患者さんへの想いから生まれた、MR検査室の竹の杖

患者さんへの想いから生まれた、MR検査室の竹の杖

 

普段の杖が使えない!そんな患者さんを支えたい

ご存じの方も多いと思いますが、MRI検査を受けるときは金属の持ち込みはNGです。もちろん、杖も。

当院では1日平均100件のMRI検査が行われている。うち5~10人の患者さんは杖を利用する方です(車いす患者さんは含まない)。歩行に不安がある方は診療放射線技師や看護師等のスタッフが横に並びサポートなどしてますが、ご本人が「自身で歩きたい」という思いを持たれていることもあります。何か、歩行支援ツールが作れないかー。

当院には医療イノベーション推進室という部署があります。院内にあるニーズを掘り起こし、新たな製品を生み出したい企業へ橋渡しをしており、毎年、各部門にヒアリングをします。MR検査室スタッフから、その場で提案をしました。
MR検査室用の歩行支援ツールが検討されるなか、患者さんご自身の「歩きたい」想いに寄り添え、高価すぎず、かつ安全な歩行を支援できるもの、として考えられたのが「杖」でした。当時、ネットで検索すると、MR検査室で使用可能な杖が見つかりませんでした。その杖を作ることができる可能性に思い至ったのが、診療放射線技師の渡辺。「真備のためにと起業して竹製品を扱っている友人がいる」と、医療イノベーション推進室に株式会社バウンスバック 亀鷹皓平社長を推薦しました。

真備は、2018年に洪水被害にあった地。「病院に助けていただいたので、真備の特産品で何か恩返しをしたい」という、声をいただいていたといいます。竹は真備の名産。放置竹林は土砂災害を引き起こす懸念があり、適宜伐採するなど竹林の手入れが必要だという。竹を切り活用することが真備のためになり、患者さんのためにもなる。医療イノベーション推進室は亀鷹社長に依頼しました。「私たちのニーズを、世に役立つ製品として製作し、提供いただきたい」

優しい手が竹を削り、想いをかたちに。

コラボレーションが始動。竹林から「若く、かつ杖のようにまっすぐで、徐々に太さが変わっている竹」を探すところから始まりました。待望の試作品がMR検査室に届き、早速テストするも、磁場の影響でひっぱられ不採用に…。通常、杖には支柱となる鉄が入っています。この1作目は持ち手と杖本体の連結部、杖の先の補強にわずかに鉄を使用していたのです。
「すべて竹製で」という課題を解決すべく制作された2作目は、持ち手と杖本体の連結部をそれぞれ削り出して接合し、ビスもすべて竹に変更。鉄不使用を実現し、さらに持ち手側の節の間隔が短い竹を選ぶことで手元の強度を確保しました。磁場への反応はクリアしたものの、高齢者が持つには長すぎたため、残念ながら不採用に。60歳以上の男女の平均身長から杖の長さを80cmに決定し、3作目で製品化のめどがたちました。

太すぎず軽い杖がいい。とはいえ転倒防止の杖だから、耐久性にも十分な配慮が必要。3作目のときには、強度を試すため複数の太さの杖を用意していただきました。「SG基準を満たすものにしたい」強度試験の機械を借りて、渡辺は亀鷹社長とともに複数の太さの杖を試し、適正な太さにたどり着きます。天然素材を使用しているためSGマークの取得はできませんでしたが、採用した杖はSG基準の倍の強度を持つ1本でした。

「これはええなあ、真備の竹じゃろう!」「わかりますか?」
杖を目にした患者さんとの会話も生まれました。皆さん、リラックスして検査に臨まれています。
製品化し、納品された杖は6本。今日も患者さんの手に握られ、多くの想いとともにお支えしています。
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医療イノベーション推進室(医ノベ)とは…

 院内の人がイノベーションを起こせるような 環境を整える
 病院の新しい取り組みに対し組織 横断的な支援をする
 院外の第三者の知識を共有し、連携する

3つのミッションを掲げ、院内に隠れている課題を見つけて解決する多職種チームです。1年間を通して各部署のヒアリングを実施し、見つけた課題について現地調査をすすめ、既製品で解決できる場合はそれを提案します。

「対応できる製品がない!」というときこそ、医ノベの本領発揮!

既製品では解決できない場合は技術・ノウハウ・企画力(シーズ)を有する企業等と共創して開発します。

 

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