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診療案内[get_image]
心臓病とその他循環器疾患

経皮経静脈的僧帽弁交連切開術(PTMC)

経皮経静脈的僧帽弁交連切開術(PTMC)の実際

1:バルーンサイズ

PTMCのバルーンは大(28mm)、中(26mm)、小(24mm)の三種類がある。症例の体格と心エコーで計測した弁輪径から、バルーンを選んでいる。同一バルーンではバルーンに注入する造影剤の量によってサイズの調節が可能である。また、一方の交連部の石灰化が強い例や、MRのある例では小さいサイズで開始し、段階的拡張を試みている。

2:手技の概略 2)

  1. 内頚静脈を穿刺しSwan-Ganzカテーテルを留置する。
  2. 大腿動脈を穿刺し5F-ピッグテールカテーテルを左心室に挿入する。
  3. 大腿静脈を穿刺し、心房中隔穿刺(Brockenbrought法)を行い、カテーテルを左房に挿入する。
  4. ヘパリンを150U/kg投与し、左房左室同時圧と心拍出量を同時に記録する。
  5. ガイドワイヤーに沿ってバルーンを左房内に進め、スタイレットを用いてバルーンを僧帽弁口を通し左室内に挿入する。
  6. バルーンの先端側半分を希釈造影剤で膨張させて、これを引き寄せるとストッパー様に働き、狭窄弁口に固定される。この位置でバルーンを完全に膨張させると、膨張途中でバルーン中央部のくびれが自動的に弁口部にはまり込み、バルーンは滑脱することなく弁口を拡大する。

    A:バルーン先端半分を拡張し、左室から引き抜き僧帽弁口に固定させる。
    B:バルーンが弁に固定すると即座にバルーンを拡張する。
    C:拡張最後にひょうたん型のバルーンのくびれ部分がなくなり、交連部が裂開する。

  7. 拡張操作終了後、バルーンカテーテルを左房内に戻し、左房左室同時圧と心拍出量を同時に記録する。さらに、心エコー検査で交連部裂開の程度と、僧帽弁逆流の程度を評価する。(これらの結果で、サイズアップして再拡張を行うかもしくは終了するかを判断する。)

Point
PTMCではバルーンカテーテルを大腿静脈より経心房中隔的に僧帽弁口に到達させるため、心房中隔の穿刺部位は大変重要であり、その場所によってはバルーンカテーテルを僧帽弁口へ挿入する操作が極めて困難になる。このため、通常右房造影を施行し、至適な穿刺部位をあらかじめ認識しておくことが必要となる。タンポナーデを合併しやすい穿刺部位としては①coronary sinus,②左房造影の外側縁近辺,③大動脈,などがある。

3:どこで拡張を終了するかの判断

 バルーン拡張毎に左房左室圧較差を測定し改善度を検討すると同時に、心エコーで交連部の裂開の程度とMRの有無を観察する。交連部の裂開が良好で圧較差がなくなれば良いが、圧較差が残存する場合もある。更なる拡張を行うかどうかに関しては、心エコーでの弁の状態の評価が最も重要になる。石灰化や線維化の強い交連は裂開困難で、特に一方だけ癒合が強い場合は、他方(軟らかい側)の交連が最大に拡大した時点で、手技を終了しなければならない。この時点で拡張不十分でもそれ以上の拡張は交連の過裂開を招き、重症MRを生じる危険性が高い。
症例A(図4)は、1回目の拡張後のエコーではまだ交連部に余裕があり、MRは全く認めなかったため、サイズをあげて拡張を行い、合計4回の拡張後に交連部が拡大し、充分な拡大が得られたと判断し、さらに弁の一部にややエコー輝度の低い場所があり、これ以上の拡大では弁裂開の危険性も考え、4回の拡張で終了した。Gorlinの式による弁口面積(MVA)は1.0㎠から1.9 ㎠に拡大し、平均左房圧は27mmHgから19 mmHgに平均圧較差は15mmHgから6 mmHgに改善した。心エコーではMVAは0.9㎠から1.7㎠に拡大し、術後MRの増加も認めなかった。

図4:PTMC施行中

2回拡大後(図左)さらなる拡大可能と判断し、更に拡大し4回拡大後(中)は充分拡大し、弁に輝度の低いところがありこれ以上の拡大は危険と判断した。MRは認めなかった(右)

一方、症例B(図5)は術前MVA0.9㎠,でMRは認めていなかった。1回の拡大後の心エコーで、すでに後交連は十分拡大していたにも拘わらず圧較差が残存したため、さらなる拡大をしたところ重症MRをきたした。圧較差が残り、MVAが拡張不十分でも一方の交連に拡大余裕がなくなったら時点で中止しなければならない。

MR症例

[術前(写真1)]MR殆ど認めず。
(写真2)1回拡大後 前交連側は裂開できていないが、後交連側は十分開き
(写真3)斜め短軸にすると弁輪に余裕がない事がよくわかる
更なる拡張で、前交連側も拡大した(写真4)が、後交連側は弁輪が過拡大し重症MRが生じた(写真5)。

Point
術中は患者は仰臥位のままであり、心エコー検査に至適な体位がとれないので、良好な画像を描出するのがやや困難であるが、短軸での交連部の状態(斜めの短軸で各々の交連部が良く観察される)、MRの噴出し部位を1回毎の変化に注意しながら検査を行う事が重要である。


PTMCの初期成績および合併症

 井上は、熟達した術者が施行すればPTMCの技術的成功率は98%以上と報告している。不成功の原因は、主に心房中隔穿刺の失敗、心房中隔穿刺に起因する心タンポナーデ合併による手技の中止、バルーンカテーテルの僧帽弁口への挿入の失敗であり、そのほとんどがPTMCの初期または不慣れな術者によるものであったとしている。
合併症について、井上は、重症MRの発生 2.5%、心タンポナーデ 1.1%、塞栓症 0.3% 3)、Chenら重症MRの発生 1.41%、心タンポナーデ 0.81%、塞栓症 0.48%と報告している4)。
Herrmannらは、重症MR発生の原因について、腱索断裂、弁の縦方向への裂開、交連部の過拡張という3つが主な機序と報告している5)。術後に心房中隔欠損残存を認めることがあるが、ほとんどの場合が軽度であるため臨牀的に問題となることは少なく、さらに大半の例で次第に縮小していくことが知られている。

PTMCの長期予後

 PTMCの予後に関しては、良好な初期成績が得られれば、再狭窄率も低く良好な長期成績が得られるとされている。Saekiらの報告では、PTMC後のMVAにより3群(Group1:MVA >2.0cm2 Group2: >1.5cm,≦2.0cm2 Group3: ≦1.5cm2)に分けて7年間の長期成績を検討しているが、他の2群に比べてGroup3はEvent-free survival rateが有意に低く、再狭窄率が有意に高かった。また、Hernandezらは、術後のMVAとMRの程度が長期予後を左右すると報告している。

以下に当院での成績を提示する。
1987年3月から2003年12月までに倉敷中央病院循環器内科で施行したPTMC症例193例での成績をまとめた。症例は、男性63例、女性130例、平均年齢57.6±11.2歳であった。
患者成功を1)MVAが1.5㎠以上に拡大、あるいは2)PTMC前のMVAの1.5倍以上に拡大し、かつ重症の僧帽弁逆流がないものと定義すると170/193(88.1%)の成功率であった。合併症として重症MRの発生 1.6%、心タンポナーデ 0.5%を認めたが塞栓症は認めなかった。交連部の過拡大による2例、弁の裂開による1例計3例の重症MRを経験し、1例は緊急手術、2例は待機的手術を要した。また、PTMC後17例で、中等度へのMRの増強を認めたが、5例は数日後のエコー検査時には軽度の逆流に改善していた。12例は中等度で経過し、この内5例は慢性期(1から5年後)に弁置換を施行した。
患者成功であった170例について1年、5年、10年後の予後を検討した。観察可能であった症例は、1年後149例、5年後124例、10年後98例であった。このうち心エコーが実施できたのは1年後125例、5年後74例、10年後46例であった。
心エコーで求めたMVAは、2D法、ドプラ法ともにPTMC前1.0㎠が後には1.6㎠と拡大し、その後は若干狭窄をきたすものの、10年後でも1.5-1.6㎠と拡大が維持されていた。特に良好に拡張した例(MVA>1.5㎠)のおいてはその弁口面積はPTMC前の1.0㎠からPTMC後には1.8㎠と拡大し、その後は10年後でも1.6-1.7㎠と良好に拡大が維持されていた(図6)。

図6:Mitral Valve Area

Mitral Valve Area

PTMC成功後の生存率は1年後99.3%、5年後93.5%、10年後86.7%であった。PTMC後の総死亡、僧帽弁置換術,再PTMC施行、入院を要する心不全の出現をEVENTと定義し検討してみると、event freeの生存率は1年後98.7%、5年後78.9%、10年後61.2%であった(図7)。

図7:Follow up   (after successful PTMC)

Follow up   (after successful PTMC)

各々をPTMC後のMVA>1.5㎠群(2D法、ドプラ法いずれかで)とMVA≦1.5㎠群(2D法、ドプラ法いずれもで)で比較すると、MVA>1.5㎠群では生存率は1年後100%、5年後96.5%、10年後93.8%、event freeの生存率は1年後100%、5年後88.4%、10年後82.2%であった。MVA≦1.5㎠群(生存率:1年後97.6%、5年後86.8%、10年後72.2%、event free生存率:1年後95.1%、5年後55.3%、10年後27.3%)に比し有意に予後良好であった(図8)。

図8:Follow up   (after successful PTMC)

Follow up   (after successful PTMC)

Eventの内訳を表4に示した。PTMC拡張不良群に関しては、event発生率が高く、特に慎重に心エコーで経過観察を行い弁置換の時期の判断を含めた適切な治療を行わなければならないと考えられた。
以上の結果より、PTMCで良好な拡張が得られた例は、1年、5年、10年後の僧帽弁口面積が良好に保たれ、予後も良好であり、手術成績(10年後Event free 87.0%)8)と差がなかった。PTMCの患者成功の定義をMVA1.5㎠以上か、前のMVAの1.5倍の拡大ができたものとしているが、MVAの小さな群では長期的には多くのeventが生じている事を加味すると、MVA1.5㎠以上になることをPTMCの目標とすべきで、MVA1.5㎠以上にならなかった症例に対しては適切な追加処置が必要であると考えられた。そして、長期予後を検討した上でさらに、術前心エコー診断でのPTMCの適応診断の正確さが要求されると考えられた。

表4:Events (after successful PTMC)

•Death  16 cardiac death 7
•MVR  13
DVR : 3 (ASの増悪による)
MR:5(内1例は感染性心内膜炎による)
•Repeat PTMC 4
•CHF  7

監修 :福 康志(医師)

文献
1. Wilkins GT, Weyman AE, Abascal VM, et al.  Percutaneous balloon dilatation of the mitral valve: an analysis of echocardiographic variables related to outcome and the mechanism of dilatation. Br Heart J 60: 299-308, 1988
2. 井上寛治:カテーテル治療はどこまで手術に変わりうるか? 経皮経静脈僧帽弁交連裂開術について. 胸部外科42: 596-602, 1989
3. 井上寛治:バルーンによる経皮的弁形成術 「心臓弁膜症の外科」(新井達太 編)
医学書院 537-546
4. Chen CR, Cheng TO: Percutaneous balloon mitral valvuloplasty by the Inoue technique: a multicenter study of 4832 patients in China. Am Heart J 129: 1197-1202, 1995
5. Herrmann HC, LIMA JAC, Feldman T, et al. Mechanisms and outcome of severe mitral regurgitation after Inoue balloon valvuloplasty. J Am Coll Cardiol 27: 783-789, 1993
6. Saeki F, Ishizaka Y, Tamura T.  Long-term clinical and echocardiographic outcome in patients with mitral stenosis treated with percutaneous transvenous mitral commissurotomy. Jpn Circ J 63: 597-604, 1999
7. Hernandez R, Banuelos C, Alfonso F, et al. Long-term clinical and echocardiographic follow-up after percutaneous mitral valvuloplasty with the Inoue balloon. Circulation 99: 1580-1586, 1999
8. ChoudharySK, Dhareshwar J Govil A,AiranB, et al. Open mitral commmicurotomy in the current era :indications,technique,and results. Ann Thorac Surg. 2003 Jan;75(1):41-6

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