Vol.1 感謝の連鎖を忘れずに 
呼吸器内科 部長  時岡 史明

Vol.1 感謝の連鎖を忘れずに   呼吸器内科 部長  時岡 史明

 


岡山県で初の新型コロナウイルス感染症(covid-19)が確認されたのが2020年3月22日で、その後まもなくして当院1例目の患者さんが入院しました。既に新型コロナウイルス感染症の診療をしていた他県の友人の医師から「ガウンや手袋などきっちり装着すれば、患者からは感染しない」と聞いており、自分の性格が大雑把で楽観的でもあり、感染者を診ることへのストレスはあまりありませんでした。最初の患者さんが元気だったこともあり、落ち着いて診療できました。

状況が一変したのが2020年の10月。それまで元気な若者が多かった入院が、高齢者施設でクラスターが発生したことで、介護度が高い高齢者の患者さんが多く入院するようになり、一気に対応が大変になりました。病床の管理もこのままでは破綻すると思い、関西で多くの患者さんを受け入れている病院へ新型コロナウイルス感染症患者専用病棟の視察に行き、視察直後の会議で専用病棟の重要性を説明し、すぐに開設へ動き出しました。

その後も新型コロナウイルス感染症の勢いは収まらず、12月と今年1月には倉敷市内でクラスターが頻発し、状況はより厳しくなりました。肺癌など他の病気の診療水準もなるべく落とさず、日常診療を維持しながら新型コロナウイルス感染症に対応していたので、経験したことのない忙しさでスタッフみんなの顔つきも危険な感じでした。ただその中で、他科の先生、看護師さんや技師さんや事務さんなど多くのスタッフがびっくりするようなスピードと融通性で積極的に関わってくれたので、“オール倉中”体制で乗り切ることができました。昨年度は非常に大変でしたが、人生でもっとも多くの人に「ありがとう」と感謝した1年でした。みんなが個々にできることを行い感謝の連鎖を続けることで、世の中も上向くと感じました。

新型コロナウイルス感染症の難しいところは、新しい病気で分からないことが多く、先行きが見えないことからさまざまな不満が出現し、それによって地域や世代、業種間など社会の分断が起きていることだと思います。繰り返しになりますが、一人ひとりができることを実践し、他者を思いやる気持ちが持つことが大切と考えています。

コロナ禍で私たちの生活は一変しました。良くないことも多いですが、一方で、オンラインは一気に進み、今まで当たり前だった不要な慣習を見直すきっかけにもなりました。地域の医療の維持という共通の目標のもと、他院の先生とも今まで以上に腹を割って診療相談の話をしたり、保健所の人とも意見を交わしたり、それぞれの考えを合わせることもできました。決してデメリットばかりではなかったと思います。
2021年4月以降、県内の新型コロナウイルス感染症の勢いはさらにとどまるところを知りません。状況は刻刻と変化し、一部には日常診療の制限も必要になってきそうです。
しかし今まで以上にお互いが助け合えば、この状況を乗り切ることができ、新型コロナウイルス感染症が落ち着いたころには、心理的安全性の高いより良い職場が出来上がっていると思います。
置かれた環境はすぐに変えることはできませんが、考え方を変えることはできます。どうすれば良い方向に進めるか、みんなで今できることをポジティブに考えていきたい。

(取材:2021年3月10日)

 

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