【医師インタビュー】整形外科主任部長・リウマチセンター長 伊藤 宣 先生

【医師インタビュー】整形外科主任部長・リウマチセンター長 伊藤 宣 先生

2024年10月に発行した患者さん向け広報誌「KNEWS Vol.62」では、「リウマチセンター 開設1年」を特集で紹介しています。倉敷中央病院の院内のラックに配架していますので、ぜひ手に取っていただけると幸いです。

このページではリウマチセンター長の伊藤 宣 整形外科主任部長のインタビューと、人工膝関節置換術について紹介します。PDF紙面は下記リンクよりご参照いただけます。

伊藤宣先生インタビュー

整形外科医を目指した理由

学生時代に熱中したのはバスケットボール。ポジションは攻撃の起点となるポイントガードで、良い言い方をするとチームの司令塔でした。接触が多いスポーツですので、膝や足首の靱帯が伸びたり骨折したりする仲間も。回復を願うとともに、スポーツ外傷の分野に興味を持ちました。

医師になって若手のころは、全身のあらゆる整形外科疾患について、診断から手術、リハビリテーションまでを担当し、指導医の先生からの指摘を反省し、次の手術ではさらに良い手術を目指す。これを繰り返したことで、整形外科医としての基礎ができました。

整形外科は、脊椎、関節、外傷など専門分野も多岐にわたります。医学部を目指した時に、全身を診ることのできる医師になりたかったので、全身のさまざまな部位の治療に携わる関節リウマチや変形性関節症を専門領域とし、これまで研鑽を積んでいます。

私の信条

関節リウマチは、残念ながらさまざまな合併症を伴う疾患です。高齢化の影響も受け、手術を行ったときも、他の疾患と比較して合併症が起こりやすいです。うまくいったときだけでなく、合併症が起こった際も、いつも全力で治療を行うのが私の信条です。

これからの目標

高齢者が骨折をすると、予後が良くないというデータがあります。骨粗しょう症の治療を積極的に行うことで骨折をしにくくなるよう、予防医療にも力を入れていきたいです。そして最も力を入れているのは運動療法の勧めです。関節や脊椎が悪くてお困りの方だけでなく、元気な方にも運動療法の継続をお勧めして、健康寿命がなるべく長くなるような啓蒙活動に努めたいと思います。

人工膝関節置換術

当院の無菌手術室で、まるで宇宙服を思い起こす術衣を着用して人工関節置換術に臨む整形外科の伊藤医師(写真右端)。人工関節手術は特に清潔な手術環境が求められる。頭部を含めた体全面を清潔に保つ手術着を使用し、細菌による手術部位の感染を防ぐ。患者さんへの万全の感染対策は、執刀医の血液被ばくの防止にもつながっている。

関節リウマチや変形性膝関節症などによって膝関節が傷むと、痛みや変形、曲げ伸ばしが困難になり歩行障害が生じる。その症状の改善を目指すのが、膝関節の表面を取り除いて人工関節に置き換える「人工膝関節置換術」。軟骨や骨が壊れた大腿骨、脛骨、膝蓋骨の表面を、骨を切る専用ののこぎりなどを使って必要最小限だけ適切に切る。その部分にそれぞれの人工膝関節を設置するが、大切なのは人工関節を狙った位置に精確に設置すること。これをサポートするのが「ナビゲーションシステム」および「ロボット」だ。手術部位や手術器具の位置関係を正確に計測して骨切りと人工関節の設置を補助するシステムで、いずれも術者の経験と感覚をサポートする。手術時間は患者さんの病状によって異なるが、およそ1.5時間、入院期間は約14日となっている。ただし、もう少しリハビリを希望される患者さんは、連携病院でリハビリを継続していただく。

一般的には人工関節置換術を行えば、多くの方で術前の痛みは軽減して短期的な改善が得られるが、問題はこの状態の長期的な維持。長期的に人工関節の摩耗、ゆるみ、破損、脱臼、感染などの問題がなく経過するためには、使用する人工関節の種類の選択を含めた計画、手術手技、周術期の管理、リハビリテーションなどが重要で、経験を持ったスタッフが専門的にチーム医療を行う必要がある。その結果、多くの患者さんで術後30年以上の安定した結果を得ることができる。一方、手術を受けられた全員が30年間問題なく経過することはないのも事実。もし問題が生じた時には、迅速で適切な治療が必要となる。当院は人工関節・関節機能再建センターとして対応することで、今後さらに長期成績の向上を目指している。

 
関節リウマチの疾患解説は下記バナーをクリックいただけると参照いただけます。
伊藤 宣
整形外科 主任部長
リウマチセンター センター長
専門領域
関節リウマチ、全身の変形性関節症、足の外科
専門医等の資格
●日本専門医機構認定整形外科専門医
●日本リウマチ学会専門医
●日本リハビリテーション医学会専門医

(2024年10月29日公開)

 

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