「理念のバトン」第5回

「理念のバトン」第5回
第5回 倉敷中央看護専門学校

 

新しいことを失敗無しにやり遂げることが真の経験だ

倉敷中央看護専門学校 上野 あゆ

本校は倉敷中央病院と同じ 1923 年に設立されました。「懇切なる看護」「看護は病院の魂である」という大原孫三郎氏の当時の言葉から、氏が看護の役割をどう捉えていたかがうかがえます。本校では懇切なる看護実践者を育成するために、単なる体験に終わらず意味ある経験にすることを大切にしています。一瞬の場面、個々の実践にもう一度光をあて、丁寧に振り返ることで、その意味を考え直し、より質の高い実践につなげます。

「経験というものは前のことをもう一度くりかえすことではない。まだやったことのない新しいことを、失敗なしにやり遂げることが真の経験だ」。晩年の大原孫三郎氏の言葉だそうです。ただ年月を重ね、同じことを繰り返し行い、パターンや方法を知るだけでは、二つとして同じ状況のない瞬間の判断はできません。学生は自分と他者の価値観、いのちと暮らしを守る専門職としての在り方を見つめ、何が最善で何が重要なのか、その時々の答えを見出します。 学生であっても対象とかかわる人としての責任と自覚をもち、先輩方のご指導のもと試行錯誤しながらかかわる姿は、教育する私たちにも多くの感動と学びを与えてくれます。対象や状況、時代が変わったとしても色あせることのない看護の本質は何か、そのことが学ばれていれば新しいことも(少々の失敗はありながらも)やり遂げる力がつくのではないかと感じています。

看護学校は 2020年8 月に新校舎に移転し、さらに主体的な学習を促進する場になりました。その環境の中で行われる日々の教育実践こそが理念のバトンであり、人から人に受け継がれる伝統を紡いでいくのだと実感する記念の年になりました。

現状に満足せず常に絶えず進歩し続ける人でありたいと思う

倉敷中央看護専門学校 藤原 久美子

倉敷中央病院や関連施設のあちこちで目にするこのマーク、 皆さん気に留められることがありますか。このマークは、大原孫三郎氏の父 孝四郎氏が倉敷紡績設立の際に、「満は損を招き、謙は益を招く」という「謙受説」の教えを基に考案した社章「二・三のマーク」が由来なのだそうです。私は「慢心せず、謙虚な気持ちで不断の努力をするべきだ」という意味があると理解しました。この由来を知り、孫三郎氏の「現状に満足することは退歩の第一歩である」「常に絶えず進歩する人でありたいと思う」という言葉にその精神性が継承されていると感じました。 私は看護師を経験し、現在は看護教員として、学生と看護を、教職員と看護教育について考える日々を過ごしています。学生、教職員、病院関係者の方々と仕事をしている中で、さまざまな課題や役割にひたむきに取り組まれている姿勢から、この精神性が脈々と受け継がれていることを感じ、刺激を受けながら業務にあたっています。

現在、地域包括ケアシステムの一翼を担える看護師養成のためのカリキュラム改正に向け、改めて地域特性について調べたり、教育評価を行ったりし、教育内容や方法を検討しています。変化する地域や学生のニーズに応えるためには、知識のアップデートもさることながら、視野を広げ柔軟性と創造性をもって考える必要があると実感しています。孫三郎氏が多様な事業を石井十次や児島虎二郎など、さまざまな人々から発想や支援を得ながら実現したように、立場や職種を超えて知恵や力を合わせ、を目にしては背筋を伸ばしつつ、日々前進できるよう努めていきたいと思います。

(執筆時 2020年11月)

 

倉敷中央看護専門学校
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母体である倉敷中央病院の理念を継承し、自律的に看護実践ができる人材を育成します。

 

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