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診療案内[get_image]
心臓病とその他循環器疾患

冠動脈インターベンション(経皮的冠動脈形成術)PCI,PTCA

冠動脈インターベンションのはじまり

 冠動脈インターベンションは、経皮的冠動脈形成術、経皮経管冠動脈形成術、風船治療など時代や施設によりいろいろな名称でよばれています。英語・英略名では、PCI(percutaneous coronary intervention)やPTCA(percutaneous transluminal coronary angioplasty)と表記し、これらはすべて同じ治療=心臓カテーテル治療のことを表します。
冠動脈インターベンション(PCI,PTCA)の歴史は、1977年、スイスの医師グルンチッヒ(Dr. Andreas R.Gruzig )が初めてバルーン(風船)で血管を膨らませたことに始まり、欧米において、研究と患者への適応が積極的に行われてきました。わが国では、1981年に始めて実施されました。


冠動脈インターベンションの概要

 狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患は冠動脈の狭窄や閉塞によって、心臓の筋肉への血液の供給が不足し胸痛などの症状をきたす疾患です。特に急性心筋梗塞では、命に関わることもあり、迅速で適切な治療が重要です。このような疾患の治療法として、

  1. 薬物療法
  2. 冠動脈インターベンション(心臓カテーテル治療)
  3. 冠動脈バイパス術

の3種類の方法があります。このうち、薬物療法は治療の基本で、通常は薬物療法を行った上で、冠動脈インターベンションや冠動脈バイパス術を行います。
循環器内科が冠動脈インターベンションを担当し、心臓血管外科が冠動脈バイパス術を担当しています。


冠動脈インターベンションの実際

 冠動脈の治療を行う場合カテーテルを用いますが、そのカテーテルを挿入する部位として、手首(橈骨動脈)、肘(上腕動脈)、ももの付け根(大腿動脈)の3カ所があります(詳しくは「穿刺部位について」をご覧下さい。)。患者さんの病変や病態などに応じて、穿刺部位を選択しています。大腿動脈からのアプローチでは、血管を縫合する道具を用いることにより、治療後の安静時間を短くしています。

冠動脈インターベンションの大きな流れ

  1. 局所麻酔を行った後で、シース(カテーテルを出し入れするために、血管に入れる管)を血管に挿入します。
  2. カテーテルを冠動脈入り口まで挿入します。
  3. 細いワイヤーで、狭窄部位や閉塞部位を通過させます。
  4. ワイヤーに沿ってバルーンを進めます。バルーンをふくらませることで、血管を拡張します。
  5. 通常、その部分にステントを留置します。

冠動脈インターベンションで行われる手技

 冠動脈の病変は、硬い病変ややわらかい病変、また長い病変や短い病変、一箇所の病変か複数の病変など個人差があります。病変の条件により使用するカテーテルの種類や治療の方法も違います。現在行われている主な冠動脈インターベンションの手技には次のようなものがあります。

  • バルーン拡張
    冠動脈インターベンション治療の基本で、細くなった血管を造影剤で満たした風船で拡張します。
  • ステント留置
    金属製の編み目あるいはコイル状のもの(ステント)を血管の内側から支えとして冠動脈に留置します。
  • ロータブレーター
    ロータブレーターは、動脈硬化が進行し非常に固くなった状態(石灰化)病変に対して使用します。
  • レーザー
    カテーテルの先端からレーザーを照射して、冠動脈を狭窄あるいは閉塞させているものを焼き切ることができます。
  • 血栓吸引療法
    冠動脈内がやわらかい血栓でふさがれている場合、血栓を吸引・除去し血行を改善します。
  • 薬剤溶出性コーテッドバルーン(DCB)/薬剤溶出性バルーン(DEB)
    当科では、薬剤コーテッドバルーン(Drug-coated balloon (DCB))を全国に先駆けて導入し、臨床研究として使用を開始しました。世界で初めての、薬剤溶出性ステントの再狭窄病変に対するDCBの有用性に関する報告は、欧米の一流医学専門誌に採用され、また、その後も、このバルーンの優れた成果を世界へ向けて発信しています。
  • 末梢血管の保護
  • 血管内超音波検査(IVUS)
  • 冠動脈光干渉断層撮影(OCT)
  • 放射線被曝を低減した血管造影X線診断装置
    2012年8月にアジア初となる1号機の低被曝カテ装置(Allura Clarity FD10/10)が導入され、2015年4月には血管造影室全ての装置が低被曝カテ装置に入れ替わりました。

冠動脈インターベンションに伴う合併症

 冠動脈インターベンションは、熟練した循環器内科の医師とそのチームが十分な症例の検討と準備をした上でおこないます。そのため、治療に伴う合併症の頻度は高いものではありません。しかし、造影剤や血栓を予防する薬などを使用し、また、血管内でカテーテルを操作する治療であり、不可抗力による合併症や副作用は皆無ではありません。
冠動脈インターベンションに伴う合併症には、以下のようなものがあります。

  1. 急性冠動脈閉塞
  2. ステント血栓症
  3. 急性心筋梗塞
  4. 冠動脈穿孔
  5. 出血性の合併症
  6. 脳血管障害、その他の塞栓症
  7. 造影剤による腎機能障害
  8. 感染
  9. 神経障害
  10. 薬のアレルギー

冠動脈インターベンション施行中の緊急手術について

冠動脈インターベンションをおこなった方のうち、緊急手術を要した患者さんは0.1%前後です。

冠動脈インターベンション治療に伴う死亡

冠動脈インターベンションをおこなった方のうち、頻度は非常に低いものの、上述のような合併症が起こることがあります。その際には、最善の治療を行いますが、わずかな頻度(0.1%前後)で救命できない方もおられます。一般的には、高齢の方、治療前の診断で、重症度が高い方、全身状態の悪い方、他疾患(腎不全や脳血管疾患など)を合併している方が高いと考えられます。


冠動脈インターベンション治療後の生活について

 冠動脈インターベンションに伴い、胸痛発作などの症状は軽快されると思いますが、動脈硬化を来しやすい体質がなくなるわけではありません。動脈硬化を進行させないための薬物療法や生活習慣の改善が重要です。また、ステントを留置された方では、ステントの閉塞の予防のための薬物療法も特に重要です。

1.再狭窄
カテーテル治療を行い、狭い血管を拡張した後、再度拡張した部位が狭くなることをいいます。薬剤溶出性ステントを留置することでその頻度は減少していますが、頻度は低いものの認めます。症状の再発があれば、早めに受診して下さい。

2.ステント留置後の薬物療法

 ステント留置後の良好な長期成績を得るためには、適切な抗血小板療法を行う必要があります。内視鏡検査や外科手術に際して抗血小板薬を中止すると、ステントを入れた部分が血栓で閉塞する場合があります。内視鏡検査や手術の場合には、担当の先生とご相談ください。また、不明な点がありましたら、遠慮なく相談下さい。

3.糖尿病、高血圧症、脂質異常症(高コレステロール血症)のコントロール

 糖尿病、高血圧症、脂質異常症のコントロールは非常に重要です。かかりつけの先生のもとでの日々の診療が重要です。

4.生活習慣の改善

 禁煙、食事療法、適度な運動は、再発予防のために非常に重要です。

5.狭心症、心筋梗塞の再発

 生活習慣の改善や適切な薬物療法を行っていても、その頻度は低いですが、狭心症や心筋梗塞を再発する場合があります。定期的に受診されることや、再発時には、専門施設を早期に受診されることが重要です。

監修 :門田 一繁(医師)

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