当院では、平成23年3月に心臓病センター専用のCT機として次世代マルチスライスCT“SOMATOM Definition Flash(シーメンス・ジャパン株式会社)”を導入しています。
このCT装置は2対の管球と検出器を搭載しており、従来CTと比較して、より高速に、より確実な検査が可能です。また、“Dual energy”という最新のテクノロジーにより画期的な画像が得られるようになりました。 これらの特徴を生かし、心臓血管系の検査の専用機として使用しています。
当院での心臓CT検査の特徴としては、心臓・大血管に関しては、循環器内科専門医が画像解析、診断を行っており、また、同時に撮像した心臓・大血管以外の所見(肺、縦隔、上腹部)に関しては、放射線科専門医が読影をしています。
今までは心臓カテーテル検査でしか分からなかった冠動脈の走行、狭窄を評価することができます。
心臓CTではカテーテルを使用せず、造影剤を注射することで冠動脈の評価が可能です。心臓カテーテル検査と比べより低侵襲で、体の負担が少ない検査です。
また心臓CT検査は、心臓の弁、心筋、心膜のほか、必要に応じて大動脈、肺をみることもできるので、心筋疾患、心臓腫瘍、大動脈瘤、大動脈解離、肺血栓塞栓症などの診断にも役立ちます。さらに昨今は、心臓の構造以外に、機能や血流もわかるなど、心臓CT検査から多くの情報を得ることができるようになっています。
・心臓カテーテル検査とくらべ安全で短時間で検査が可能です。
・心臓の情報以外にも胸部~上腹部の情報も得られます。
・入院の必要がなく外来で検査が可能です。
・造影剤アレルギーがある方は検査ができません。
・腎機能が悪い方は検査ができない場合があります。
・冠動脈の石灰化が強い場合、診断の精度が悪くなります。
・心臓カテーテル検査と同様に、造影剤副作用や放射線被爆の可能性もあります。
心臓CT検査は心臓カテーテル検査に比べて苦痛が少なく、重篤な合併症も少ない低侵襲の検査で、心臓の病気を診断し、治療方針を決めるために有効な検査です。特に狭心症の診断においては有用で、器質的狭窄病変や冠動脈石灰化の検出だけでなく、プラークの性状評価が可能であり、また、解剖学的情報を得ることができます。高血圧、脂質異常症、糖尿病、喫煙といった動脈硬化の危険因子をお持ちの方、胸痛を自覚される方、心臓病の家族歴をお持ちの方には特にお勧めできる検査と言えます。
また、ステント留置後の経過観察において、カテーテル検査をせずに、非侵襲的な心臓CT検査にてステント内再狭窄の評価が可能となっています。
冠動脈バイパス術後の検査では、従来のカテーテルによるバイパスグラフト造影検査は、カテーテルの挿入が困難であったり、また、せっかくつないだバイパスグラフトがカテーテルにより傷つく可能性もあります。心臓CT検査では、1回の撮影でバイパスグラフトと冠動脈を評価することが可能です。また、任意の角度から観察することが可能であるため、吻合部の評価において特に有用です。
左)左冠動脈前下行枝近位部に高度狭窄病変を認める。
右)左冠動脈前下行枝近位部にびまん性に高度狭窄病変を認める。
左)右冠動脈近位部ー中間部にかけて3本のステントを留置した症例。再狭窄を認めない。
右)左冠動脈近位部にステントを留置した症例。ステント手前部分に再狭窄を認める。
大動脈弁狭窄症等の弁膜症の診断においては、従来より心エコー検査、経食道心エコー検査がゴールドスタンダードとされています。しかし、弁周囲の石灰化の強い病変や人工弁においてはアーチファクトにより評価が困難である症例が少なくありません。近年、CTの時間分解能、空間分解能の向上により、大動脈弁弁口面積の評価が可能となってきています。また、同時に、大動脈、弁輪部、冠動脈の情報も得られるため、心臓CT検査は弁膜症診断においても、今後有用なツールとなりうると考えています。経カテーテル的大動脈弁置換術の術前精査にも活用しています。
弁膜症症例
左)感染性心内膜炎に伴う僧帽弁逸脱症
右上)大動脈弁 二尖弁
右下)大動脈弁狭窄症
従来より、大動脈疾患の診断においてはCT検査が有用であるとされていますが、時間分解能、空間分解能の優れた当CTで撮影することで、大動脈壁、瘤、大動脈解離のflapがより鮮明に描出することができ、手術の適応評価、術式を決定するのに有用です。また、術前に必要な冠動脈の情報も同時に得ることが可能となっています。
腹部大動脈瘤症例
同時に冠動脈の評価も施行。
従来のCTでは肺塞栓の有無、位置の確認のみの情報しか得ることができませんでしたが、Dual energyで撮影することにより、一度の撮影によって造影CT画像と肺血流の灌流画像が同時に得ることが可能です。
肺塞栓症症例
多発性の慢性肺塞栓症に対しDual Energyモードで造影CT施行。
右)lung perfusionによる灌流域の評価
閉塞性動脈硬化症の患者さんは冠動脈疾患の合併の可能性が高いといわれています。下肢の造影CT時に同時に冠動脈CTを撮像することができ、冠動脈疾患の診断も可能です。
閉塞性動脈硬化症症例
左の浅大腿動脈が閉塞しており、末梢は側副血行路で造影されている。
同時に冠動脈評価も可能
近年、心房細動治療において、肺静脈のカテーテルアブレーションが主流となっています。当院ではカテーテルアブレーション前に心臓CTを施行し、左房容積、肺静脈の解剖学的特徴、左房内血栓の有無の評価を行い、治療に役立てています。
カテーテルアブレーション前肺静脈評価
・内視鏡様画像
・肺静脈内径測定
同時に冠動脈評価も可能。
監修 :羽原 誠二(医師)
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