この少し変わった爪切り。脊髄損傷により四肢麻痺となった患者さんがリハビリに取り組まれるなかで3D CADソフト「Fusioin360」を視線で動くマウスで操作してデザインを起こし、作り出したものです。
当院で急性期治療を終えられた重傷外傷の患者さんがご自宅に戻られるまでを知ることで、より良い医療につなげたい。そんな思いで救急科 外傷チームの田村暢一朗医師が継続している会が「倉敷ERnet」です。9月5日に第12回を開催、脊髄損傷により四肢麻痺となった患者さんとのかかわりについて救急搬送、急性期病院(当院)、回復期病院、日常復帰に向けたリハビリ病院、それぞれの立場から発表しました。
急性期は患者さんの身体的問題が大きく医療者が意思を汲み取りにくいなか、看護師が患者さんを「一人の人間」として意識して行った会話は患者さんにしっかり届いており、のちのリハビリにつながっていきます。
回復期の病院では、患者さんご本人が前向きになるのを敢えて待ち、精神状況に合わせてリハビリメニューを拡大させました。気管切開チューブからの離脱により発声、食事が可能になったころから耐久性や本人の笑顔が飛躍的に増え、患者さんご本人は「他者とのつながり(会話、iPad)ができると感じられるようになったことが転換期だった」と担当セラピストが振り返りました。
日常復帰に向けたリハビリ病院へ転院されたのち、患者さんは四肢麻痺を乗り越えて電動車いすでの移動など生活機能を拡大させています。視線で動くマウスを用いてiPadや PCを使いこなし、3Dキャドを用いて設計・3Dプリンタでさまざまな製品を作り出す練習をされ、就職も視野に取り組まれています。
病院は医療者にとっては「労働の場」ですが、患者さんにとっては「生活の場」であること、医療者は「院内で生活を送る〇〇さん」として関わることの重要性が共有される会となりました。