石彫家 和泉正敏さんを偲んで

石彫家 和泉正敏さんを偲んで

イサム・ノグチ日本財団理事長の和泉正敏さんが2021年9月13日、逝去されました。
和泉さんは15歳で家業の石材業に従事、1964年、来日した世界的彫刻家イサム・ノグチと出会い、以後25年間制作パートナーとして支えた方です。

ご自身も石彫家として活躍され、当院にも患者さんの癒しの空間を彩る多くの作品があります。
当院の設計を第1棟建築から担当している有限会社ユー・アール設計 相談役 辻野純徳さんは、和泉さんと50年来のお付き合いがあり、「癒しの環境」を具現化するひとつとして、スケッチや機能の要求を付して和泉さんに制作を依頼したといいます。多くの制作依頼を抱えてお忙しいなか、患者さんの心を癒す水の流れや水音の表現に独自の工夫を加えて、小滝、噴水、せせらぎなどの作品を制作していただきました。

ご冥福をお祈りしますとともに、当院へ想いを寄せてくださったことへ感謝を込めて、その作品たちを紹介します。

セントラル・パーラーの石組み

入院患者さんのための憩いの場として設計されました。亜熱帯植物の緑あふれる温室に対し、パーラーは季節の移ろいを感じていただける和の空間がコンセプト。竹林は外のセントラル庭園に続き、さざんか、しだれ桜、もみじと季節を楽しませてくれます。その一角にある石組みが和泉さんの作品。「命が湧き出る泉を」というリクエストをかなえてくださいました。セントラル・パーラーに静かな水音が響き、患者さんのお気持ちを癒します。

9棟地下の小滝

9棟地下、カテーテル治療を終えた方のリカバリースペースの中庭に設けられています。吹き抜け(右写真は上を見上げた様子)の構造をとっており、地下でも自然光が降り注ぐ明るい空間となっています。

フラワーガーデンの噴水

噴水は宮城県角田から掘出した玄武岩を使用しています。自然石を割って内面のみ加工し、静かに表面を流れる水と割れ目に迸る水しぶきが見える和泉氏独特の石彫りです。噴水の下には水琴窟の構造が取り入れられています。

いずみの広場

庵治(あじ)石を用いた石庭です。閑谷学校を模した石垣と、せせらぎとイルミネーションが美しいカスケード(小さな滝)があります。カスケードには外来温室にある噴水と同様にOHNE WASSER KEIN LEBEN(ドイツ語:水なきところに命なし)の銘文が刻まれています。「患者さんが散歩できるように植栽のない広場と豊な水の流れを」という要望をうけて設計いただいており、床面の石は太陽光の跳ね返りが少ないように和泉さんのアイデアでわずかに加工が施されています。

屋上庭園のベンチ

岡山の万成石(まんなりいし)を使用したもの。「水がたまらず、身体にやさしく、天空を映すベンチを」というリクエストに応えてくださいました。赤い紅色を帯びたなめらかな座面と石を削った質感の残る部分との対比が印象的です。

 

 

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