大動脈疾患を分かりやすく患者さんや職員、
実習中の看護学生に説明するため
多職種がチームを組みリアルな大動脈模型を制作しました。
大動脈模型制作プロジェクトメンバー
(左から)寶口 智士さん(歯科技工士)、安達 義明さん(看護師)、平尾 慎吾先生(心臓血管外科 部長)、西村 明恵さん(歯科技工士)、高橋 孝平さん(歯科技工士)
複雑な場所だからこそ、分かりやすく伝えたい
人工血管置換術やステント術後に、手術範囲や再建・残存している分岐血管、血管を閉鎖したことで起こる合併症リスクなど患者さんや職員に説明します。正確に伝えるにはリアルな大動脈をイメージできる模型が必要でしたが市販品が見当たらず、歯科技工士の寶口 智士さんに相談しこのプロジェクトがスタートしました。心臓血管外科 平尾 慎吾先生に監修していただき、他にも心臓血管外科の先生方のアドバイスを受け歯科技工士の皆さんに作成いただき完成することができました。看護師への教育にも活用しており、病状説明や手術に対する理解が深まることを願っています。
G-ICU看護師 安達 義明
正確に伝えることの大切さ
手術の際にどの範囲の血管を人工血管に置換したか、ステントを挿入したかによって起こりうる合併症やリスクが異なるため、術後管理の方法が変わってきます。患者さんに手術した場所を正確に伝え、リスクを知っていただき、術後管理の理解を深めることでより適切な治療が行えます。また職員に対して分かりやすく情報を共有することは、安全で安楽な医療提供につながります。
①腕頭動脈、②左総頚動、③左鎖骨下動脈
人工血管置換術を行うと腕頭動脈は右脳梗塞、左総頚動脈は左脳梗塞のリスクを生じます。
④肋間動脈、⑤腰動脈
肋間動脈、腰動脈を人工血管やステントで閉塞すると脊髄虚血のリスクを生じます。
今後の展開に期待
患者さんへのインフォームドコンセントやスタッフへの情報共有、教育を行う際、対象となる大動脈の形状や部位を深く理解するには、従来のCT画像のみでは不十分でした。実物に近い模型を手に取って立体的に確認することで、より深い理解が得られるものと思われます。今後は僧帽弁・大動脈弁などの弁膜症や心筋症等の立体的な構造理解が必要な疾患・治療モデルを作成し、心臓血管外科治療全般において、医療・教育現場の一助になればと期待しています。
心臓血管外科 部長 平尾 慎吾
さまざまな場所で活用してほしい
安達さんから「大動脈模型の市販品が見つからないんです」とご相談を受けスタートしました。イラストや針金で血管の位置を確認し、手探りで作成を進めなんとか形になりホッとしています。リアルさを追求した模型を作るのではなく、使用目的や困っていることをお聞きし、伝えたいことが伝わりやすい模型作りを意識しています。多くの機会で活用していただけたらと願っています。
歯科技工士 寶口 智士、西村 明恵、高橋 孝平
歯科技工士さんのスケッチ