Vol.16 
経験を重ねてリーダーに 
呼吸器内科  神戸 寛史

Vol.16   経験を重ねてリーダーに   呼吸器内科  神戸 寛史


世界中がコロナ禍で混乱に陥った2020年度。当院内科専門研修プログラムの連携施設研修で、上半期は市内の医療機関で勤務しました。この期間に陽性者の対応はありませんでしたが、下半期の研修先は、岡山県の感染者数をはるかに上回る兵庫県の急性期基幹病院。時期は第3波の真っただ中で、初めてコロナ患者さんの治療にあたりました。

COVID-19は、前日まで不要だった酸素が翌朝には必要になり、さらに夕方には挿管になるなど、これまで経験のないスピードでの悪化が見られます。入院患者さんへの薬物治療は、ステロイドとレムデシビル、バリシチニブ、ヘパリン製剤が軸。挿管による合併症が起これば、必要な治療を追加します。

重症化する患者さんへ、挿管や薬剤量を増やすなど治療の強度を上げることはできます。ただ、強度を上げても確実に良くなるとは言い切れません。ステロイドは最も重要な治療薬ですが、挿管しながら併用すると気胸になることもある。「薬を投与しなくても良くなったかもしれない」「副作用を恐れて投与量を減らせば悪くなるかもしれない」。薬剤量の増減は、より神経をとがらせます。治療の経験値は増えても、答えは誰も持ち合わせていません。試行錯誤の中で、考え得る最良の治療をするためには決断が必要です。その決断が少しでも正解に近づけられるように、患者さんの状態の見極めや論文などでの情報収集は欠かせません。

全国でコロナ患者さんが入院できない事態が起こっていることを聞くにつけ、医療者が病院で患者が来るのを待つあり方などが変わるかもしれないなと感じました。自宅で家族と一緒に過ごしながら診療する手段も、コロナ禍でオンライン診療や電話再診が実現しました。さらには、個々人の理想の生活様式と予防医療とがより調和していくためには、何が必要なのか考えなくてはいけません。

コロナ禍をリアルタイムで経験した世代としては、私たちは若手になります。パンデミックは新型インフルエンザやSARSなど、歴史的にも繰り返されています。指導する立場になったときリーダーシップが取れるよう、これからも精進していきたい。

(取材:2021年10月4日)

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