関節リウマチは日本の60 歳以上の100 人に1 人が罹患しているとされる「ありふれた疾患」です。近年、強力な治療薬が使われるようになり、関節リウマチの痛みや障害を大きく改善することができるようになっています。
新しい治療を有効に活かすには、早期発見・治療が必要です。
このページでは倉敷中央病院の整形外科主任部長でリウマチセンター長も務める伊藤宣先生が、関節リウマチの解説をはじめ、診断や治療などについて紹介します。
どんな病気ですか?
関節は骨と骨の間のつなぎ目のところですね。構造は下図のようになっていますが、滑膜に炎症が起こって関節が壊れていく病気です。関節の痛みや腫れ、起床したときに手や指が思ったように動かせない「こわばり」が主な症状です。治療をしなければ関節が変形することもあります。関節リウマチの英語表記はrheumatoid arthritisで、略してRAと言われることがあります。
特徴は?
発症年齢は20~80歳で40~50歳代がピークとされていましたが、現在我が国の発症年齢の中心は60歳代です。関節リウマチは日本の60歳以上の100人に1人が罹患しているとされる「ありふれた疾患」です。リウマチ患者さんの4人に3人は女性というように、女性に多い疾患です。
どのように診断しますか?
国際学会が2010年に発表した右の基準を用います。10点満点で6点あればリウマチと判断されます。
10点のうち5点は腫れのある関節の数(腫脹関節数)で、腫れている関節の数が多ければ最高で5点となります。一方で大関節は数が多くても1点にしかなりません。小さな関節が侵される関節リウマチの特徴が、診断にも反映されています。
腫れの数だけではなく、血液検査も大切です。リウマトイド因子と抗CCP抗体の2つの値のいずれかが陽性だと2点、さらに高値だと3点です。ほかには罹病期間なども含めて総合的に考慮して診断します。
ただ、実際の診断では6点以上でもリウマチではない場合もあれば、5点以下でもリウマチと診断するケースがあります。診断は難しく、専門医の診察が望ましいです。
リウマチはどのように進行しますか?
炎症反応は強くなったり弱くなったりを繰り返します。歩きにくくなったり手が使いにくくなったりという機能障害は、関節破壊の進行とともに強くなっていきます。機能障害の進行を抑えるには、関節破壊を止めなければなりません。
関節破壊を止めるための治療はどのように進めますか?
残念ですが、ほとんどのケースでリウマチは治癒しません。白血病の治療から生まれた概念である「寛解」を目指します。そして、寛解、もしくは病気の強さが低い状態を維持することが目標になります。
寛解を詳しく教えてください
リウマチの場合、まず一つは臨床的寛解です。痛みや腫れなどの症状を良くすることを目指します。もう一つは関節破壊の進行を抑える、もしくは、なるべくゆっくり進行させるという画像的寛解です。次の機能的寛解は、日常生活がしにくくならないように進行を抑えることです。最終的には余命の延長です。リウマチは寿命が短いことが知られています。これを長くすることを目指します。
治療の内容は?
前提として、間違った情報ではなく正しい知識で治療に臨んでいただくことが大切です。そのうえで、寛解を目指す第一ステップは薬物治療です。最初はメトトレキサート(MTX)という薬を内服します。副作用や合併症の関係で服用できない方は他の薬を考慮しますが、治療の中心はMTXで、6か月以内の寛解を目指します。MTXで寛解しない場合は、注射薬の生物化学的製剤、もしくは内服薬のJAK阻害薬を使い、それでも効果が見られない場合はMTXを併用したり、効果がない場合は別の薬を使ったりして寛解を目指します。薬の投与は副作用を含めた安全性にも十分な注意が必要です。
薬以外の治療法はありますか?
薬物治療で寛解が難しい場合は、保存的治療を検討します。保存的治療は主にリハビリテーション治療と関節内注射です。リウマチ患者さんにとって、運動療法はとても大切です。機能回復や病気そのものが良くなったり、痛みが抑えられたりするという効果も期待できます。それでも効果が得られなければ、手術を検討します。手術は膝関節や股関節、肘関節などを人工関節に置き換える治療がよく行われています。
リウマチは遺伝しますか?
ある研究で、遺伝子が全く一緒の一卵性双生児の方で、双子の1人がリウマチの場合、双子のもう1人はリウマチかどうかが調べられました。海外は12~15%でしたが、日本は8.5%です。遺伝子が全く一緒なことを考えると、遺伝の要素はあるかもしれませんが、それほど高くはないと言えます。
倉中ではリウマチセンターを開設していますね
関節リウマチの集学的な治療を実践するために2023年に設立しました。院内の各診療科、近隣の各病院、学会や官公庁などと協力して包括的な診療をすることが目的です。詳しくは下記リンクより、紹介ページをご参照ください。
整形外科 主任部長
リウマチセンター センター長
専門領域
関節リウマチ、全身の変形性関節症、足の外科
専門医等の資格
●日本専門医機構認定整形外科専門医
●日本リウマチ学会専門医
●日本リハビリテーション医学会専門医
(2024年6月27日公開)