加齢黄斑変性症(以下AMD)は目の奥にある、ものを見る中心が年齢とともに傷み、見えにくくなってしまう病気です。知名度はあまり高くないものの、QOLに影響を与えるおそれがあります。
このページでは、2026年8月5日に倉敷中央病院の市民公開講座「倉中医療のつどい」で、当院眼科部長の川野純廣先生が「加齢黄斑変性症 ~中心が見えにくくなる病気:早期発見と治療のポイント~」と題して講演した内容から、AMDについて紹介します。
加齢黄斑変性症(AMD)とは
目はカメラに例えるとわかりやすく、水晶体はレンズ、網膜は光を感じるフィルムやセンサーにあたります。黄斑とは網膜の中心にあり、文字を読む、顔を見分ける、車を運転するなど、”細かく正確に見る”働きをしています。網膜にドルーゼンと呼ばれる老廃物が沈着して黄斑が傷み、中心が見えなくなってしまうのがAMDの特徴です。
黄斑が傷むと…
- 読書:文字の一部が欠ける/にじむ
- 顔 :表情がわかりにくい
- 運転:標識・信号が見えにくい
- 中心がゆがむ(線が波打つ)
- 周辺視野は比較的保たれる
AMDは「加齢変化+炎症・血管の変化」が起き中心視力が低下する病気で、進行はゆっくりなことも急に悪化することもあります。 腰痛のような老化による病気は、治ったように見えても、ぶり返すことがあります。AMDも同様に、老化によって悪化していくため、長く付き合っていく病気となります。
AMDのリスク因子
リスク因子とは病気を引き起こす確率を高める要因のことです。AMDのリスク因子には変えられるものと変えられないものがあります。
| 変えられないもの | 変えられるもの |
|
● 加齢(最大の因子) |
● 禁煙(最重要) ● 血圧・脂質・糖代謝の管理 ● バランスのよい食事(緑黄色野菜・魚など) |
変えられない最大の因子は加齢ですが、過去の喫煙歴はAMDの発症や進行に関係することが知られており、非常に重要です。家族歴や体質も無関係でなく、AMDの発症に関わる遺伝子も見つかっています。
これから変えられるものとしては、先述の通り禁煙が最も重要になります。AMDは全身の血管や老化と関係する病気のため、血圧、脂質、糖代謝を管理するためのバランスの良い食事を摂ることも大切です。また、ルテインを含む抗酸化サプリメントの摂取は、AMDの進行リスクを下げることが報告されています。医師と相談のうえ、適切に活用しましょう。
AMDの発症・進行を予防するために…
・ 光から目を守る:強い日差しのときはサングラスをかける
・ 禁煙する:喫煙者は非喫煙者に比べて、AMDになる可能性が約2~4倍高まる
・ バランスの良い食事:ルテインやゼアキサンチンを含む食べ物、オメガ3脂肪酸を含む魚、ビタミンEやミネラルが豊富なナッツ類など
AMDの病気のタイプとステージ
AMDはドライ型(萎縮型)とウェット型(滲出型)の二つの病型に大きく分けられます。
ドライ型は細胞が少しずつ傷むため、ゆっくりと進行していきます。
一方ウェット型は、異常な血管ができて水分や血液が漏れてしまう特徴があり、進行が速く、短期間で見え方が悪化することがあります。急な視力低下や視界のゆがみはウェット型の可能性があるため、早めに受診することが大切です。
初期のAMDは自覚症状が少ないことが多く、ドルーゼン(老廃物)が網膜に沈着していることで判別します。中期になるとドルーゼンが増加してゆがみや読みづらさが出現し、症状に気づくことが多くなります。後期に入るとゆがみや中心視力の低下が顕著になり、読書や顔の認識に支障がでるようになります。
白内障や緑内障との違い
身近な目の病気である白内障や緑内障とAMDでは、症状が異なります。
白内障の主な症状は、全体が白っぽくかすむ、まぶしい、ピントが合いにくいことが挙げられ、比較的ゆっくりと進行します。
緑内障は周辺の視野から欠けていきますが、欠けた部分を脳や反対の目が補うため、初期は自覚症状がほとんどありません。何年もかけて欠ける範囲が広がっていきます。
高齢になると、これらを同時に発症していることも珍しくなく、併発しているために発見が遅れることもありますので、早期発見、早期治療が重要です。

自宅でできるセルフチェックの方法
AMDを発症すると線がゆがんで見えるようになるほか、視界の中心が暗くなったり左右で物の大きさが違って見えたりすることがあります。
「見え方がいつもと違う」ということが受診のサインとなりますが、見え方の変化は気づきづらく、異常を見逃してしまいがちです。その理由は目玉が二つあるため。片目が悪かったとしても、もう片方の目や脳が見えない部分を補ってしまい、初期の異常に気づきづらいのです。
見落としやすい初期の異常に気づくためのセルフチェックとして、アムスラーチャートを利用する方法があります。中心を見続けて、周りの線がゆがんだり欠けたりしていないかを確認します。必ず片目ずつ行い、異常があれば眼科に受診しましょう。
セルフチェックの手順
① チェックシートを30〜35cm(読書距離)で持つ
※老眼鏡やコンタクトレンズをつけた状態で行う
② 片目を隠し、中心の点を見続ける
③ 線のゆがみ、欠け、暗いところがないか確認
④ 反対の目でも同様にチェック
⑤ 変化があれば眼科へ

AMDの治療
眼科に受診すると、まず症状を確認し、視力や目の状態を眼底検査や画像検査で診断します。同時に病型がドライ型かウェット型かを診断し、治療方針を決定します。
現在、AMDは病型にかかわらず、硝子体注射が標準治療となっています。ドライ型は有効な治療法がなく、経過観察とされてきましたが、2026年から硝子体注射の治療が開始されました。硝子体注射の目的は視力を維持し、病気の進行を抑えること。薬品の効果は2か月程度であるため、効果が切れた後は患者さん自身の回復力に支えられての治療となります。
硝子体注射による治療では、初めに毎月1回の投与を3か月間行い、その後は病状、薬剤、通院の負担を考慮しながら投与の間隔を調整していきます。治療方法は以下の2種類に分かれます。
① PRN(pro re nata)
毎月受診して、症状が悪化(再発)していれば注射する方法。悪化してから投薬するため、後手に回る。
② Treat and Extend
受診のたびに注射するが、病勢に応じて注射間隔を変化させる。再発がなければ2週間ずつ間隔を延ばし、再発があれば2週間ずつ間隔を短くする。悪化する前に投薬するが、注射回数は多くなる。
3か月(12週間)で再発する場合が多いため、その条件で硝子体注射の治療をシミュレーションしてみます。

PRNの場合、通院13回、注射6回、再発3回となり、Treat and Extendの場合、通院8回、注射8回、再発1回になります。再発が起きるたびに黄斑は傷んでいくため、再発が起きない打ち方が優れているといえます。

同じ条件で2年目の状況を見てみると、PRNの場合は通院13回、注射4回、再発4回となりますが、Treat and Extendであれば通院5回、注射5回、再発0回となります。症状の悪化を防ぐ点ではTreat and Extendが優れた治療法といえますが、注射の回数はPRNに比べて多くなります。
当院では、この2つの治療法を合わせて、初めは再発するまで様子を見て、再発してからTreat and Extendを行う「Modified Treat and Extend」という方法を取っています。
しかし、AMDは老化により悪化する病気のため、注射を打ったとしても視力が回復せず、悪化する場合もあります。
また、物を見ている中心の視力を中心視力、中心からずれたところを周辺視力と呼びますが、中心視力が0.1を切っても、周辺視力は0.2あるケースもあり、この場合は注射をしても中心視力の改善見込みは低いため、治療はせず様子を見ることもあります。
治療を続けても視力が回復しない場合は、視覚障害の手続きが必要になることがあります。手続きを行うと、視覚補助具費の給付などの支援を受けることができます。
ロービジョンケア
ロービジョン(低視覚)の方に対して行われる支援の総称。医療(眼科での治療)、福祉(身体障害者手帳の発行)、教育(特別支援学校)など、さまざまなケアを行いQOLの向上を目指す。
まとめ
目は肉体の寿命に直結する臓器でないため軽視されがちですが、QOLに大きく影響を及ぼします。生活習慣を見直したり、健診を受けたりして、大事にしていきましょう。
● AMDは黄斑が傷む病気 → 中心視力に影響します
● 片目ずつチェック+アムスラーチャートで変化に早く気づく → 40歳を過ぎたら眼科健診を受けましょう
● 禁煙・生活習慣で“進行を遅らせる”
● 困りごとはロービジョンケアで“できること”を増やす
このページの内容は2026年8月5日時点で正確な情報に基づき、情報提供のみを目的として制作されています。原因や症状・推奨される治療などは、個人差がありますので、ご自身への適応に関しては必ずお近くの医療機関、もしくは、かかりつけ医にお問い合わせください。

倉敷中央病院 眼科部長
専門領域
黄斑・網膜循環疾患、白内障、硝子体手術
専門医等の資格
●日本眼科学会専門医
(2026年9月7日公開)