、かかりつけの医師と相談の上、倉敷中央病院循環器内科までご連絡ください。

相談窓口

毎週月曜日(午前、午後) 小野 幸代 医師

毎週火曜日(午前、午後) 虫明 和德 医師
毎週木曜日(午前、午後) 小坂田 皓平 医師


第2・第4週木曜日(午後) 福 康志 医師(再診のみ)