日本人の死因は「がん」が最多ですが、次いで「心疾患」、4番目が「脳血管疾患」となっており、血管に関する病気は死因の大きな割合を占めています。これらの病気の主な根源となるのが、動脈硬化です。
2026年4月16日に倉敷中央病院の市民公開講座「倉中医療のつどい」では、心臓血管外科の小宮達彦副院長が「血管を守る2」と題して講演を行いました。日々多くの患者さんの手術を執刀する心臓血管外科医の視点から、動脈硬化を未然に防ぐために実践できる食事の工夫や効果的な運動など小宮先生ご自身の体験談を交えて紹介します。
「普通預金」の内臓脂肪をいかに減らすか
血管の健康を阻む大きな要因の一つが肥満です。小宮医師は、脂肪を「預金」に例えてそのリスクを解説しました。
●皮下脂肪(定期預金): お腹の肉を指でつまめる脂肪です。飢餓に備えて蓄えられるもので、簡単には引き出せませんが、血管への直接的な害は比較的穏やかです。
●内臓脂肪(普通預金): つまむことができない、内臓の周りについた脂肪です。出し入れが激しいのが特徴ですが、溜まりすぎると血管に悪影響を及ぼすホルモンを放出し、ダイレクトに血管を傷めつけたり、糖尿病のリスクを高めたりします。
「普通預金」である内臓脂肪は、個人差はありますが、日々の食事の選択と有酸素運動によって比較的早く減らすことができます。まずは標準体重を知り、そこに近づける努力が血管を守る第一歩となります。

トランス脂肪酸と油の選び方
小宮医師が「特に意識してほしい」と語ったのが、加工食品に多く含まれるトランス脂肪酸です。
●トランス脂肪酸: マーガリンや菓子パン、スナック菓子などに含まれます。悪玉(LDL)を増やし善玉(HDL)を下げる働きがあるため、血管の健康を損なうリスクがあります。欧米では規制が進んでいますが、日本では個人個人が意識して選択することが大切です。
●油を変える「3点セット」:
1. 調理に使う油を、サラダ油(オメガ6系)から菜種油やオリーブ油(オメガ9系)へ切り替える。
2. 揚げ物や加工食品を食べる頻度を、これまでの半分程度に減らす。
3. サバやイワシなどの青魚(オメガ3系)を週2〜3回摂取する。
これらを意識するだけでも、血管への負担を大きく減らすことができます。
【あわせて読みたい】食事療法の基本(減塩と食物繊維)
血管を守るための「減塩のコツ」や「食物繊維」の効果については、前回2025年2月の「血管を守る」の講演内容をまとめた記事(血管を守る・後編)で詳しく解説しています。
お酒の付き合い方と「ゼロ」の過信に注意
アルコールは肝臓で優先的に分解されるため、その過程で中性脂肪が増加するなど脂質代謝に変化が生じ、血管に影響を及ぼす可能性があります。また、代謝の過程で生じる物質が血管への酸化ストレスを高め、動脈硬化の一因となることもあります。
特に注意したいのが「カロリーゼロ」などの表記です。法律上、ごく微量の熱量であれば「ゼロ」と表記できてしまうため、アルコールが含まれている以上、実際には相応の熱量が存在します。安易な過信はせず、適量を守ることが大切です。
心臓血管外科医からのメッセージ
運動に関しては、激しすぎる運動(無酸素運動)よりも、酸素を取り入れながら長時間続ける有酸素運動が、効率よく脂肪を燃やし、血管を守る有効な方法の一つです。小宮医師は自身の趣味のサイクリングで、「しまなみ海道」を往復(約100km)し、一度の走行で約2,437kcal(ご飯約10杯分)を消費したエピソードを紹介しました。

小宮医師は「ここまでのハードな運動は必要ありません。景色を楽しみながら、『誰かとおしゃべりができる程度の負荷』で、無理なく続けることが大切です。夫婦での散歩や、趣味を楽しみながらの運動は、ストレス解消にもなり、心身ともに血管を守ってくれます。外科手術は最後の手段です。手術にならないように血管を若々しく保つことこそが、健康長寿につながります」と締めくくりました。
このページの内容は令和8年4月16日時点の情報に基づき、情報提供のみを目的として制作されています。原因や症状、治療法などは個人差がありますので、ご自身への適応については必ずお近くの医療機関、または、かかりつけ医にご相談ください。
小宮 達彦倉敷中央病院 副院長、心臓血管外科前主任部長
専門領域
心臓血管外科(虚血性心疾患、弁膜症、大血管、先天性心疾患)
専門医等の資格
●日本外科学会専門医、指導医
●日本胸部外科学会指導医
●心臓血管外科専門医認定機構 心臓血管外科専門医、修練指導者
●臨床修練指導医
(2026年5月1日公開)
