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診療案内[get_image]
心臓病とその他循環器疾患

腎動脈狭窄症の治療

腎動脈狭窄症治療の傾向

 腎動脈の狭窄を解除する方法として、〔血管外科による手術〕とカテーテルによる〔ふうせん拡張術(経皮的腎動脈拡張術)+ステント留置術〕の2つがあります。カテーテル治療の成績が手術と変わらないこと、むしろ低侵襲で合併症の少ないことから、現在ではカテーテル治療が主流になっています。
しかし、腎動脈の狭窄が高度であっても全ての患者さんの腎動脈を治療するわけではありません。一時期、腎動脈狭窄症に対してさかんに腎動脈拡張術+ステント留置術が行われた時期がありましたが、数年前にそのような治療を行ってもあまり効果がないという臨床研究が報告され、現在ではいくつかの条件を満たす症例に限って治療を行っています。

腎動脈狭窄症に対するステント留置術の適応

 まず、高度の狭窄があることが前提条件です。そのうえで、最近血圧が急上昇してきた場合、比較的少量の降圧剤で血圧が安定していたのに急にコントロールが困難となった場合、急に腎機能が悪化した場合、誘因無く心不全の急な悪化を繰り返す場合などは、腎動脈狭窄がその原因である可能性が高いと考えられ、狭窄部の拡張とステント留置を行います。
逆に、血圧がゆっくり上昇してきた場合、腎機能の悪化が慢性に徐々に進行している場合、腎臓が小さくなっている場合などは、たとえ腎動脈の狭窄が高度であっても、治療効果があまり期待できません。腎動脈の狭窄の原因となった動脈硬化が起きるためには、高血圧、糖尿病など動脈硬化を起こしやすい疾患が長い年月持続していなくてはなりません。そのため、腎臓自体の障害が腎動脈の狭窄とは無関係に進んでおり、腎動脈の狭窄を解除しても血圧の低下、腎機能の改善が得られないものと考えられています。

腎動脈ステント留置術

 当院では原則として、大腿動脈(足のつけねにある動脈)から直径2mmのカテーテルを挿入し、まず腎動脈を造影します。その後、カテーテルを通して細くやわらかいガイドワイヤーを腎動脈の中に挿入します。引き続き、血管内超音波で血管の直径、狭窄の程度を測定し、高度の狭窄があればふうせんで拡張し、ステントを留置します。通常は、直径5〜6mmで長さが15〜18mmのステント一個を留置します。
治療後1ヶ月間は、アスピリンを含む2種類の抗血小板剤を服用してもらいますが、1ヶ月を過ぎるとアスピリンだけに減量し、副作用のない限り長期間継続してもらいます。前述した、若い人に多い線維筋性異形成症の場合は、ステントを使わないふうせん治療だけで再狭窄が少ないとされていますので、ステントを使用しないようにしています。
下肢の血管が閉塞していたり、細かったりして上記方法が不可能であれば、肘(上腕動脈)、手首(撓骨動脈)から治療することもあります。この方法の利点は、治療直後から歩行できる点ですが、一方で腎動脈にカテーテルを進めるためには首の動脈を通過させなくてはならず、脳卒中を合併する可能性があることが大きな欠点と考えています。また、腎動脈までの距離が長い分、若干デバイス(カテーテルやガイドワイヤーなど治療に使うもの)操作が困難とも言われています。

腎動脈狭窄症のバルーン治療(経皮的腎動脈形成術)・ステント治療の流れ

1.腎動脈造影(右腎臓)
腎動脈入り口が狭くなっているのがわかります(左写真矢印部分)。
血管内超音波で血管の直径、狭窄の程度を測定します。

2.バルーン拡張
狭窄部分をバルーンで拡張します。その後、ステントを留置し再狭窄を予防します。

3.治療後の造影
バルーン拡張+ステント留置後の造影です。狭かった血管もしっかり広がっています。

腎動脈ステント留置術の合併症

 造影剤などの薬剤に対するアレルギー反応で発疹がでたり、ひどい場合にはアナフィラキシーショックという血圧低下、呼吸困難などの重篤な副作用が起きたりすることがあります。カテーテルを挿入した動脈からの出血や、血管に傷がついて閉塞したりすることも報告されています。造影剤の悪影響、カテーテルやふうせん治療による動脈硬化を起こしている場所からのコレステロールの末梢塞栓症によって、治療後腎機能が悪化することがあります。治療器具によって腎動脈からの出血、血管に傷がつくことによる動脈解離もわずかですが起きる可能性があります。上肢からの治療の場合、脳卒中を合併することもあります。このように、100%安全な治療ではありませんので、細くなった腎動脈を拡張するメリットがあるかないか、患者さん毎に詳しく検討したうえで、治療方針を決めています。

当院での腎動脈狭窄症治療の現況

 右の表は、当院で2005〜2010年に腎動脈狭窄症に対するふうせん治療(ステント留置を含む)を行った人の数です。冠動脈のふうせん治療で拡張できなかった症例は、56例中2例(3.5%)、合併症として腎動脈損傷による腎臓への出血:2例、腎動脈解離:1例、大動脈解離:1例、脳卒中:1例、コレステロール塞栓症:2例の7例(12.5%)でした。多くの合併症は、そのまま経過観察することで回復し、腎動脈の治療後、緊急手術となったり、合併症が原因で死亡した人はいませんでした。また、使用器具の進歩や治療方法の習熟により、2009年以降の合併症はコレステロール塞栓症の1例のみとなりました。
治療効果の判定は難しいのですが、明らかに、血圧が正常化もしくは降圧剤を減らすことができたのは3~4割、治療後半年間に血圧、腎機能に明らかな変化が見られなかった症例が5割、治療後腎機能の悪化を認めた症例が約1割でした。適応の項目でふれたように、比較的若年者や、高齢者でも治療の前に急に血圧が高くなったりした人は効果が期待できますが、慢性に徐々に血圧のあがってきた高齢者では、効果が期待できない事が多いようです。

年度 治療した人数
2005年 5人
2006年 6人
2007年 8人
2008年 8人
2009年 15人
2010年 14人
合計 56人

最後に

 最近急に血圧が上がったり、腎機能が悪くなった場合、腎動脈狭窄症がその原因である可能性があります。腎動脈の治療をすることで回復する可能性がありますので、かかりつけの先生と相談して専門医を受診してください。まずは、外来でできる簡単な検査でスクリーニングし、腎動脈に狭窄があるか、どの程度か、治療効果が期待できるかを調べます。腎動脈の狭窄が強く疑われ、治療効果が期待できる場合には治療を前提に入院していただきます。治療は局所麻酔で約1-2時間かかります。半日のベッド上安静と、1泊2日から2泊3日の入院が必要となります。

監修 :後藤 剛(医師)

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