「理念のバトン」第2回
第2回 地域医療連携部 医療福祉相談グループ

目と耳と六感により自らを養ふて行く事も肝要な事と思ふ

地域医療連携部 医療福祉相談グループ 長瀬 紀子

私たち医療ソーシャルワーカー(以下 MSW)は医療現場の中で、生活者の視点を持ち患者さんの療養・生活に関わる社会福祉の専門職です。MSW の倫理綱領にはまず初めに「価値と原則」として人間の尊厳、という項目が明示されており「ソーシャルワーカーは、すべての人間を、(中略)かけがえのない存在として尊重する」とあります。

大原孫三郎の人生に影響を与えた石井十次(岡山孤児院の創立者、児童福祉の父と呼ばれた)の存在は社会福祉を学ぶ者にとっては欠かせない存在です。二人は人を人たるものとして、現場に入り孤児や女工の想いを聞きながら尊厳を守り自立した生活が送れるような支援をしてきました。MSWは支援を必要とする人が自らの意思で自らの人生を選択していけるよう、あらゆる社会保障制度を活用して支援をし、そのためには “面接” を基礎とし、その人の価値感や人生観に寄り添って支援をします。人に想いを寄せる点は通ずるものと、愚輩ながら感じました。

現在ではインターネットや電子カルテなど、情報収集には便利な時代となってはきましたが、だからこそ大原孫三郎と石井十次が意見を交わしお互いの熱意をじっくりと話し合い、当事者の思いを聞き、識者の意見を聞き出してきたように、MSWも患者さんやご家族のそばに寄り添い限られた時間の中で、思いやその “人となり” を自らの六感を養うことでしっかりと聞き取っていけるよう、自らの感覚をこれからも研ぎ澄ませていきたいと思います。

今までに本当にやったことのないことをやって失敗するというのが本当の人間の経験

地域医療連携部 医療福祉相談グループ 松永 唯槻

私は、孫三郎が残した言葉の中で「今までに本当にやったことのないことをやって失敗するというのが本当の人間の経験」を選びました。入職して 1 年は初めての経験ばかりで失敗することも多く、なかなかうまくいかなかったりやりがいを感じることができなかったりと悩みながらの日々を送っていました。しかしこの言葉を知って、失敗することは自分を成長させるためには必要不可欠なことなんだとあらためて実感することができました。

医療ソーシャルワーカーには患者さんの思いに寄り添いながら安心して今後の療養生活を送ることができるように一緒に考えていく役割があります。多くの患者さんと接する中で自分なりのやり方を見つけることができ、少しずつですが自身の経験が次の仕事に生きてきていると実感できるようになりました。また大学で学んだことや知識が実際の現場で生かされている場面を見ることで、さらなる学びにつながっていると感じます。

当院は急性期病院であり、「全人医療」と理念に掲げているようにさまざまな疾患や生活背景を抱えた患者さんが訪れます。そのため毎日が新鮮であり、多くの貴重な経験ができていると思います。まだまだ未熟で失敗することもありますが、これからも沢山の失敗と経験を繰り返しながら常に学ぶ姿勢を大切に仕事に励んでいけたらと思っています。

(執筆時 2020年4月)

 

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