Vol.11 
みんなと協力しながら前進していく 
集中治療科  西川 貴史

Vol.11   みんなと協力しながら前進していく   集中治療科  西川 貴史

 

海外ドラマ「ER」で憧れを抱いた医師の世界。産婦人科医として研鑽を積んだのち、集中治療を学びたくて転科を申し入れたのが2019年秋。2020年のゴールデンウィークの頃に集中治療科のスタッフとして働き始めました。集中治療部門では重症の新型コロナウイルス感染の患者受入れフローチャートの整備、防護服の着用手順の確認など準備を進めている段階で、ここで合流できたのは幸いでした。

2020年夏、膿胸を起こした患者さんが搬送されてきました。まだ若い方なので救命が最優先、でも発熱・呼吸器症状から新型コロナウイルス感染疑いもある。手術センター、麻酔科、呼吸器外科とベストな方向を探りました。まず検査で白黒をつけ、陰性の判定を受けて手術を行い、この方は無事退院されました。そして重症患者さんの受け入れ第1例。「とうとうきたか」と緊張感が走りました。急性呼吸窮迫症候群(ARDS)に至り、思いつく限りの手立てを試行錯誤しました。

その後、重症かつ高齢のコロナ患者さんが増えてきました。呼吸状態が悪くなった方を受け入れるため病棟へ行くと、せん妄を起こしたコロナ患者さんに一生懸命対応する看護師さんの姿が。苦労されている様子に、頭が下がりました。重症患者さんが入院する病棟では、気管切開を行った高齢コロナ患者さんはなかなか人工呼吸器から離脱できず、よくならないのを見守る日々。ご家族も濃厚接触者の場合が多く、亡くなられたら荼毘に付された後でないと再会できない。辛い現実がありました。

今は第5波の真っただ中です。今日に至るまで、カンファレンスで救急科、呼吸器内科、集中治療科の医師が揃って情報共有を重ね、世界のエビデンスを共有できました。今、若い世代の患者さんが増えていますが、幸いなことに、人工呼吸療法などの修学的治療が功を奏して早期離脱もできています。未知の部分はまだありますが、さまざまな職種の方々の協力を得ながら前に進んでいます。

オフは家族との時間を大切に過ごしています。家族との会話で気になるのが、一般の方の間で情報に対する反応の高低があるな、という点です。過剰に恐れたり、逆に無防備だったり。今、さまざまな情報が溢れています。適切な情報を提供していく必要性を感じています。その先に、家族とたくさんの思い出を作れる日常が戻ればいいなと願っています。

(取材:2021年8月24日)

 

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