めまいは自分やまわりがぐるぐる回る、ふわふわしている、気が遠くなりそうな感じ、物が二重に見える、吐き気がするなどの症状が含まれます。原因はさまざまで、良性発作性頭位めまい症やメニエール病をはじめとする末梢性めまい、脳梗塞や脊髄小脳変性症などに起因する中枢性めまい、ほかにも深部知覚障害に起因するめまいや心因性めまいなど多岐にわたります。
脳梗塞、心臓病、高血圧、糖尿病といった生活習慣病とも関連が深い「めまい」について、このページでは、2024年8月21日に倉敷中央病院の市民公開講座「倉中医療のつどい」で当院耳鼻咽喉科医長の木村俊哉先生が講演された内容の中から、めまいの原因や入院が必要な症状などについて紹介します。
患者数はどのくらい?
日本は平均寿命の延びが急速に進み、2007年以降、4人に1人以上が65歳以上の超高齢社会を迎えています。厚生労働省の2022年国民生活基礎調査によると、めまいの患者数は年齢とともに増加し、全体の有訴者率は20.3%、65歳以上では30.0%と報告されています。
身体のバランスを保つための平衡感覚
図にある前庭器は平衡感覚をつかさどる器官で、皆さんが聞き覚えのある三半規管をはじめ、重力などを感じ取る耳石器などで構成されています。手足の動作や姿勢を把握する固有知覚や、視覚と前庭器で得た情報を中枢神経(小脳)で処理をし、最後に手や足などの筋肉に指令送るようになっています。
平衡維持のメカニズムのうち、耳鼻咽喉科の領域となる前庭器に障害が出ると前庭神経炎やメニエール病、真珠腫などの耳の病気を発症して、平衡感覚が失われます。症状としては、回転性のぐるぐる回るようなめまいが起きて、立っているのもしんどくなる状態です。
さらに、脳梗塞や糖尿病、高血圧、心臓病という、いわゆる生活習慣病と呼ばれる病気も平衡感覚に影響を及ぼします。
脳梗塞を発症すると中枢神経が障害され、回転性のめまいや浮動感など、いろいろなめまいが起きます。
糖尿病では手や足、足の裏の感覚など末梢神経の障害が起きます。感覚の低下に伴ってふらつきも起きやすいと言われます。糖尿病の患者さんは筋力が落ちることで、ふらつくこともあります。
心臓病は体の隅々に血液を送る力が落ちるため、どこが障害されてもおかしくはないという状態になります。
めまいの性質や状態は?
ぐるぐる回る「回転性めまい」、吐き気の「嘔気」、ふわふわしている「浮動感」、気が遠くなりそうな感じがする「前失神」、物が二重に見える「複視」などが挙げられます。
めまいの原因は?
①耳性(末梢性)
耳からくるめまいで、末梢性は②の中枢性と対比する言葉です。耳性では良性発作性頭位めまい症(BPPV)の患者さんが一番多いです。ほかにはメニエール病、急性期の病気の前庭神経炎、手術も検討される真珠腫性中耳炎などがあります。
②中枢性
脳梗塞や脊髄小脳変性症、小脳梗塞などです。命に関わる病気で、中枢性の病気の診断はとても大事です。
③深部知覚障害
糖尿病
④循環障害
心疾患や貧血など、血流が悪くなるとめまいやふらつきが生じます。
⑤血圧異常
血圧が高過ぎても、低すぎてもいけません。血圧が十分に高くないと、起立性低血圧あるいは起立性調節障害という、いわゆる立ち眩みが生じます。血圧が高過ぎると脳への血流が不安定になるため、同様に立ち眩みのような症状が起きます。
ほかにもさまざまな原因がありますが、①の耳性については中編で紹介します。
めまいで入院になることはありますか?
耳性(末梢性)と中枢性については下の図になります。
耳性(末梢性)のめまいでは帰宅できない場合を除いて、入院することはありません。耳性のめまいは、ちょっと時間をおけば帰宅できることがほとんどですので、自宅で様子を見て外来受診いただくのが一般的です。
前庭神経炎は帰宅しても大丈夫ですが、一日中めまいが続くため、帰宅が困難で入院いただくことがしばしばあります。メニエール病の発作は長くても6時間ですので、症状が落ち着いた段階で帰宅となります。患者さんが最も多い良性発作性頭位めまい症(BPPV)は、投薬もなく診断後に帰宅いただける病気です。
中編では、①の耳性のめまいについて解説します。
また、倉敷中央病院広報室のYouTubeチャンネルでは、2024年8月21日に木村先生が「めまい」をテーマに解説した市民公開講座の動画を公開しております。WEBページに収まらなかった内容もありますので、下記のリンクバナーをクリックしてぜひご覧ください。
倉敷中央病院 耳鼻咽喉科・頭頸部外科 医長
専門領域
めまい
専門医等の資格
●日本専門医機構認定耳鼻咽喉科専門医
●日本めまい平衡医学会認定めまい相談医
●耳鼻咽喉科専門研修指導医
(2024年10月21日公開)