豪雨後はレジオネラ肺炎に注意を

豪雨後はレジオネラ肺炎に注意を

平成30年7月西日本豪雨前後の市中肺炎の患者背景や起炎菌を調査した呼吸器内科・伊藤明広先生の研究論文「Increased risk of Legionella pneumonia as community-acquired pneumonia after heavy rainfall in 2018 in west Japan」がJournal of Infection and Chemotherapyに掲載されました。

東日本大震災後に肺炎死の増加が報告されましたが、水害の前後での市中肺炎患者特性や起炎菌を調査した研究はほとんどなかったことや、実際の診療でレジオネラ肺炎患者が増加していたことから研究に着手。2013~2017年と2018年のそれぞれ7~11月の期間に、当院に市中肺炎で入院した患者の患者背景と起炎菌を調査・比較した結果、豪雨の前後で患者数と臨床的特徴に有意差はありませんでしたが、レジオネラ肺炎の頻度が豪雨後は有意に高い結果(8.9% vs 3.0%, P = 0.02)となりました。また、豪雨後のレジオネラ肺炎患者7人のうち、3人が復興作業に従事、2人が自宅土壌に曝露していました。降雨や洪水後だけでなく、復興作業や土壌曝露後のレジオネラ肺炎のリスクの増加を考慮する必要性が記されています。

この論文について、西日本豪雨を取材していたNHK岡山放送局からインタビューの依頼があり、7月6日の「ニュースウオッチ9」で取材の模様が放送されました。
伊藤先生は「豪雨後の復興作業などでは、マスクと手袋を着用することでレジオネラ肺炎の危険性を下げることができます。水害はいつどこで起きてもおかしくない状況です。医療者側も水害後はレジオネラ肺炎に留意して診療にあたる必要があります」などと述べられました。

レジオネラ肺炎
空調設備からの感染や、温泉または温浴施設入浴後の発症が多い。咳や痰は少ないが、40度近い高熱の出現、全身の関節痛や筋肉痛もみられる。肺炎だが腹痛や下痢も伴い、夏場は熱中症と間違われることもある。
不適切な治療により、急速に症状が進行して重症化する患者が多く、適切な治療を行わないと致死率が高い。
 
 

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