日本人の死因は「がん」が最多ですが、次いで「心疾患」、4番目が「脳血管疾患」となっており、血管に関する病気は死因の大きな割合を占めています。これらの病気の主な根源となるのが、動脈硬化です。
2026年4月16日に倉敷中央病院の市民公開講座「倉中医療のつどい」では、心臓血管外科の小宮達彦副院長が「血管を守る2」と題して講演を行いました。日々多くの患者さんの手術を執刀する心臓血管外科医の視点から、血管の構造や動脈硬化が進むメカニズムなどについて紹介します。
血管の構造
体をめぐる動脈は、役割の異なる3つの層が重なり、それぞれの機能を持っています。
●内膜(一番内側): 血液と直接触れる「内皮細胞」が敷き詰められた層。血液が固まらないように調整するほか、酸素や栄養分のやり取りを担う。
●中膜(真ん中):弾性繊維と筋肉とでできた、血管の厚みの大部分を占める層。心臓の拍動に合わせて血管を広げたり細くしたりして血流を調整する。
●外膜(一番外側): 血管自体を保護し、周囲の組織に固定します。血管そのものに栄養を送る「栄養血管」も存在します。

動脈硬化は、この「内膜」に傷がつくことから始まります。高血圧や喫煙、高血糖、ストレスなどが原因で内膜に傷がつくと、そこから血液中のLDL(悪玉コレステロール)が内膜の下へと侵入します。

【あわせて読みたい】動脈硬化が招く「怖い病気」について
動脈硬化が進行して起こる心筋梗塞、脳梗塞、閉塞性動脈硬化症、および命に関わる「動脈瘤」や「大動脈解離」の詳細については、前回2025年2月の「血管を守る」の講演内容をまとめた記事(血管を守る・前編)で詳しく解説しています。
酸化LDL
LDLコレステロールは本来、細胞壁やホルモンの原料を運ぶ大切な役割を担っていますが、内膜に潜り込んで活性酸素などによって酸化されると、「酸化LDL」に変貌します。これを異物とみなした白血球(マクロファージ)が次々と取り込みますが、取り込みすぎたこれらの細胞はやがて死骸となって血管の壁に溜まります。これが脂肪の塊である「プラーク」です。プラークが大きくなれば血管は狭くなり、表面が破れて血の塊である血栓ができると血管を詰まらせ、心筋梗塞や脳梗塞を引き起こすことにつながります。
重要な「L/H比」
健康診断ではLDLの数値だけではなく、HDL(善玉コレステロール)とのバランスを示す「L/H比」も大切です。HDLは血管に溜まった余分なコレステロールを回収して肝臓に戻します。L/H比はLDL(悪玉)÷ HDL(善玉)で、目安として下記のような指標があります。

たとえLDLが基準値内(140mg/dL未満)であっても、HDLが低ければ回収が追いつかず、血管内は汚れやすくなります。「LDLは120だから大丈夫」と思っていても、HDLが40であれば比率は3.0で要注意です。ご自身の数値で一度計算してみることをお勧めします。
後編では、動脈硬化を未然に防ぐために実践できる食事の工夫や効果的な運動などについて紹介します。
このページの内容は令和8年4月16日時点の情報に基づき、情報提供のみを目的として制作されています。原因や症状、治療法などは個人差がありますので、ご自身への適応については必ずお近くの医療機関、または、かかりつけ医にご相談ください。
小宮 達彦倉敷中央病院 副院長、心臓血管外科前主任部長
専門領域
心臓血管外科(虚血性心疾患、弁膜症、大血管、先天性心疾患)
専門医等の資格
●日本外科学会専門医、指導医
●日本胸部外科学会指導医
●心臓血管外科専門医認定機構 心臓血管外科専門医、修練指導者
●臨床修練指導医
(2026年5月1日公開)
