不整脈の種類について

徐脈性不整脈

徐脈とは、脈拍数が1分間に50回以下のものをいいます。明らかな理由がなく徐脈を生じた場合は刺激伝導系に異常があるためであり、しばしばペースメーカー植え込みの適応となります。症状は、全身倦怠感・脱力感・めまい・ふらつき・失神・息切れなどです。
徐脈性不整脈は大きく分けて、 ①洞不全症候群:洞結節の障害で一時的に電気信号が送られなくなったり、少なくなったりする不整脈  ②房室ブロック:拍動の電気信号が心臓上部の心房から下部の心室へ伝わらなかったり、伝わりにくかったりする不整脈 ③徐脈性心房細動・粗動:房室結節の心房から心室への脈拍の伝わり具合が極端に低下した不整脈 の3つがあります。徐脈性不整脈の治療法は現在のところ植込式ペースメーカーの植え込みが治療となります。この治療は、①徐脈に伴う症状(めまい、失神)の改善、②突然死の予防、③心機能低下・心不全の予防や改善などを目的とし、当院では年間約200~250例前後の埋え込みを行っております。実際の手術は、局所麻酔で行います。植え込み部位は左側(右側)の前胸部です。鎖骨下の皮膚を切開し心臓に刺激を出す電極リードを静脈から心臓の中に挿入し、右心房・右心室(single chamberの場合は右心室(もしくは右心房)のみ)に固定します。その後、ペースメーカー本体を留置するポケットを作成し本体を挿入し縫合、終了します。電池交換の場合はリードに問題がなければ、本体を取り出して新しいものと交換し縫合します。退院後は、ペースメーカー外来で半年から1年ごとに経過をみます。

2017年8月からリードレスペースメーカーも導入しました。主な適応は徐脈性心房細動、房室ブロック、一過性の洞不全症候群などです。マイクラ®経カテーテルペーシングシステムは、重さ1.75g、1ccという小型軽量化を実現した世界最小のペースメーカです。右足の付け根から、専用のカテーテルを用いて心臓内に送り込み、直接右心室に留置します。これにより従来のペースメーカと異なり、胸部の皮下ポケットや本体と心筋をつなぐ細長いリードに関連する合併症のリスクがなくなります。また皮下ポケットがないことは美容的にも優れており、リードによる生活制限がないリードレスペースメーカーは、患者さんに安心を与え生活の質の向上に寄与することも期待できます。最近のデバイスは、MRI撮影に条件付きで対応しています。

頻脈性不整脈

頻脈性不整脈には、ある狭い範囲の異常な心筋の興奮により生じているもの(巣状)と、特定の回路を旋回するもの(リエントリー)があり、多くの場合心臓電気生理学的検査を行い診断し、治療を行っています。
カテーテルアブレーションは頻拍性不整脈のカテーテル的治療法で根治的治療法です。カテーテル先端の電極から高周波電流を流すことで、カテーテル先端の温度を60℃位まで上昇させ、心臓の筋肉の一部を焼灼させることで頻拍症の原因となっている部位を壊死させ治癒させます。現在当院では年間600~700例前後の症例に行っています。
対象疾患としては下記のものが含まれます。

上室性不整脈

WPW症候群

正常な人では、心房と心室を結ぶ刺激伝導系は1本のみ(正常伝導路)ですが、WPW症候群の人では先天的に余分な回路(副伝導路、主にはケント束)が存在します。電気信号が、正常伝導路と副伝導路の間を旋回(リエントリー)することで頻拍を起こしたり、心房細動という不整脈を生じた際に脈拍が200回/分以上となったりすることがあります。治療は、副伝導路のアブレーションです。

房室結節リエントリー性頻拍

房室結節内に伝導性の違う2本以上の回路(速伝導路と遅伝導路)が存在します。ほとんどの人でこの伝導は存在しますが、一部の方で速伝導路と遅伝導路の間で電気がぐるぐる回り頻脈を生じます。治療は、遅伝導路のアブレーションです。

心房頻拍

心房に異常な興奮性を有する心筋細胞が存在し、これが洞結節を上回る頻度で心臓を興奮させることにより頻拍を生じます。重症な方では数ヶ月以上頻拍が持続し、心機能が低下する人もいます。治療は、異常興奮部位のアブレーションです。

心房粗動

通常型心房粗動は、心房粗動の大部分を占め、右心房と右心室の間にある三尖弁の回りを旋回しており、治療は三尖弁輪と下大静脈の間を線状にアブレーションします。非通常型心房粗動は、通常型以外のものをいいます。

心房細動

心房細動が起こると、心房の電気の伝わり方が無秩序になります。その結果、心房はけいれんしたような状態となります。(心房の拍動数は300〜600回/分)このような状態では心房内、特に左心房内に血の塊(血栓)を生じる可能性があります。この血栓が飛ぶと、脳梗塞で代表される塞栓症を来たします。また頻脈性心房細動や心房の収縮の消失で心不全をきたすことがあります。一般人口において極めて罹患率が高く、特に60歳を過ぎると著しく増加の一途をたどります。これには 心房筋の線維化などの関与が証明されてきています。米国では約220万人、本邦でも100万人の患者が存在すると推定されます。臨床的には、発作性心房細動にはじまった患者は、徐々にその頻度を増し、薬剤も最初のうちは効いていても次第に効かなくなり、心房細動の持続時間が長くなり、また様々な薬剤をもってしても効果がなく、ついには慢性化する、ということをしばしば経験します。
心房細動の治療としては、高血圧や虚血性心疾患の治療に加え、抗凝固療法や抗不整脈薬の投与などの薬物治療に始まり、外科的手術、現在はカテーテルアブレーションによる治療も可能となっています。
心房細動を惹起する期外収縮の多くは左右上下の4本の肺静脈内に迷入した心房筋から起こることが近年明らかになってきており、カテーテル焼灼術(カテーテルアブレーション)により肺静脈と左房間の心房筋の伝導を絶つこと(電気的肺静脈隔離)である程度心房細動の発症が防ぐことができることがわかってきています。このため心房細動に対するカテーテルアブレーションは現在この電気的肺静脈隔離術が中心に行なわれています。ただし肺静脈に起因しない心房細動もあり、数%の患者さんに上大静脈が心房細動の原因になっていることがあるため、この場合は肺静脈隔離に加え、上大静脈電気的隔離も併せて行なうことがあります。
1年後の成功率(術後の正常な脈の維持、洞調律といいます)に関しては、発作性心房細動の患者さんでは1回の治療で90%前後ですが、左心房が拡大した持続性心房細動の患者さんでは70〜80%程度に低下します。ただ術後心房細動が再発した症例においても、術前に無効であった抗不整脈剤が有効となることもあるため、仮に再発しても薬剤の併用により心房細動の発症はある程度抑えることができることできます。2回目を施行することで更に5~10%程度洞調律が維持できます。

心室性不整脈

心室性不整脈には、心室頻拍と心室細動があります。カテーテルアブレーションで根治可能なものもあれば、薬剤と特殊なペースメーカー治療(ICD, CRT, CRTD)の適応となるものもあります。

心室頻拍

(1)心室に異常な興奮性を有する心筋細胞が存在して心臓を興奮させることにより頻拍を生ずる場合と、(2)心筋梗塞後などの障害心筋の周りを興奮が旋回して頻拍を生じる場合があります。致死的な不整脈である心室細動に移行したり、心機能が低下したりすることがあります。治療は、異常興奮部位のアブレーション、もしくはリエントリー回路のアブレーションでの離断です。心機能の悪い方は特殊なペースメーカー(ICD, CRTD)植え込みを要することがあります。

心室細動

心室細動が起こると心室は秩序なく興奮し心臓が震えてしまいます。血液は送り出されず、たちまち体内の酸素が欠乏します。心室細動になると通常、数秒以内に意識を失います。このような状況では致死的であり、心停止と呼ばれています。心房細動と言葉は似ていますが、心房はサブポンプであり血圧にさほど影響を与えないのに対し、心室はメインポンプであるため症状は全く異なり、危険度が増すことになります。心室細動を生じうる可能性のある方としては、心筋症や心筋梗塞後などの心機能の低下した方や、ブルガダ症候群やQT延長症候群などと診断された方になります。心室細動を生じる可能性のある方の治療として①原因となる疾患の治療、②発作時の突然死予防のため植込型除細動器(ICD)植え込み、③場合により抗不整脈薬の投与が必須となります。特に植込み型除細動器(ICD)は生命予後を改善しており有用なものと考えます。ブルガダ症候群とは従来ポックリ病と呼ばれていた病気であり、特徴的な心電図の形(右側胸部誘導で特徴的なST上昇)や失神発作を特徴とします。遺伝子の異常が20%程度の方で認められますが、孤発例も多く存在します。QT延長症候群は様々な病態から成り立ち,多形性心室頻拍や心室細動などの重症な不整脈をきたし,死亡の原因ともなりえる病態です。QT延長症候群は電解質異常や薬剤に影響により起こる後天性のものから遺伝子異常まで様々な原因で起こります。

期外収縮

瞬間的に脈が飛ぶものを言います。症状としては脈が抜ける、瞬間的にドキッとするなどの症状を呈することがあります。良性のものもありますが、心機能に障害があり生じるものがあります。心臓に病気を持たず、運動負荷試験にても増悪しない期外収縮は、まず生命へ危険を及ぼすことはありません。しかし心筋症、弁膜症や、心不全、心筋梗塞後など心機能が低下している場合には原疾患の治療を含め、加療を要することがあります。